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直虎で伝えたいこと 前編 [作・森下佳子さん]

なんという思い切りの良さ!

井伊直虎という女性のことをプロデューサーから聞いて面白いなと感じたのは、その思い切りの良さです。「ふつうならそれはしない」というような思い切った策をとり、それを実行してしまう。それも、まだ子どものころからというところに興味をひかれました。

そのひとつが、いいなずけが命を狙われ逃亡し、行方不明になったら出家してしまったこと。ドラマでは9歳か10歳の設定ですが、子ども時代のことだったと言われています。そこに天賦の才を感じたこと、また子ども時代に彼女らしさを発揮していることから、その部分を全面的にふくらませて子役でじっくりと描いています。

とはいえ年表を見ると同時代の徳川、武田、織田の部分はぎっしり埋まっているのに井伊家の部分は真っ白でスカスカ。どうなることかと思いましたが、井伊家が何かしら関わっていたと考えられる史実はそれなりに残っています。そこへいくまでに、一体彼女は何をしたのかという部分を考えながら書くという形ですね。時の権力者の資料が残っているからといって、そこに書かれたお屋形様の姿は誰かの創作が入っているわけで、それなら資料がない、知っている人がいないのだから、私が感じる直虎のかっこよさや、あるいはばかだなと思うことを書けばいいと思ったのです。

答えは一つではないということ

思い切りの良さと同時に、直虎らしさを表しているのが「徳政令」をしばらく実行させなかったという史実です。「徳政令」を認めると井伊家がつぶれるかもしれないとなったとき、直虎は戦うでもなく受け入れるでもなく、ある策をとり、なんとかかんとかやっていく。そこに彼女らしさがよく出ていてすごくいいなと思いました。今、世の中はとかく、AかBか選択肢はどちらかしかないというふうに語られ、追い詰められることが多くなっている気がします。でも、AかBかで納得がいかなかったら、CかDを探せばいい。彼女にはそういう発想があったのでしょう。

城主として敵との人間関係や駆け引きも勝負どころになってきます。敵といっても必ずしもあからさまな敵とは限りません。井伊家にとって主家であるはずの今川家が、一番、井伊家の人間を殺していくという不思議な構造になっている。そのうえ家内にも敵がいて、これを殺すわけにはいかない。さらに敵でいながら敵ではない部分があったり、あるいは状況が変わって敵ではなくなるといったことが、ばたばたと起きるのが戦国時代です。そんな生々しい駆け引きが必要な状況を直虎がどう切り抜けていくのかというのも見どころです。

答えは一つではない。だから、みんな粘ろう、考えよう、頑張ろうといったことをメッセージとして伝えていきたいと思っています。

後半に続く