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過去にとらわれず、明るく屈託なく [小野万福役・井之脇 海さん]

真っ直ぐな思いに共感

撮影に入る前は、万福役に少し身構えてしまうところがありました。父親の玄蕃を早くに亡くし、伯父の政次は裏切り者とされている中で育ってきたという過去を考えてしまったからです。ところが台本に描かれていたのは、一度潰れてしまった家ではあるけれど、過去にとらわれることなく、新しい自分たちの未来を創っていこうとする虎松と亥之助の真っ直ぐな思いでした。松下の家で暮らしてきた時の流れ、穏やかな中ですくすくと育った少年たち。もちろん彼らなりに克服してきたことはあったと思いますが、明日に向かう気持ちが本当に大事なんだと共感できました。

そんな中で、万福の真っ直ぐさは父の玄蕃譲りなのかなと思うところもあります。表か裏か、善か悪かといった二択の中でぴんと感じたり、一番良いと信じたものを選んでいく。一方、伯父の政次の考え方は、数多くの選択肢の中からハードルの高いものを選んでいくというイメージです。ただ万福にとって政次は育ての親に近い存在だったので、受け継いだものもたくさんあります。手首にまいた包帯のようなものや小具足、碁を教えてもらったことなど、それらを目にするたびに、決して暗いことばかりではない思い出がよみがえり、政次が隣にいて守ってくれている感覚を覚えます。

万千代と共に目指すもの

クランクインして早い時期に、「きょうより井伊万千代、小野万福を名乗れ」と家康から言われるシーンの撮影がありました。その時、亥之助は本当に嬉しかっただろうなと思いながら演じていました。「俺は井伊家を再興してもらうつもりだ」と言った虎松の言葉に、自分の心の奥にも小野家再興の願いがあったことに気づかされた。諦めが先に立ち踏み出すことが出来なかった思いを虎松が引き出してくれたからです。
あの時代は、今より家に対する責任感がものすごくあったと思うんです。僕がもし仕事で何か失敗したら、次に頑張って取り返そうと考えるけれど、時代的に一つのことが命取りになってしまう。自分だけではなく周りの人も巻き込んでしまう。今の人とはケタ違いの精神力で常にプレッシャーと向き合っていたんだと思います。菅田(将暉)さんとも、そういうところを意識して大事に演じていこうと話し合っています。

菅田さんとは撮影初日に二人で焼き肉に行き、そこで役のことからプライベートなことまで、いろいろな話をすることができました。芝居について菅田さんもかなりストイックに考えてからリハーサルに臨むタイプなので、芝居を合わせた時、思っていたのと違うこともあります。そこでお互いに意見を交換しながら作っていくのですが、気さくに反対意見も言い合える。菅田さんとの距離が遠すぎず近すぎず、とてもよいコミュニケーションが取れていると思います。共演4回目ということもあり信頼関係がある中で出来ているのが楽しいですね。所作や時代のことなども一緒に無我夢中で学んでいるので、本当に万千代と万福のようにいい関係です(笑)。

楽しくて大変だった草履番

徳川家での万千代、万福のスタートは草履番でした。僕や菅田さんの感覚だと小姓は一番下っ端の新入社員。草履番はまだ学生のようなもので、まず就職をしなくてはという意識でした。

ただ、台本に草履を「シュターンシュターン」と投げると書いてあるのを見て「?」でしたね(笑)。史実に残る図を見せていただいても、やっぱり想像がつかない。それでも僕も投げる気満々で練習していたのに、実は万千代が投げて万福はサポートする役目でした(笑)。最初はなかなか決まらなかったのに、何十回かに一回、僕が渡して菅田さんが投げるというタイミングが全部合って、草履が見事に揃った時がありました。本番中だったのに二人とも嬉しくなって「やったー!」と思わずにやっとしちゃいました。ただ、「シュターン」を開発するまでは、ひたすら草履を預かり下げるの繰り返し。スクワット込みで延々とシャトルランをしているようなもので、筋肉痛になって大変でした。昔の人の足腰の強さを思い、それは伊賀越えだって出来るよなと納得でした(笑)。

草履番も万千代と二人だったときは、ただ真っ直ぐでがむしゃらだったのが、ノブ(本多正信)が加わることで変化球になる。それを万千代が空振りしまくり、僕はその球をなんとか捕ろうとする。ドタバタとかみ合っていないようで、うまくバランスを保ち、まとまっていくのがすごく楽しかったです。ノブ役の六角精児さんが現場にいるとすごい安心感があります。大先輩ですし、正信というキャラクターも魅力的で面白くて感動しています。