がんの治療や美容に効果があるとうたって、赤ちゃんのへその緒などに含まれる「さい帯血」を、無届けのまま患者に投与する再生医療を行ったとして、厚生労働省は、先月(5月)から今月(6月)にかけて、東京や大阪などの11の医療機関に対し、再生医療の一時停止を命じたと発表しました。

“さい帯血” 11医療機関で無届け投与

2017年6月28日(水)

最近、「さい帯血」って耳にすることはありましたけど、どんなものなのでしょうか。

赤ちゃんのへその緒や胎盤に含まれる血液のことです。血液などのもとになる「幹細胞」というものが多く含まれていて、今、再生医療の分野などで注目されているんです。

再生医療について一時停止の命令を受けたのは、こちらの11の医療機関です。がん治療や美容に効果があるとうたって、「さい帯血」を患者およそ100人に投与していました。法律では、再生医療を行う場合は、国に計画書を提出した上で、安全性などの審査を受けるよう定めていますが、届け出をしていなかったということです。中には、自由診療で、およそ300万円の治療費を請求していたケースもあったということです。これまでのところ、健康被害は確認されていないということです。

処分を受けた「表参道首藤クリニック」の院長はNHKの取材に対し、「患者の希望で行った治療行為が認識不足により、結果として法令違反になってしまったことは真に残念に思います。今後は、法令順守の上、診療に努めてまいりたい」というコメントを出しました。
卵巣がんの患者や家族を支援している団体の代表は。

卵巣がん患者など支援 代表 片木美穂さん
「『治りたい』という気持ちの隙間に、こういった治療が入り込んできている。本当に腹立たしい。」

“さい帯血” 11医療機関で無届け投与

本当にひどいですね。
でも本来、「さい帯血」って、具体的にはどんな治療に役立っているんですか?

代表的なものでは、白血病の治療です。骨髄移植と比べて、さい帯血移植は、提供する赤ちゃんや母親に負担がかからない利点があるんです。さらに最近では、有効な治療法がない「脳性まひ」の症状の改善を目指す、臨床試験も始まっているんです。

“さい帯血” 美容など “効果証明されず”

そういう意味では、さい帯血に期待している患者さんも多いんでしょうね。その中で、今回の11の医療機関は、一体どんな治療をしていたんですか?

例えば、こんな事例がありました。「アンチエイジング」「動脈硬化」「高血圧」に効果があるとして、他人のさい帯血の一部を点滴で投与していたんです。しかし厚生労働省は、美容や、ほかのがんの治療への効果は証明されていないとしています。

また、今回、処分を受けた医療機関の中には、自由診療で患者1人あたり、およそ300万円の治療費を請求していたケースもあったということです。

効果が証明されていない上に、300万円ということですから、これはひどいですよね。

さらに、「再生医療安全性確保法」という法律があって、他人のさい帯血を患者に投与するといった再生医療を行う場合は、国に計画書を提出した上で、安全性などの審査を受けるよう定めているんですが、11の医療機関は、これを行っていませんでした。というのも、さい帯血を使った治療の際には安全性に十分配慮する必要があるんです。

“さい帯血” 治療の安全確保は

こちらの医療機関では、さい帯血を冷凍保存して、厳重に管理しています。また、投与後も、患者が感染症にかからないよう、無菌室の中で3週間程度過ごしてもらったり、免疫の機能に異常がないかなどを細かくチェックしているところもあるんです。

国立成育医療研究センター 松本公一 小児がんセンター長
「造血細胞移植は移植だけでなく、移植後の免疫反応と闘いをすることになる。おそろしい免疫反応が起こったり、感染症を起こして命を落としたり、そういうことが起こりうるものだと思う。」

なるほど。厳重管理や細かくチェックをしなければいけないと。先端医療だけに、治療は、やはり慎重に行わないといけないですよね。

そうですよね。今回については、健康被害は確認されていないということですが、そもそも、さい帯血は貴重なものです。効果が証明されていない使い方は、治療を心待ちにしている患者にとっては、裏切りにも等しい行為です。違法な再生医療が横行しないよう、国には指導や監視を徹底してほしいと思います。

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