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中小もIoTで活性化

(2016年12月16日放送)

最近、よく聞くようになったIoTという言葉。
Internet・of・Thingsの略で、あらゆるモノをインターネットでつないで、新たな製品やサービスを生み出そうという意味です。
自動車や家電製品などで活用が広がり始め、例えば、IoT対応の電気ポットを買えば、給湯スイッチを押した時間などがネットを介して、遠く離れた家族のもとに届きます。
いま、このIoTの技術を使って大きな効果を上げている愛知県の中小企業があります。
名古屋放送局の澤田彩香アナウンサーが取材しました。

導入のきっかけは増産依頼

IoTを導入したのは、愛知県碧南市でエンジンやブレーキなどの部品を作っている自動車部品工場です。
昭和16年の創業で、機械の半分は導入して20年以上たちます。

社長の木村哲也さん(49)は、2年前、大手自動車メーカーから増産依頼を受けました。
そのために新たな機械を導入しようと思っても、資金にもスペースにも余裕はありませんでした。
お金をかけずに生産性を高めるには、いまの機械を改善するしかない。
そこで目を付けたのがIoTでした。

木村社長は「改善のためには、まず、現在のラインが、いつどれだけ止まり、部品を1個作るのに何秒かかるのか、正確に把握する必要がある。いまのIoT技術を使えばそれが簡単にできるのではと気がつきました」と導入したきっかけを振り返ります。

開発したIoTの仕組み

データを集めるため、木村さんたちは、古い機械に直接センサーを取り付けることにしました。
昭和53年製の機械につけたのは、250円の磁気センサー。
部品が1つできるごとに扉が往復し、センサーはそれを感知して、1つあたりの製造時間などを測ります。

部品が1つできるたびに黄色のライトが点灯する機械には、50円の光センサーを取り付けました。

こうしてセンサーが読み取ったデータは、無線でインターネット上に送られ、スマートフォンやタブレット端末で確認できます。
集まったデータを見ると、部品1つを作るのに何秒かかったのかが0.1秒単位で表示され、機械が止まった時刻や、その停止時間も一目でわかるようになりました。

木村社長は「データを見ると、いろんな疑問が出てきます。なぜここでちょっと遅れるんだろうとか、何でこの時間、止まっているんだろうとか、そういうのに気付くと、どうしたら直せるのかと考えるようになる」と言います。

生産性が大幅にアップ

このシステムを導入してまもなく、木村さんたちは、停止回数が他に比べて突出して多い機械があることに気付きました。

それは、車のけん引フックを製造する機械です。
多い日には、60回もトラブルで停止していました。
調べてみると、大きな要因は、けん引フックのネジの部分につく削りかすであることがわかりました。

そこで、機械を改造し、新たにブラシを取り付けて、削りかすが取れるようにしたところ、停止は、1日平均わずか3回に。
生産個数も、1.6倍に増えました。
こうしたIoTの仕組みを100もの機械に導入しました。

当初、3億円以上の設備投資が必要と見込んでいた生産力の向上が百数十万円で実現。
1日の残業時間も1人あたり1.3時間減らすことができたといいます。

従業員の意識にも変化が

さらに、従業員全員がいつでもデータを見られるようにしたことで、思わぬ効果も生まれました。
効率化に向けたアイデアが次々出てくるなど、従業員1人1人が、積極的に改善に取り組むようになったのです。

改善プロジェクトリーダーの増田春樹さんは「今回のシステムを使うと、やったことの変化がすぐに見られます。すぐに見られると、次の課題や問題にすぐに移れる。自分でどんどん改善できるようになっていき、やること自体が楽しくなりました」と話しています。

ほかの中小企業も注目

このシステム、ほかの中小企業からも注目され始めています。

同じ碧南市にある自動車部品の塗装会社は、一部のラインで試験的に導入しました。
工場では、完成した部品が10個そろうと、それらを入れた箱を机の上から床に下ろしています。

そこで、箱を置く机の表面に段ボールを敷いて、その一部をくり抜き光センサーを埋め込みました。
これで、箱を下ろす際に10個あたりの作業時間が、測れるようになりました。
導入してみると、同じ従業員でもその時間には大きなばらつきがあることが分かりました。
問題は、作業工程にあるのか、レイアウトにあるのか、工場では検討を始めています。

導入した塗装会社の鈴木将晃社長は「装置を見てみると、簡素な作りで、現場に簡単に取り付けられるのが大きなところだと思います。そこに改善の糸口があるんだというふうに考えられるようになりました」と話しています。
IoTを導入し効果を上げている自動車部品製造会社の木村哲也社長は、このシステムを広めることで、中小企業の底上げにつなげたいと考えています。

木村社長は「実際に自分の会社の中では、いろいろなアイデアを出して、試して結果が出ると、それが楽しいというサイクルが、かなり回りだしていると思いますので、それをぜひ他の会社さんでもやってほしいと思います」と話しています。

専門家も評価

この取り組み、各地の生産現場を約30年にわたり見てきた専門家も評価しています。

中京大学経営学部の渡辺丈洋教授は「早くて安くて非常にシンプルな事実を伝えてくれて、その情報をみんなでシェアして、なんでだろうと問い続けながら良くしていく。中小企業の生産性向上、人材育成、そういうものに大きくつながっていく」と話しています。

IoTの活用は、コスト面などからこれまで大企業が中心でしたが、今後は、中小企業でも活用の幅が広がりそうです。

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