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変身するヘルメット

(2015年3月11日放送)

災害時に私たちの頭を守るヘルメット。
いざという時にすぐに使えるようにと、愛知県高浜市の会社が身近なあるものとヘルメットを合体させました。
いったいどんなものなのか。
名古屋放送局の北澤実季キャスターが取材しました。

ヘルメットに変身するものとは・・

災害時に身を守ってくれるヘルメット。
しかし、ここにあるのは普通のヘルメットではありません。
台座に取り付けると、なんと椅子に変身します。
ふだんは椅子として使い、災害が起きた時に、つまみを90度回転させると、背もたれと一体になったヘルメットになるんです。

きっかけは東日本大震災

開発したのは愛知県高浜市のデザイン会社です。
主にデパートや博物館向けに展示用の模型を製作しています。
椅子と一体型のヘルメットを考案した社員の川井貴幸さんです。
きっかけは4年前の東日本大震災でした。
いざという時にヘルメットが離れた場所に片付けられていたため使えなかったことがあったと聞いて、何とかできないかと考えました。
川井さんは「企業が普段どのようにヘルメットを保管しているのか聞いてみると、引き出しの中とか倉庫の中とかロッカーの中とか、すぐ使うには良くない状況が多かったので、それをいかに解決するかを考えたんです」ときっかけを振り返ります。

身近な事務用品に着目

会社では、模型をデザインし、製作するノウハウはありましたが、防災用品を作るのは初めてのことです。
手探りしながらの開発のスタートでした。
注目したのは椅子です。
椅子の下の空間を使えば、ふだんはヘルメットがじゃまにならず、椅子としても使えると考えました。
さらに目指したのは、頭だけではなく、うつむいて逃げる際に落下物から首や背中も守るヘルメットです。
まずは、ふだん模型を作る時と同じように試作品を製作しました。

課題は軽量化

形は想定通りのものができたと思われましたが、デザインの際には気が付かなかった課題が見つかりました。
重さです。
ヘルメットと背もたれ部分を合わせた重さが1800グラム余り。
ボートにも使われる樹脂製で頑丈ですが、一般的なヘルメットに比べて、重さは3倍以上もありました。
実際にその試作品をかぶってみましたが、ずっしりとしていて、かぶって逃げるには重すぎると感じました。

形と素材で軽さを追求

どうすれば軽量化できるのか、何度も試作を繰り返しました。
その結果、素材は軽くても強度があり、車のバンパーにも使われる樹脂に変更。
背もたれは薄く小さくしましたが折れにくいように段差を付けて強度を増す工夫をしました。
重さを量ってみると、約1100グラム。
背もたれを含めても、一般的なヘルメットの2倍程度にまで減らすことができました。

いよいよ安全テスト

最も大切な安全性を調べるため、ヘルメットの製造会社にもテストしてもらいました。
ヘルメットの安全基準を満たすためには、国が定めた2つの検定試験に合格する必要があります。
1つ目の試験です。
上から落ちてきたものに対して、頭がどれだけの衝撃を受けるのか調べました。
5キログラムのおもりを1メートルの高さから落としました。
ヘルメットの内側にかかる力、荷重が4.9キロニュートン以下なら合格です。
結果は3キロでした。
合格です。

次は、鋭いものが当たっても貫通しないかどうかの試験です。
先のとがった3キログラムのおもりを1メートルの高さから落としました。
少し傷がつきましたが、貫通はしませんでした。
国の検定試験にも合格できる見通しがつきました。
川井さんは「結構すごい衝撃だったのでびっくりしましたが、しっかり耐えてくれました。
いつでも、どんな時にも守ってくれると実証されたので、すごく安心ですよね」と話していました。

使い心地は?

さらに使い心地についても知りたいと、企業向けに貸し出しを始めました。
まずは、名古屋市の設計会社で使ってもらうことになりました。
製品を手にした人は「座り心地は普通の椅子で、それほど重さも感じないが、椅子の機能に加えて、もうひとつ高い価値がある点にひかれます。今後の災害においてこの機能が十分使えるんじゃないか」と評価は上々です。

アイデアの斬新さは海外からも注目

完成した製品は、ヘルメットとしての安全基準と、椅子としての規格に合格。
デザインやアイデアの斬新さは海外からも注目されていて、スペインやシンガポールなどの展示会でも好評だったということです。
川井さんは「椅子にヘルメットを付けるということは、仕事をするにしても、勉強をするにしても、座っている自分のスペースなので、すぐに手にすることができます。一人でも多くの人を危険な状態から守る、そんな製品にできればいいと思います」と話していました。
この“変身するヘルメット”は、東京や千葉、新潟の会社からも問い合わせがあり、試験的に使用してもらうことになっています。
販売は、今年4月を予定しているということです。

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