Jリーグ30周年となる2023年のサッカーJ1が開幕しました。
今年こそ2010年以来となる優勝をねらう名古屋グランパスは、開幕から2連勝と好スタートを切りました。
NHK名古屋で生中継した横浜FCとの開幕戦では、視聴者の皆様から8000通を超えるメッセージを頂き、グランパスへの期待の大きさを感じました。
グランパスがこのまま勝利を積み重ねていく為にはどうすれば良いのか。
開幕戦の中継で解説を務めた元日本代表の小倉隆史さん(FC.ISE-SHIMA監督)に優勝に向けたポイントを聞きました。
(NHK名古屋 アナウンサー 金城均)

開幕戦で見せた!期待の新戦力 ユンカーの活躍
まず小倉さんが注目したのが"期待の新戦力"。
それが開幕戦で決勝ゴールを決めた、元デンマーク代表のキャスパー・ユンカー選手です。


前半4分、コーナーキックのチャンスで、相手の厳しいマークにあいながら、背後から左足で合わせて先制ゴールを決めました。
このゴールに、小倉さんはユンカー選手の高い能力が表れていたと言います。
ユンカー選手は、この後も、オフサイドで取り消しにはなったものの、一時追加点かと思われるようなゴールを見せるなど、大きな存在感を放ちました。
優勝の為に欠かせない"決定力アップ"へ
ユンカー選手に大きな期待がかかる理由、それは、昨シーズン、グランパスが堅守を持ち味とする一方で、"ゴールを決める決定力"に大きな課題を抱えていたからです。
具体的なデータで見ていきます。
下の表は、昨シーズン優勝した横浜F・マリノスと2位の川崎フロンターレ、そして名古屋グランパスの攻撃に関するデータです。
表の中の"ゴール期待値"というのは得点チャンスの多さを示す指標で、シュートした地点や状況などから統計的に算出した期待されるゴール数を表します。つまり"本来ならば、これだけのゴールを決めているはず"という数字です。
これを見ると、F・マリノスとフロンターレは、いずれも期待値を上回るゴールを決めている事が分かります。それだけ"チャンスを確実に決める決定力が高い"という事が言えるのです。
一方、グランパスは期待値を大きく下回るゴール数となり、"いかに決定力を上げられるか"が優勝に向けて大きな課題である事が分かります。
昨季 | ゴール期待値 | ゴール数※ | 差 |
---|---|---|---|
横浜FM | 62.8 | 69 | 6.2 |
川崎 | 49 | 63 | 14 |
名古屋 | 40.2 | 27 | -13.3 |
※オウンゴールは除く |
ユンカー選手は、その課題解決のキーマンとして大きく期待されているのです。
"サイド攻撃"で得点チャンスを増やせるか
ユンカー選手の加入で課題の"決定力アップ"は大いに期待できますが、優勝する為には、それだけでは十分とは言えません。
"そもそものチャンスの数"(ゴール期待値)を増やしていく事がとても大切です。
下の表は開幕戦で両チームが攻撃の際、"相手のペナルティエリアに何回入っていけたか"を表すデータです。
グランパスは相手の約半分の6回にとどまりました。
試合終了 | ||
---|---|---|
横浜FC | 0 - 1 | 名古屋 |
11 | PA侵入数 | 6 |
小倉さんは「ペナルティエリアへの侵入回数が少なかった。この回数を増やしていかないと得点につながるチャンスは増えない」と話します。
では、どのようにペナルティエリアへの侵入回数を増やしていくのか。
小倉さんは、"サイド攻撃"が重要だと指摘します。
小倉さん
「グランパスが"縦方向に速い攻撃ができる"というのはユンカー選手や永井選手などスピードのあるメンバーを見れば分かるし、実際にできている。ただ、それだけだと相手は対応しやすい。そういう点で、"サイド攻撃"が大切になってくる。中も外も攻撃の選択肢があると相手は守りにくい。自分たちの形として、もう1つ、サイドという攻撃のバリエーションを持っておく事。ここが優勝をねらうチームには必要になってくる」



縦に速い攻撃だけでなく、いかにサイド攻撃を織り交ぜながら、相手ゴールへと迫っていけるか。
それが得点につながるチャンスを増やす事につながっていくと小倉さんは強調します。
優勝に向けた道のりは始まったばかり
今回の開幕戦で、「グランパスのコンディションはまだまだ十分ではなかった」と小倉さんは見ています。
小倉さん
「グランパスは後半15分~20分ごろから足が止まり、守備でも相手にプレッシャーをかけられなくなってしまっていた。試合を重ねながらもっとコンディションを上げていきたい」
今後、試合を重ねる中で、チームとしてコンディションを上げながら、ねらいとする攻撃でチャンスを多く作り出し、ユンカー選手を中心に決定機でゴールを積み重ねていけるか。
シーズンは始まったばかりです。優勝に向けた長い道のりをグランパスがどのように歩んでいくのか、注目して見ていきたいと思います。
NHKでは、「まるっと!」や「夕刊ゴジらじ」、Jリーグ中継などで、今シーズンのグランパスの戦いをしっかりと伝えていきます。是非ご注目下さい!!
筆者

金城均 アナウンサー(NHK名古屋)
2005年入局。金沢局・新潟局・京都局・仙台局を経て、2020年から名古屋局でスポーツ実況を担当。
サッカーを中心に、競泳やカーリングなどの実況を務める。
小倉さん
「あの場面では力は必要ない。ボールの流れに対して角度を変えればいいだけ。足の面を作ればいいだけ。
意外に足を振ってしまう選手が多いが、そうするとゴールの枠から外れてしまう。力を入れずに面だけ作ってとらえれば、当たってボールの勢いでゴールに入っていく。そこをパッと判断できたところにユンカー選手のすごさを感じた」