中日新聞 × NHK名古屋 災害死“ゼロ”は可能か? 記者が探る未来図
中日新聞
その3

津波察知 より早く空から
東京学芸大など 発生時の電離層着目

東日本大震災で甚大な被害をもたらした津波。より早く、より正確に規模や到達時間を予測できたら-。
「災害死ゼロ」の可能性を探る中日新聞とNHK名古屋放送局のコラボキャンペーン第3回は「いち早く津波を捉えろ」。
新たな予測システムの開発や運用に取り組む研究機関を取材した。(天田優里)


「津波が起きて海面が隆起すると、その上空の電子の数が少なくなることが分かりました」。東京学芸大の鴨川仁准教授(地球惑星電磁気学)は、地上約80~1000キロの上空に電子が浮遊している「電離層」と津波の関係に着目した。
鴨川准教授は、津波発生後、海面が上下して空気が振動する影響で上空約300キロの電離層の電子が押しのけられ、層に穴が開く現象が起きることを突き止めた。さらに発生場所近くの衛星利用測位システム(GPS)の電波が乱れることで、津波が起きた位置などを確認できるという。

電離層と津波の関係を説明する東京学芸大の鴨川仁准教授

過去20年間に太平洋で発生した津波について、GPS7基と日本国内にある約1000カ所の受信機のデータを分析し、津波の規模を算出するプログラムを作った。津波発生から電離層に穴ができるまで最低8分かかるが、規模や場所によっては地震計や海底の津波計を利用するより早く津波の発生場所や規模、陸地への到達時刻が正確に予測できる可能性がある。まだ研究段階だが、鴨川准教授は「より早く大きな津波の発生を観測できれば、人々が避難する時間を確保できる。他の研究や技術との連携によって、いち早く危険の兆候を察知できるのでは」と期待する。
連携を考えるのは、国立研究開発法人「防災科学技術研究所」(茨城県つくば市)が運用する「地震・津波観測監視システム(DONET)」だ。DONETでは、三重県沖の熊野灘から高知県室戸岬沖までの海底51カ所に、地震計と水圧計を取り付けた計測装置を設置。それぞれをケーブルでつなぎ、津波全体の動きを捉える仕組みで、2011年に本格運用が始まった。観測したデータは緊急地震速報や津波予報などに使われている。
同研究所地震津波火山ネットワークセンターの高橋成実・副センター長は「鴨川准教授の研究との連携は、予測の精度を増すことができるかもしれない」と前向きだ。サイエンスライターの竹内薫さんは「津波被害を防ぐためには、複数の技術を併用することが大切だ」と指摘している。


中日新聞とNHK名古屋放送局は「災害死ゼロは可能か? 記者が探る未来図」と名付け、自然災害の犠牲者を減らす取り組みを、それぞれの紙面と番組(放映は愛知、岐阜、三重県)で紹介するコラボキャンペーンを展開しています。
NHK名古屋放送局では今回のテーマ「いち早く津波を捉えろ」を、8日夕のニュース番組「まるっと」で放送しました。それぞれのホームページにも記事と映像を掲載する予定です。


情報(記事)提供:中日新聞

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