井上 裕貴

2018年09月29日 (土)

教科書では教えてくれない  井上裕貴

壁を作るのが人間なら、それを壊すのもまた人間。

この夏休み、そんな象徴的な場所に行ってきました。

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ドイツの首都、ベルリンです。

世界大戦、ユダヤ人迫害、東西冷戦、そしてベルリンの壁崩壊と、教科書に載る激動の舞台ばかり。

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街に残されたその史跡を確かめ、どこか自由でオープンな空気を発する若者たちに触れていると、

改めて、歴史の光と影が色濃く共存する場所であることを感じさせます。

中でも、立ち止まってじっくり考えさせられたのが、こちら。

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「冷戦時代、ここが東西ベルリンの境界線に置かれた検問所です。

今の私の故郷のように、家族や社会が分断されたシンボルですよ」。

語るのは、シリアの首都ダマスカス出身のイヤスさん、29才。2年前にドイツで難民認定されました。

実はベルリンでは、数年前から、シリア難民たちが自らの体験とベルリンの歴史を対比しながら

市内を案内するツアーを行っているんです。

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一見、つながりがなさそうなベルリンとシリアですが、イヤスさんの解説を聞いていると、

紛争に巻き込まれる人々、それを黙認する人々、そして大量の難民が生み出されていく過程など、

現代にも通じる共通点が驚くほど多く浮かび上がってきました。

世界にとっての負の歴史は決して他人事ではなく、

どんな国、社会でも起こりうる芽がいくつも潜んでいることに気づかされます。

 

別れ際、故郷への思いを聞いてみました。

「内戦は、私の土地、家族、自由、全てを奪いました。けれど、こうして生きている限り、私の物語を奪うことはできません。だから、ひとりでも多くの人に私たちの物語を聞いてほしい。故郷の現状を伝え続けますよ」。

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シリアの内戦や難民問題も、かつてのベルリンのように教科書の1ページとなりました。

国を壊すのが人間なら、それを作るのもまた人間。シリアは、この先どんな社会を築くのでしょう。

そのニュースの中でいまも生きる当事者の言葉ほど、心に残るものはないなと改めて実感した学び多い旅でした。

 

今回も、最後にちょっと寄り道…。

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ベルリン中心部にある連邦議会議事堂を見学したら、なんと、この人が!

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メルケル首相。

ナチス・ドイツの反省から、透明性ある政治を目指して議場の壁などがガラス張りで、中の様子が分かるんです。

運良く議会中で、まさに紅一点、存在感は抜群。遠~くから会えたのでした。

                                      

この記事を書いた人

井上 裕貴アナウンサー

2007年入局。松江局を経て2011年からアナウンス室勤務。 「おはよう日本」「ニュースウオッチ9」リポーターとして、 国内外の災害や事件・事故などを取材。 その後「これでわかった! 世界のいま」キャスターを担当した。 兵庫県出身。2歳から18歳までアメリカ・カリフォルニア州で過ごした。

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