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"富士山"5連覇名城大 現地取材 勝負は「スタートで」もう決していた

2023年1月4日

12月30日、静岡県で行われた「富士山女子駅伝」は、愛知の名城大学が5連覇。
1区から一度もトップを譲らない"圧勝"、伝統を受け継ぐ下級生たちが堂々の走りで力を発揮し"完勝"。しかし、私はこの結果は富士山本宮浅間大社のスタートラインに立った時点で、ある程度成し遂げられると確信した。

(NHK名古屋 別井敬之)

レース前の記事はこちら

駆け上がれ!富士の頂へ! ~5連覇に挑む 名城大女子駅伝部

以前の記事の通り、大会前最後のポイント練習を、全員がしっかりと走り終えた女子駅伝部のメンバーたち。そこから1週間後、オーダーを見ると、予定通りのメンバーが並んでいた。

私はロードレースの取材を続けているが、陸上、特に長距離は「ごまかしがきかない」。体調面も心理面も、コンディション不良がそのまま走りに表れる。だから、1年かけて少しずつ自信を積み上げ、日々の体調に配慮しながら、その上で競技力も磨いていく。 今回の7人をスタートラインにしっかり送り出せた時点で、やはり名城大は強い。米田監督はスタート前に、最後の願掛け。これで準備は整った。

個人的には、隙があるとすれば1年生が並ぶ前半ではないか、と思っていたので、第1中継所を見届けることにした。
先頭で飛び込んできたのは、名城大。1年生の柳樂あずみ選手が、長い直線で集団から抜け出していた。

柳樂あずみ選手

あまり事前に考えずに、ロングスパートはそんなに得意ではないけれど、反応で。とにかく次のランナーに少しでも前で渡そうと思って。

たすきを渡してからは、歩道に倒れ込んだまま、しばらく立ち上がれなかった柳樂選手。その姿を見て「これで決まったな」と感じた。
たすきを受け取った同じく1年生の2区・石松愛朱加選手もトップを守り、続く3区の1年生・米澤奈々香選手は区間新記録の快走。もちろん力の知られた選手ではあるが、その選手たちが臆することなく力を発揮できるところにこのチームの強さがある。

石松愛朱加選手

先輩たちは試合に合わせる日常の過ごし方がすごい。練習だけでなく寮生活でも気づかされることも多くて刺激になります。

ちなみに、この日、柳樂選手と石松選手のいた待機所には、4年生・市川千聖マネージャーの姿が。
個人的には、1年生2人をリラックスして送り出した市川マネに「MVP」を贈りたい。

レース後、保護者を前にあいさつに立った小林成美キャプテン。

小林キャプテン

この1年間私たちの競技生活をサポートしていただきありがとうございました。その恩返しとして結果で優勝というかたちで返せたこと本当にうれしく思いますし、すごく安心した気持ちです。歴代の先輩たちが築き上げてくださった伝統も守りきることができて本当に良かったなって思います。 個人としては感謝の気持ちが(口を押えて、涙があふれる)結果で表すことができなくて、、、走れないのに、ユニフォームも着けさせてもらって、先頭で走らせてもらって、本当にこんなぜいたくな思いしていいのかなっていう風に(涙ぬぐう)思ってて。

キャプテンとして、下級生には「伸び伸び」と、でも締めるところは締めるというすばらしいチーム運営。全体を前にしたコメントも見事。でも「個人としては」と話し出した途端、悔しさがこみ上げた。
長野東高から名城大に進んできた小林選手。入学以降、何度も世界への切符をつかみながらも、コロナ禍で大会がなくなる不運が続きその機会を失ってきた。ことしは世界に挑むことをめざして春先にハードな日程に挑んだこともあった。そして夏の世界選手権は成田空港での検査で出国を阻まれた。夏合宿もメニューを工夫しながら、冬に向けてはじっくりと距離を踏み、最後はキレを取り戻そうと、母校の都大路初優勝もテレビで見る暇がないくらいギリギリまで走り込んできた。
区間3位でつなぎ、急坂に挑む後輩の背中を押すトップでのたすきリレー。私には誇れる結果だと思う。

さて。
選手たちは、すでに次の目標に向けて走り出しています。
4年生は、(ちょっぴり学生らしい気分も味わってもらって、、、)春からの新生活へ。
下級生は、少しのリフレッシュを経て、増渕祐香新キャプテンのもと、負けられないプレッシャーに打ち勝つため、生活からすべてを見直す長い長い戦いです。

そんな選手たちの声を、6日(金)「夕刊ゴジらじ」でご紹介します。

筆者

別井敬之 アナウンサー(NHK名古屋放送局)

ロードレースの実況は、東京2020オリンピック男子マラソン、2019MGC女子、びわ湖毎日マラソン、全国高校駅伝など。
高校時代は母校応援のため、時刻表を駆使して都大路で応援を「はしご」
駅伝の基礎は「黙って見ること」と、初任地・神戸局時代「駅伝王国」でたたき込まれた。

夕刊 ゴジらじ