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常慶の心を感じてください[松下常慶役・和田正人さん]

感情の解放

常慶は当初、密書を届けたり陰で情報を伝え合たりと隠密行動をする存在でした。そのため演技面では簡単に感情を出さず、喜怒哀楽を見せないように意識していたんです。そんな風に役割上抑えた演技が続いたので、僕自身、実は松下家にフォーカスする日を待ちわびていました。それまでの抑えた演技が長いフリになって生きるときがきっと来ると信じて!(笑)。30数話堪え忍んで、ようやく貯金を散財する日が来たのかなと思っています。

常慶に変化が現れたのは、松下家が徳川に帰順してから。正式に徳川の家臣となり、立場も変わって本来の人間味のある部分が垣間見られるようになってきました。そんな変化を見ている方に感じていただけるよう、今度は「喜怒哀楽を積極的に出したほうが面白いな」と思っているんです。いきなり人が変わったようになってはいけないので気をつけてはいますけどね(笑)。

虎松(万千代)が松下ではなく井伊を名乗りたいと家康に申し出たときも、舌打ちをしたりして感情を露わにしています。そうやって皆さんにも少しずつ常慶は「心のある人なんだ」と感じていただければうれしいですね。

山伏姿を卒業

長い間、陰の人物として暗躍してきた常慶。のちに徳川家の家臣となり、台所奉行をしていたという記録が残っているものの、これまでドラマで描かれてきた部分はほとんど資料がなかったため、台本から想像を膨らませるしか切り口がありませんでした。
とはいえ、密書や極秘の情報を持って行き来するという役割は、今では考えられないほど緊張感のあるものだっただろうと想像はできました。現代ではメールや電話一本で伝えられることを、危険が隣り合わせのなか何日もかけて自分の足を使って届けるわけですから、情報の重みが違いますよね。歴史をも変えうるような情報を運んでいた苦労を考えると、届ける相手に対する緊張感や、返事をもらって帰らなくてはならないという使命感、そうしたプレッシャーが透けて見え、面白いですよね。

そんな常慶のトレードマークと言えば山伏姿ですが、数いるキャラクターのなかでも衣装の色合いからして違う印象だったので、セリフは少ないですがオイシイと思っていたんですよ(笑)。正式に徳川家の家臣となってからは、山伏姿を卒業しましたが、色合いはそのまま。やはり徳川家家臣団のなかでも違う雰囲気をまとっているんですよ。ようやく腰に刀をぶら下げるようにもなって、僕自身、少しテンションが上がりました。

兄への思い

常慶の兄、源太郎は井伊からしのをめとり、養子に迎えた虎松にいずれは松下を継がせたいと思っていました。しかし、大事に育ててきた虎松は、徳川に士官する際に「井伊を名乗って仕えたい」と願い出てしまった・・・。常慶が虎松の言動に怒りを覚えるのも当然ですよね。
セリフにもありますが、常慶は長い間暗躍するなかで、人前では言えないようなことも経験してきたのではないかと思うのです。そんな彼にとって唯一の救いだったのが、兄の源太郎でした。それだけに兄への思いが強いんですよね。ですから、松下家が徳川の家臣として腰を据え、ようやく幸せを全うできると思った矢先の虎松の裏切りに、常慶が真っ先に考えたのは兄の心の内だったのではないでしょうか。

常慶は家康に談判したり、直虎を訪ねて虎松を説得するよう頼んだりと、何とかして虎松を思いとどまらせようと奔走します。何が何でも松下を捨てることだけは食い止めたい。それは苦労をかけた兄への思いがそうさせたのではないかと思っています。