イラン中部で爆発音“イスラエルが攻撃”米メディア

アメリカの複数のメディアは政府当局者の話として、イスラエルがイランを攻撃したと伝え、今月13日から14日にかけてのイランの大規模攻撃に対する対抗措置に踏み切ったものとみられます。
一方、イランのメディアはイラン中部のイスファハン州で爆発音があり、無人機を迎撃したものだと伝えていて、核施設を含めた重要施設に被害は出ていないとしています。

イランの体制寄りのメディア、ファルス通信は、現地時間の19日午前5時すぎ日本時間の午前10時半すぎ関係者の話として、イラン中部、イスファハン州の北西にある空軍基地の近くで爆発音が聞こえたと伝えました。

同じく体制寄りの別のメディア、メフル通信は爆発音は、3機の小型無人機を撃墜した際の音だと伝え、無人機がどこから飛行してきたかなどの詳しい状況はわからないとしています。

また、イランの国営通信はイスファハン州にある核施設を含めた重要施設に被害は出ていないとしていて、これまでのところ、上空からの大規模な攻撃や爆発は報告されておらず、ミサイル防空システムによる迎撃は行っていないと伝えています。

イランの国営テレビは、国内の複数の空港で見合わせていた旅客機の運航が、再開したと伝えました。

一方、アメリカの複数のメディアはアメリカ政府当局者の話として、イスラエルがイランを攻撃したと伝えました。

ABCテレビは、政府高官の話として、イスラエルはイランによる大規模攻撃に対する報復措置として複数のミサイルを発射したとしています。

また、CNNテレビは政府当局者の話として攻撃の対象となったのは、核関連施設ではないとしていてIAEA=国際原子力機関は、イランにある核施設に被害は出ていないと発表しています。

イスラエルが今月13日から14日にかけてのイランによる大規模攻撃に対する対抗措置に踏み切ったものとみられますが、イスラエル側からは、これまでのところこれに関連した発表はありません。

今後、イスラエル側の発表やイラン政府がどのように対応するかが焦点となっていて、事態がどう推移するかは不透明な情勢です。

IAEA“イラン核施設に被害なし”

イラン国内での爆発の報道を受けて、IAEA=国際原子力機関は、19日、イランにある核施設に被害は出ていないと発表しました。グロッシ事務局長は「すべての人に最大限の自制を求め続けるとともに、核施設が軍事衝突の標的になってはならないと重ねて強調する」としています。IAEAは状況を注視しているとしています。

イラン国営テレビ “小型無人機を撃墜する様子”映像公開

イランの国営テレビは、イスファハン近郊で複数の小型無人機を防空システムで撃墜する様子だとする映像を公開しました。この映像では、辺り一帯が暗い中、上空のあちこちで光が点滅する様子がうつっています。

“攻撃はイスファハン市近くの空軍基地” 米有力紙

アメリカの有力紙、ニューヨーク・タイムズは18日、複数のイラン政府当局者の話として、「攻撃はイラン中部イスファハン市の近くにある空軍基地に対して行われた」と伝えました。ただ、当局者らは攻撃がどの国によって行われたかについては明らかにしなかった、としています。

“イスラエル イランへの報復予定をアメリカに通告”米メディア

アメリカのメディア、ブルームバーグはアメリカ政府当局者の話として、イスラエルが18日、24時間から48時間以内にイランへの報復攻撃を予定しているとアメリカに対し通告していたと報じました。

また、CNNテレビもイスラエルが18日、数日以内にイランへの報復を行う予定だとアメリカに伝えていたとした上で「その対応を支持しなかった」とするアメリカ政府高官の話を伝えています。

【記者解説】イラン国内の様子は? 今後の見通しは?

エルサレムの田村支局長・テヘランの土屋支局長、そして国際部 中東担当の戸川デスクに聞きました。(4月19日 ニュースウオッチ9で放送)

《各国の反応は》

ロシア報道官「双方に自制するよう求める」

ロシア大統領府のペスコフ報道官は19日、記者団に対して「イスラエルからの公式声明が出ておらず、情報を分析している」と述べた上で「われわれは双方に、この複雑な地域でさらなる緊張の拡大を引き起こす行動を拒否し、自制するよう求める」と強調しました。

EU委員長“すべての当事者 これ以上の行動控えること必要”

EU=ヨーロッパ連合のフォンデアライエン委員長は19日、訪問先のフィンランドで「われわれは地域での緊張の高まりを抑えるためにできるかぎりのことをしなければならない。この地域が安定を保ち、すべての当事者がこれ以上の行動を控えることが間違いなく必要だ」と述べ、双方に自制を呼びかけました。

中国 外務省報道官 “緊張高めるいかなる行為にも反対”

中国外務省の林剣報道官は19日の記者会見で「中国は緊張をさらに高めるいかなる行為にも反対する。情勢の緩和のために建設的な役割を果たし続ける」と述べ、事態がこれ以上悪化しないよう働きかけていく考えを示しました。

中国は、今月、シリアにあるイラン大使館が攻撃されたあと、イランがイスラエルへの攻撃を行ったことについて「自衛権の行使だ」としてイランを擁護する立場を明らかにしていました。

《“爆発”報道に先立ち 各国が動き》

米大統領補佐官 イスラエル戦略問題相などとオンライン協議

イラン国内での爆発の報道に先立って、アメリカ・ホワイトハウスで安全保障政策を担当するサリバン大統領補佐官は18日、イスラエルのデルメル戦略問題相などとオンライン形式で協議していました。

ホワイトハウスの発表によりますと、イランへの対応や、軍事的なパートナー国との連携などを通じたイスラエルの防衛強化についても意見を交わしたとしています。

米国防長官はイスラエル国防相と電話会談

イラン国内での爆発の報道に先立って、アメリカ国防総省は18日、オースティン国防長官とイスラエルのガラント国防相が電話で会談し、中東情勢について意見を交わしたと発表していました。

会談の中で、オースティン長官はガザ地区の住民への人道支援物資の流れを増加させ、維持することが重要だとイスラエル側に伝えたとしていますが、イランへの対抗措置について話し合ったかどうかなどは明らかになっていません。

国連事務総長 双方に自制求める イラン外相はイスラエルをけん制

イラン国内での爆発の報道に先立って、ニューヨークの国連本部では18日、中東情勢を協議する安全保障理事会の会合が開かれ、グテーレス事務総長が「ここ数日、言動は危険なまでにエスカレートしている。たったひとつの誤算、たったひとつのミスコミュニケーションが想像を絶する事態を招きかねない」と強い危機感を示し、イスラエルとイランの双方に事態の悪化を防ぐため自制を求めていました。

また会合に出席したイランのアブドラヒアン外相は、「イスラエルには、これ以上の軍事的な冒険主義をやめさせなければならない。もしもイスラエルが武力を行使し、われわれの主権を侵害すれば、少しもためらうことなく断固たる対応をとり、イスラエルにその行動を後悔させるだろう。これは変わることのない決定だ」と述べ、イスラエルを強くけん制していました。

NY原油先物価格も上昇 一時1バレル=86ドル台に

アメリカの複数のメディアが、イスラエルがイランを攻撃したと伝えたことを受けて、ニューヨーク原油市場では原油の先物価格が上昇しました。国際的な取り引きの指標となるWTIの先物価格は1バレル=82ドル台から一時、86ドル台へと前の日と比べて4%余り上昇しました。

中東情勢が一段と緊迫化し、中東地域からの原油の供給に影響が及ぶのではないかとの懸念が高まったことが値上がりの要因です。

イランは中東の原油輸送の要衝であるホルムズ海峡に面しており、投資家の間ではイランで爆発音が聞こえたと伝えられていることに警戒が高まっています。

イスファハン州とは

イスファハン州はイラン中部にあり、首都テヘランから州の中心部までは350キロほどの距離にあります。専門家によりますと、イスファハン州内には、核関連施設のほか、工場など複数の軍事施設があるということです。また、BBCによりますと、イスファハン州内には、濃縮ウランの製造を行うナタンズの核施設をはじめ、複数の核関連施設があるということです。

専門家 “イラン 交戦状態の継続や発展は避けたいか”

中東情勢に詳しい慶應義塾大学の田中浩一郎教授は19日午後、NHKのインタビューに応じ、今回の攻撃について「イスラエルが対抗措置をとることは確実視していたので、驚きはなかった」とした上で、▼核関連施設がある地域を攻撃することで、施設を射程範囲に入れる能力を誇示する一方、▼イランの休日にあたる金曜朝の人の動きが少ないタイミングに行われ、人的な被害を抑えるねらいもうかがえる、としています。

またイラン側の対応について「イランとしては、攻撃はあったものの迎撃し大きな被害はないので報復する必要はないとして、再びイスラエルに対して反撃や攻撃をしなければならないような状況に追い込まれることを避けようとしていると思う。イスラエルとの交戦状態が続いたり発展したりしないようにしようとしているとみられる」と分析しています。

一方で田中教授は「国家と国家が攻撃しあう異常な状況が日常化すれば、不測の事態が起きることが懸念される」と述べ、今後も攻撃の応酬が続き互いの意図に反して大きな被害が出る事態となれば一気に緊張が高まりかねないとして、状況を注視していく必要があるとしています。