特集

PICK UPPICK UP

お気に入りに追加

揺れる徳川家

浜松から厳しい処罰を受けた岡崎衆。それでも徳川家康の嫡男・信康は家臣たちを鼓舞して信頼回復につとめました。しかし魔王・織田信長と徳川家の関係が岡崎の悲劇を生むことに……。当事者である信康をはじめ、そこに関わる酒井忠次、そして石川数正を演じた出演者のみなさんのインタビューをご紹介します。

酒井忠次 [家康が今川家の人質だった時代から仕え、駿河侵攻や気賀攻めなどで武功をあげる。信長との対面で徳川家を守ろうとして岡崎を窮地に陥れることに…]

家康一筋だからこそ! [みのすけさん]

忠次は家康の親代わりという意識だったのではないでしょうか。だから家康がどんどん上がっていくのを見るのは、すごく嬉しかっただろうと思います。それだけに家康が甘さゆえに踏み込めないところをあえて突き進む。気賀攻めなどでも悪役に徹したということです。家康もそれをわかっていて反発しながらも頼りにする。そんな主従関係だったと思います。

信康を追い詰めるきっかけとなった信長との対面シーンですが、史実にもある出来事でとても緊張しました。きっと忠次も一人で安土城に行くのは責任重大でいやだったと思いますよ。撮影でもセットがすごくて、しかも市川海老蔵さんの信長の迫力がすごい。あの空間にはただならない空気が流れているようで怖かったです(笑)。結果的に自分のせいで信康の首を差し出すと答えるところまでいってしまう。自分が死んでもどうにもならないのに、一時は死を考えるまで思い詰めます。徳川を守りたい一心だったとはいえ、何もかも一人で抱え込み過ぎたのかもしれません。榊原康政とかにも相談すればよかったのにね(笑)。

最初にこの役が決まったとき、知恩院にある酒井忠次さんのお墓参りをさせていただきました。山の一番上のほうにあったお墓はとても立派で大きくて。ああ、やっぱり偉い人だったんだなと納得しました。

徳川信康 [家康が今川家の支配から脱すると母・瀬名とともに岡崎に移り、後に岡崎城主となる。信長の娘・徳姫と結婚するが、信長から武田との内通を疑われる。]

支えてくれるみなのために突き進む [平埜生成さん]

役を演じさせていただくことが決まってから信康について事前に調べたりもしましたが、監督やプロデューサーさんから、台本の信康を信じて演じてくださいと言っていただいたんです。台本に描かれていたのは、武勇も才知も優れた完璧な人でした。そのうえ生まれながらの“若”で気品もある。それらを意識して演じるというのは、ごくふつうの家庭に生まれた僕にとっては難しいことでもありました。

その一方、近寄りがたい特別な人というのではなく、一人の人間であることを大事にしたいと思ったんです。家康と瀬名という父と母の間に生まれ、大勢の家臣が支えてくれている。どんなに素晴らしい人間でも一人では生きていけないのですから、そうした人間としての感情を絶対に忘れないで演じることを心がけました。

浜松勢を率いた家康に信康が幽閉されることになったシーンの撮影では、家康役の阿部サダヲさんと瀬名役の菜々緒さんのお芝居にとても感動しました。「殿、これはいかなることでございますか」という瀬名のセリフを受けて、家康が「奥は乱心した、下がらせよ」と続くのですが、阿部さんがあえて無表情のまま言葉を出さなかったのです。その間、菜々緒さんは泣き叫びながら芝居を続けていました。そうして、ようやく阿部さんがセリフを言われたとき、家康が苦しんで苦しんでようやく出てきた言葉だということが心に深く刻まれて、すごい両親を持ったなと感動しました。

石川数正 [家康が今川家の人質だった時代から仕え、家康の独立で瀬名が今川の人質となった際には奪還のための交渉にあたった。岡崎城で瀬名、信康の側近くに仕える。]

大切な人を守れなかった… [中村織央さん]

瀬名のことは、本当に好きだと思います。ただ、それは恋ではない。もちろん今川家にいたころから仕えていて、その後もずっと側についているのですから、ある意味、家康より長い時間をともに過ごしています。それでいて出しゃばらないから、信頼関係は築けていると思います。

ただ、数正の家康に対する思いはそれ以上です。酒井忠次のように自分で勝手に判断して動くことはないし、家康に決して「ノー」とは言わない。殿が言ったことだけを忠実にやりとげる人物。そこは100%信頼されていたと思います。どちらも忠誠心は強いのですが、酒井は家のため、数正は個人のためという違いですね。

だから岡崎城にいってからは寂しかったですよ。瀬名と信康を守るのが数正の役目で、それが重要だとわかっていても、本当は浜松でもっと仕事をしたいと思っていたんじゃないかな。その一方、家康の嫡男である信康を立派な“若”に育てたという誇りはあったと思います。ところが、その一番守るべき瀬名と信康を守り切ることができなかった。決して数正ひとりの責任ではないけれど、それでも一番仕えたい人の妻と子を守れなかった自分は一体何をやっていたんだ。すべてが空しくなったことは容易に想像できます。僕自身も台本を読んだとき、ああ、ここから何を守ればいいんだと、一瞬、からっぽになりました。この後、浜松組に加わるのですが、本当なら死んで詫びるべきところなのに、なぜここにいるのか。そんな自問自答を繰り返しながら演じています。