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悩みつつも“娘”への深い愛を表現できたら [井伊直盛役・杉本哲太さん]

フラットな視点を持った人の心に寄り添える当主

直盛は井伊家当主でありながら、“殿”とは名ばかりのような、実に苦労の多い人物ですよね。家中は今川をめぐりしばしば対立し、上からはたたかれ下からは突き上げられ、まるで中間管理職のよう。また、しっかり者の妻の千賀からもときにヤイノヤイノ言われたり、一人娘のおとわの少々自由な発言に戸惑ったりと、とにかく周囲に翻弄(ほんろう)されるのが直盛という男かもしれません(笑)。演じるうえでも、直盛の“答えが出せない”雰囲気を常に意識はしていました。

でもそれは一方で、戦国動乱の世にありながらどんな立場の人の意見に対してもフラットに耳を傾けることができる、直盛の魅力なのだとも感じています。つまり、一見優柔不断に見える部分も直盛の優しさの表れだと。単に“戦国武将”という枠でくくることのできない豊かな人間味にあふれた人物だと思っています。

井伊家の真実!?実は“ほのぼの”収録しております

千賀役の財前直見さんとはこれまで何度かご一緒していますが、夫婦役ははじめて。財前さんとはお芝居の呼吸が合うのでとても心地よく、今回夫婦という形で共演できてとてもうれしいです。千賀は男子を授からなかったことを直盛に申し訳なく思っているようですが、直盛と千賀は厳しくもたくさんの愛を持って娘・おとわに向き合う、すてきな夫婦じゃないでしょうか。

おとわ役の新井美羽ちゃんもストレートなお芝居が胸に響く、とてもすばらしい力を持っていると感心しています。でも何よりも、美羽ちゃんと亀之丞役の藤本哉汰くん、鶴丸役の小林颯くんの“幼なじみ”子役3人がスタジオにそろっているとかわいくてかわいくて。3人でひそひそと小声で何かをしゃべっているんですが、僕が近づくと会話をすっと止めちゃうんですよ。残念ながら仲間に入れてもらえないんです。でも、そんなところもまたかわいくてしかたがない。井伊家は舞台裏ではいつもほのぼのし、娘をでき愛しちゃっています(笑)。

“娘”でよかった――直盛は心からそう思ったと思う

美羽ちゃんから柴咲コウさんに代わったときも自然にバトンタッチできていたというか、僕はなんの違和感もなく、柴咲さん演じる次郎法師と父娘として向き合えました。柴咲さんとも以前映画で共演していますが、相変わらず目に力のある凛(りん)とした美しさを感じました。

数奇な運命をたどらざるを得ない娘に、直盛は本当のところどんな感慨を持っていたのでしょうか。でも、柴咲さんの存在感のある次郎法師を見たときに、井伊家とその領民である井伊谷の人々にとって「太陽のような存在だったのかもしれないな」と思えたんです。つまり、なくてはならない人だと。直盛は男児には恵まれなくても、「井伊家に娘がいてよかった……」ときっと心から感謝していたと思うのです。

そういえば、浜松のロケでは時間があれば龍潭寺や井伊谷城跡など、井伊家ゆかりの地を訪ねて歩くことができました。周囲には棚田なんかもあって、とても美しい自然に恵まれた井伊谷城址から城下を見たときに、「こういう土地で治世をしていた殿だったんだな」と直盛に思いを馳(は)せました。きっとこの緑豊かな中で井伊谷の民たちとも密着した、土のにおいのする殿だったんでしょうね。直盛と井伊家の行く末を、これから楽しんでご覧いただけたらうれしいです。