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立浪和義監督 1年目の苦悩と希望

2022年10月28日

プロ野球、セ・リーグで最下位に終わった中日ドラゴンズ。勝つこと、そして育てること、を掲げて1年目のシーズンに臨んだ指揮官・立浪和義にとって苦しみ抜いた1年だった。その裏にあった現実と苦悩、そして見えてきた希望。シーズンを終えたばかりの立浪和義監督にその本心を聞いた。

インタビューの冒頭、立浪監督は今シーズンをこう振り返った。

「今年は思い切って若い選手をどんどん使っていきながら、もちろん全力で勝ちにいった結果、最下位という結果に終わりました。一年トータルして振り返ると、今年も得点が取れなかった。特にチャンスで、なかなかいい結果が出ることが少なかった。簡単にまとめるとそういうシーズンになりました。」

苦しんだ"打"

今シーズン苦しんだ最大の要因は"打撃"だった。

ミスタードラゴンズといわれた立浪監督は現役時代通算2480安打、野手のリーダーとしてチームを引っ張ってきた。その経験を踏まえ、就任会見では「打つ方はなんとかします」と宣言していたが、思うように進まなかった。監督としてどういったことが難しかったか、率直に聞いた。

「ここ数年ドラゴンズはBクラスが続いて低迷しているなかで、なんとか就任会見で「打つ方は(なんとかします)」と言ったのですが、そこをなかなか変えることができなかったのは私の反省でもあります。いろいろ意識改革もしていったなかで、一昨年までと打つほうの成績は得点、ホームラン、盗塁も含めてほとんど変わらなかった。ただ、ホームランを打てる人がメンバーの中に数人いれば、また変わってきたでしょうけども、今年に関していえば昨年と、そんなにメンバーもかわることなく、石川昂弥の離脱もありましたが、その辺は変わらなかったかなと思います。」

見えて来た希望は"若手"

一方で、岡林勇希選手を筆頭に若手の活躍という面では、ファンが心を躍らせた。チーム改革を託された立浪監督にとっても手応えを感じたはずだ。若手の台頭についても話しを向けた。

「正直、今名前が挙がった選手(岡林・石川・鵜飼)は見切りで開幕からスタートしましたが、収穫は岡林がシーズンを通して成績を残して、これでレギュラーとしてなんとかポジションをつかんだことです。後半はセンターを守ることが多かったですが、来年のテーマとしてピッチャーを含めたセンターラインをしっかりと固めるというところがあります。今年はセカンドに阿部が入ったり、高橋周平であったり、いろんな選手を起用しましたが、特にショートとセカンドは守れるということを来年しっかりやっていきたい。そのなかで土田龍空がシーズン途中からですが、ミスもありましたが、ショートとして守備で実際に助けられたことも多かったです。打つほうも2割5分前後ですが、非常にいいところで打てる選手でもあるので、そこは収穫だったなと思います。」

立浪監督は夏に行ったインタビューで「育てながら勝つというほど甘い世界ではない」と話していた。それでも、岡林勇希選手を我慢して使い続け、最多安打のタイトルを獲得するほどの選手に育て上げた。さらに19歳の土田龍空選手を、レギュラー候補に急浮上させた。1年で着実に成果を残していることの証といっていいだろう。

厳しい決断をしたあの日

一方で、この話を聞いて、どうしても聞きたかったことがあった。不動のショートだった京田陽太選手の2軍降格についてだ。立浪監督は、5月4日DeNA戦の試合中に京田選手に2軍行きを告げた。その真意についてだ。

「京田に関していえば、もちろん開幕から期待していました。思うように特に打つほうで結果が出なかったのですが、そのなかで個人的には、まず守りを、打てなくてもしっかり守りをしてくれればいいと思っていました。しかし、守備のミスが目立ち始めて、少しボールから逃げるといいましょうか、ボールに入っていけていないというところがありました。開幕からなんとかこの選手を復活させたいということで、いろいろ工夫しながら声もかけながらやっていましたが、私からしたら消極的なプレーに見えたので、これではいけないということで、一回2軍に落とそうと。もう一回、這い上がってこさせようという意味合いも含めて、あのとき2軍に落としました。ひとつ思うのは、京田と争う選手がここ数年ずっといなかったので、ずば抜けた成績を出しているわけではないですが、争うとか、ライバル的な存在もいなかったのが、そうなった原因かなと思います。」

厳しさと対話"いまの指導法"とは

厳しさの一方で、「もう一回這い上がってこい」という選手を想うメッセージ。監督としての苦悩が見えた瞬間だったと感じる。立浪監督の現役時代、プロの厳しさを植え付けたのは闘将・星野仙一監督だった。その頃のことを率直にぶつけた。

「(星野監督の)存在自体が非常に厳しかったので、自然と緊張感のなかで、もっともっとプレッシャーを、相手と戦うプレッシャーよりも監督の怖さや、そういう雰囲気で、幸いにも自分はスタートさせてもらいました。ただ、今はもちろんまったくすべて、われわれのときと環境も違いますし、アマチュア時代も怒られることも殴られることも、まったく今はないわけです。その辺はなんでもかんでも厳しいというよりも、頃合いを見ながら自分も指導したり声をかけたりするようにしてきました。プロ野球はいま143試合で、われわれが入ったときは130試合でした。より厳しい環境になっているので最低限、野球に対してとか、取り組む姿勢など、そういったことがしっかりできない選手はレギュラーを取れないと思っています。」

痛かったコロナの影響

ここまで選手を育てることにスポットをあててきたが、立浪監督はシーズンを通して常に「勝利にこだわる」と口にしてきた。今シーズンのドラゴンズの成績は66勝75敗。最下位といっても負け越しは1桁の「9」。3位の阪神とのゲーム差は「3」だった。振り返ると5月に喫した7連敗、6月の6連敗が痛すぎる。その背景には、新型コロナの感染拡大、そして選手のけがによる離脱があった。しかし、立浪監督は一切言い訳を口にしなかった。

「これは12球団、全部同じような条件で、主力にコロナが出たり、ときには3試合、試合ができなかったりということがありました。ドラゴンズの場合は小出しに、主力が1人2人と抜けていくかたちで、正直先発ピッチャーが足りなくなった時期もありましたし、これは厳しかったですけど、これは言い訳にもならないです。現に、もっと大人数がコロナで苦しんだヤクルトもありましたから、今年に関していえばコロナの感染者数からいえば、そのなかでやりくりしなければいけないというところでは、しょうがない部分だと割切ってやっていました。
先発ピッチャーの主力が抜けて、現に小笠原も約1カ月ですね。コロナにかかるとピッチャーであれば帰ってくるまでに約1カ月弱かかりましたし、そのなかで小笠原も10勝したのは非常に自信にもなったと思います。ピッチャーも序盤、すごく頑張ってくれていましたが、なかなか今年は見ていて打線の援護がない。先にやっては勝てないというプレッシャーはあったと思うので、結果、柳や大野もそうですが、途中から勝てない時期が続くとどんなピッチャーでも調子を崩していく。とにかく課題は継続して来年も、もう少し点が取れるようにというところはあると思っています。」

立浪監督の本音が見えた

一方で、監督として感じた不安、苦しさについても率直に尋ねた。この部分は、取材者の質問と合わせて、監督とのやりとりをほぼ全文で掲載する。立浪監督の苦悩、本音が最も見えた瞬間だったからだ。

「不安といいましょうか、負けが続きますと、なかなか勝てる雰囲気になっていかないですし、ただいるメンバーで、なんとか状態がいい選手を上にあげたり、もちろん対戦相手のデータで相性のいい選手を並べたりということはしましたが、本当に連敗しているときは何をやってもうまくいかないというのはわかりました。選手が切り替えてやってもらわなければいけないのですが、われわれも1試合1試合、負けが込むと、なんとなしに、今日もやられてしまうかなと、実際、気持ちになるのですが、いかに引きずらないということ、これはすごく大事だなと。われわれがもちろん、選手にそういう雰囲気を見せないということは、スタッフミーティングで自分が1年目ですけど、選手にわれわれのそういう雰囲気が伝染しないようにという、いろいろやってはいたのですが、やっぱり、結局勝たないといい流れになっていかないので、ただ、連敗するということは力がないことですから、打線が打てなくなると本当に顕著に負けたり連敗することが多かったので、いろいろな部分で来年は変えていかなければいけないと思っています。」

Q.

落ち込むこともありましたか?

「自分は落ち込んでいないです、自分はあのグラウンドでは一切そういう姿は見せないですから、皆さんにはどう映っているかわかりませんが、さらに元気を出してやろうということはコーチ陣には話していました。」

Q.

落ち込む姿を見せないというのは、どういったときに身についたと思いますか?

「われわれは、もっと厳しい環境でずっとやってきましたし、負けず嫌いでもありましたし、ダメだなとか野球、現役をやっているときに思うことはたくさんありましたが、それは家に帰ってから、グラウンドでは後輩も見ていますしファンの方も見ているので、そういう姿は絶対に見せないようには、ずっとやっていました。」

Q.

家に帰ってからは?

「1人になったときですね、落ち込むこともありますし悩むこともありますし、なかなか球場に向かうのも憂鬱なときはたくさんありました。ただグラウンドに行ったら、いつも元気で、そういう姿勢でやろうということは気をつけていました。」

来シーズンに向けて

指揮官は孤独だといわれる。立浪監督が胸の内に抱えている思い。率直に語って頂いたことに感謝しかない。最後に、監督として今シーズン、学んだことについて聞いた。監督の気持ちはすでに来シーズンに向いていた。

「やっぱり我慢することじゃないですかね。そこが一番大事だなと思って監督に就任したのですが、我慢できた部分もありますし、まだまだ根気という部分では足りなかった部分もあると思う。今年、自分は周りから見たら厳しく見られているかもしれませんが、実際、甘すぎたなと。選手に対しても、就任のとき妥協せずやりますと言ったわりに、今年は私なりにですが選手にすごく気を使ってやってきました。来年からは勝てる選手を使う、勝ちにつながる選手を使っていく、実際今年は代わりがいなかったので、なんとかその選手をとやってきました。ドラフトを含めていま出ているレギュラー連中も含めて勝ちにつながる選手を使っていく。これは、はっきりと今言えます。これから秋は個々のレベルアップということで練習していますが、来年春からは、そういった今年の反省が出たところを踏まえて、しっかり2月からやっていきたいと思っています」

筆者

竹内啓貴 記者(NHK名古屋放送局)

平成27年入局 愛知県出身
中京大中京高時代は野球部で甲子園出場 慶応大でも野球部に所属
ドラゴンズを担当して2年目

山口弘太郎 ディレクター(NHK名古屋放送局)

令和3年入局 名古屋放送局
高校時代は柔道をしてました。
家系ラーメンやハンバーガーなどジャンクフードが好きです。