
「最後の戦犯」は昭和24年10月19日に、事実、最後の戦犯として判決を言い渡された左田野修氏の手記をもとにドラマ化したものである。
左田野氏は同年7月19日に逮捕されるまでの間、実に3年半も逃亡生活を送っていた。その間の鬱々とした思いを、彼は綿々と書きつづってはいるものの、逃亡をドラマ化することは難しい。なぜなら、黙して語らぬのが逃亡者の鉄則だからだ。
僕は最初、どこをどう切り口とすればいいのか悩んでいた。しかし、左田野氏が巣鴨プリズンに収監され、自分が逃亡した後、家族がどのような仕打ちを受けたかを知って書きつづった(彼は律儀な性格であるのか、巣鴨プリズンの日々も克明に書きつづっている)「家族拘留三十七日」という手記を読んで、これならドラマ化できると思ったのだ。
戦犯については漠とした知識は持ち合わせていても、戦犯の家族がこれほどの悲惨な状況に追いこまれていたという事実は、左田野氏が手記で書いているように、「此の種の報告は世間には現れず」、僕もまるきり知らなかった。
僕は「最後の戦犯」を、歴史に翻弄された左田野氏のドラマでもちろんあるけれど、同時に、彼を信じ、彼を待ち続けた家族のドラマにしようと決めた。それから、左田野氏と彼の家族の物語が、ことさら特別なものではなく、誰の上に降りかかってもおかしくないものとして描きたいと思ったのだ。

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