制作者から

「終戦ドラマ『15歳の志願兵』にあたって」 作/大森寿美男

今年もまた8月15日を迎えるにあたり、あの戦争について、また様々な検証や追悼がなされることと思います。このドラマもその一つといえます。ある一冊の本との出会いが、このドラマを生む力になりました。それは、強烈に一つの戦争体験を伝えるものでした。そのような事実を前にしたとき、ドラマに出来ることはなんだろうかと立ち止まってしまいます。ドラマにその真実を描く力はあるのだろうか。その純粋性はあるのだろうか。しかも戦争を知らない我々に出来ることは何だろうか。それはまさに体験だと思っています。勿論、ドラマを見て戦争を体験することなど出来るはずがありません。それでも、我々は創造的にそこへ近づくことしかできないのだと思っています。ことに今回取り上げる真実、そこから浮かび上がる人間の問題は、決して過去のものではないと思いました。このドラマで描かれる人々の心理状況は、決して戦時中においてのみ起こることではなく、我々が生きている社会の無意識な価値観の危うさ、「今」という時代の不確かさ、一丸に対する盲信、個人の弱さ、その存在の重さが、今日にまで繋がるように普遍的に浮かび上がってくる想いがしました。ただ事実として歴史の悲惨さを振り返るのではなく、リアルにその痛みや悲しみを感じ、何かしら観た人に想いが残るとき、ようやくドラマは何かを伝えたと言えるのではないかと思っています。幸い、この上ない素晴らしいキャスト陣に恵まれました。純粋に彼らが「今」生きている世界を体験してほしいと願っています。

「制作にあたって」 制作統括/磯 智明

戦後と言われても今の若い人たちはどの戦争を指すのか、分からないそうです。そうした時代に、戦争を知らない世代がドラマを作っています。何をテーマにすればこの戦争を描けるのか、今の人たちにメッセージを伝えることができるのか、考えた末に辿り着いたのが、川野ディレクターの見つけた江藤氏の原案「積乱雲の彼方に」でした。この本には、戦争に押しつぶされた少年たちの夢や友情が鮮烈に描かれている一方で、大人たちの激しい葛藤がつづられています。死を決意した少年たちに何を「教える」べきなのか?「教える」ことに何か意味があるのか?戦争を肯定することを突きつけられた教師や親たちは、いわば「教育」の本質に直面します。彼らの生き様を描くことによって、まだまだ戦争を描いた作品が現代の人たちの心にひびくものがあると信じています。

「このドラマとの出会い」 演出/川野秀昭

ドラマの原案『積乱雲の彼方に』に出会ったのは、愛知県図書館の郷土資料コーナーでした。30年前の出版でしたが、旧制中学生が軍に志願する経緯に新鮮な驚きを感じました。著者である故・江藤千秋さんは、昭和31年、母校に教師として赴任。級友たちが戦場に行くきっかけとなった「予科練総決起事件」を調べるため母校の図書館・倉庫などを探したところ、関係資料が終戦時に焼却処分されたことがわかりました。江藤さんは戦争体験を風化させまいと思い立ち、元愛知一中の同級生や教師、戦没した生徒の遺族に話を聞き、生徒が残した日記などの資料を集めて本を執筆。当時愛知一中の生徒だった方は「考えるだけで胸が苦しく思い出すことすら避けていたが、今は、あの時代のことを伝えることの大切さを感じている」と語られました。戦後65年が経った今こそ、このドラマで「戦争があった時代」のことを伝える意義があると考えています。