東海 NEWS WEB
東海 NEWS WEBへ
WEBニュース特集
認知症をVRで体験

(2017年1月18日放送)

認知症について理解を深めてもらおうと、いま、VR=バーチャルリアリティの技術を使って、認知症の人の世界を疑似体験する取り組みが始まっています。
名古屋放送局の松岡康子記者が取材しました。

認知症症状の体験会

1月に名古屋市内で開かれた認知症の症状の体験会です。
認知症の人の診療や介護に携わる人たちが集まりました。

ゴーグル型の装置とヘッドホンを付けると、心の声と共に映像が映し出されます。
「うっかり居眠りをしていたら、どこを走っているのか分からなくなっちゃった。そういえば、どこで乗り換えるんだったっけ、どうしよう」
電車の中で目を覚ましたら、自分がどこにいるのか分からなくなってしまった場面です。

360度にわたって見渡すことができ、まるでその場にいるかのような感覚に陥ります。

「ここはどこですか?」
「出口はあっちですよ」
「そうですか」
ホームに取り残され、不安感が高まります。

体験した参加者の1人は「実際に目で見たりとか、座って見える感じの景色とかで、不安な感じがより強く感じられた」と話していました。

認知症の人も体験

若年性のアルツハイマー型認知症の丹野智文さんも体験しました。

丹野さんは「私も同じ経験が何度もあって、会社に行くのに電車で乗り換えなければいけないんですけど。もう分からなくなってしまって。1回泣きながら駅員さんに助けを求めたときもありました」と話します。

VR活用を思いついた理由

この取り組みを進めている下河原忠道さんです。
サービス付きの高齢者住宅を運営し、大勢の認知症のお年寄りと接してきました。

認知症の人への理解を深めたいと、思いついたのがバーチャルリアリティの活用でした。
下河原さんは「認知症の人がどういうふうに考えているのか、どういうことで困っているのかということを、僕らが一人称で体験をしたら、接し方に行動変容が生まれるのではないか」と、始めたきっかけを説明します。

4本の動画を制作

社員と共に、下河原さんがこれまでに作った動画は4本。

そのうち1本は、ないものが見える「幻視」の症状についてです。

友人の家を訪ねると、扉の向こうにいた人が突然消えたり、部屋の片隅に置かれている物が座っている人に見えたりします。
驚いて悲鳴を上げる参加者もいました。

体験した人は「すごいリアルに感じられたので、ちょっと恐怖。こんなんなんだとよく感じました」と話しています。

脚本は幻視の症状がある女性が担当

下河原さんから依頼を受け、この動画の脚本を書いたのは樋口直美さんです。

4年前、幻視が見えるレビ-小体型認知症と診断されました。
その症状について正しく知ってほしいと、自らの症状を忠実に再現し、演じる人の演技指導もしました。

樋口さんは、自分の見る幻視は本物そっくりで、幻視を見て叫ぶことなどは正常な反応だと理解を求めています。

樋口さんは「本物か幻視かということは、消えたり、何かがないと分からないので、これ本物?何なの?と常に迷ってしまう。『何を馬鹿なことを言っているの』と『虫なんているわけないでしょ、さっさと食べなさい』と言われてしまうんですが、それがものすごくストレスになって、病状を悪化させているということをもっと知っていただきたい」と話しています。

認知症の専門医も評価

参加した認知症の専門医、笠間睦医師です。

認知症のタイプによっては「幻視」の症状が出ることを知らない人が多いことから、バーチャルリアリティによる体験は、症状への理解や正しい診断につながると期待しています。

笠間医師は「認知症の中には、幻視を見る疾患が結構多い。そのことがまだまだ啓もうされていない。こういうふうな幻視を見る疾患が認知症の中にあるんですよ、ということが正しく伝われば、それが正しい診断に結びつく啓発のきっかけになるということで、大きな意義があると思います」と話しています。

最新の技術を使って、認知症の人の世界を体感する。
認知症の人が生きやすい社会を作るための大きな一歩になると注目されています。
下河原さんは、新たな認知症の動画の作成に取り組んでいて、体験会を各地で開きたいとしています。
問い合わせはメールで。アドレスは、VR@silverwood.co.jpです。

WEBニュース特集
このページの先頭へ