「親子で、3世代で、見て考えてほしい」

このドラマの主人公・藤山正美の父であり、正美が通う愛知一中の英語教師でもある藤山順一を演じる
高橋克典さんに、このドラマへの思いを聞いた。

 高橋さんは、昨年一児の父となった。「実際に子どもができてからこのドラマのお話をいただき、本当によかったと思います。子どもを持ってみて、初めてわかったことがあったので、父親になってからの父親役は全く違うものでした。順一も、大人としての建前や教師としての役割など、口にはできない複雑な思いがある。その揺れ動く弱さゆえに正美を引き止められない。もし、自分の子どもが志願したら、やめるように説得はすると思うけれど、どうにもならないことに無力さも感じるでしょうね。」撮影中に、正美と実の息子が重なる時があって、正美の名前が出てこなくなることもあったという。

 教師役について問うと、「両親とも教師だったので、まず父のことを思い出しました。父は国語の教師でしたが、大学にまた入り直して音楽の教師になりました。光男(太賀)の『文学がやりたい』というセリフを聞いて、父にもこういう思いがあったのかもしれない…と、父を理解できた気がします。また、父は予科練にいて、あと数番のところで戦争に行くところでした。その話をする時は必ず涙していました。その時の涙はすごく重要なものだと思っています。さらに、祖父もアメリカ大使館で仕事をしていて英語が堪能だったので、順一は、父と祖父がモデルになっています。」

高橋さんにとって、この作品には様々な意味で強い思い入れがあるようだ。それは、役作りにも影響している。

 「今回は前髪にこだわりました。これは教師であった父の髪型です。順一は優しさからくる弱さがあったり、ちょっとスキがあったりするので、表情や目線を消す演技の時にもこの前髪が顔にかかってきて、その時の心情をより伝えることができたと思います。もうちょっと目が見えるとよかったのかもしれませんが(笑)」
 息子役の池松壮亮さんについても、「彼は感覚派の役者。母親役の鈴木砂羽さんも池松くんも僕も、みんな感覚派で似ているところがありますね。池松くんは自分とどこか似ていますね。」と、本当の親子のような関係になっているようだ。

 高橋さんから見てこのドラマは?「このドラマはいい話だけれど、美談にしてはいけない。悲しすぎて、見終わった後、一種の嫌悪感さえ感じると思います。順一の役も、演じていくうちに彼の思い・迷いなどがわかってきて、役者としてやりがいのある作品でした。順一の視点や葛藤なども見てもらいたいですし、『組織と個人』の狭間で揺れ動く部分は、現代の人も共感を持つのではと思います。ぜひ、親子で、3世代で見てください!」戦争を繰り返さないためにも見てほしい…それは我が子の未来を守りたいという、父親としての高橋さんの思いもあるのだろう。