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手を尽くして部員獲得を!名大相撲部

スポーツ

2022年6月8日

国立大学7校が競う大会で、前回優勝した名古屋大学の相撲部。しかし今、部員の数が減り、存続が危ぶまれています。しかもコロナ禍で自由に部員の勧誘活動もできず、天を仰ぐ部員たち。あの手この手で部員獲得に奔走する姿に密着しました。

創部以来の大ピンチ

名古屋大学相撲部。過去には30人以上の部員が在籍し、コロナ禍前の2019年9月に開催された国立大学7校で競う大会では、団体戦で優勝を果たしました。しかし、現在選手は2人のみ。マネージャーと合わせても部員は4人しかいません。このままでは勝つどころか団体戦に出ることもできません。創部から22年、最大のピンチを迎えていました。

勧誘の切り札"ちゃんこ鍋"をふるまえない

年々部員の数は減少し、これまでも部員不足に悩まされてきた相撲部。しかし選手5人を下回ったことはありませんでした。なぜここまで人数が少なくなってしまったのか。その背景には新型コロナウイルスの影響があると相撲部マネージャーの土屋英貴さんは話します。

土屋マネージャー

「昔は花見に行って、花を見ながらちゃんこを食べるという楽しい企画をしていたのですが、それが全て新型コロナウイルスの影響でできなくなってしまったという感じですね。ちゃんこ鍋食べてみたいなと来てくれる学生が多かったので。なかなか厳しいですね」

これまで相撲部では、新入生にちゃんこ鍋をふるまい、一緒にちゃんこを囲むことで仲良くなり、入部につなげるという勧誘を行ってきました。しかしコロナ禍になってから感染防止対策のために、ちゃんこ鍋のふるまいができなくなりました。

新入生と対面で接することが制限されたこと。そして勧誘の呼び物であるちゃんこ鍋をいかせなくなってしまったことなどが影響して、去年は1人も選手に入部してもらえませんでした。

ことしはどうにかして選手を!

なんとしてでも選手を獲得したい。コロナ禍で迎えた3回目の春、相撲部は一丸となって部員獲得大作戦に乗り出しました。金髪がトレードマークの主将、青山遼太郎さんです。

大学から本格的に相撲を始め、コロナ禍前の大会では1年生ながら団体戦のレギュラーメンバーとして出場し、優勝に貢献しました。もう一度、団体戦で優勝したい。髪を金色に染めたのは、厳しいイメージの相撲にまずは気軽に興味を持ってもらいたい一心でした。

青山遼太郎さん

「新入生にぱっと見られて目立つようにして少しでも入部につながる可能性が高くなればいいかなって思ってしました。入ってほしいという思いでいっぱいです」

大作戦①"新入生の胃袋をつかめ!"

4月中旬、マネージャーの自宅で行われたのはオンラインの料理教室です。ターゲットは1人暮らしを始めたばかりの料理に不慣れな学生たち。この機会をきっかけに新入生の胃袋をつかみ、仲良くなろうという作戦です。この日作ったのはしょうが焼き。難しすぎず、料理初心者でも作りやすい料理は何かと考え、決めました。

土屋マネージャー

「野菜がしんなりするまで炒めてね。たまねぎプルプルしてくるんだけどこのぐらいが目安かな」

オンラインで新入生たちへ丁寧に作り方を教えます。

手際よく料理は完成。オンラインを通して新入生たちと作ったしょうが焼きを囲みました。楽しく雑談しながらも、しっかりと相撲部の勧誘を行います。

土屋マネージャー

「これからも新歓(新入生歓迎イベント)いっぱいやっているんで、もしよかったらクッキングだけじゃなくてもいろいろ来てもらえたらなと思います」

大作戦②"相撲を身近に!相撲体験会!"

次は実際に相撲に触れてもらおうと道場で体験会を行いました。相撲未経験の学生たちに相撲部OBも積極的に指導します。

元力士"舛名大"OBの田中周一さん

舛名大(ますめいだい)というしこ名で活躍した元大相撲力士、田中周一さん。名古屋大学の土俵で相撲人生を歩み始めた田中さんにとって、名大相撲部は原点です。

田中周一さん

「この場所が心のふるさとみたいなところはあります。コロナ禍になって2年たちますので、十分に試合ができないのは、すごく後輩たちもつらかっただろうなって。その中でも前向きに稽古や勧誘をすごく頑張ってくれている。それに対しては僕らも全力で支援しないといけないなと感じています」

大作戦③"相撲の魅力を知ってもらう!素人相撲大会"

4月下旬、部員獲得大作戦は佳境を迎えていました。主将の青山さんたちはOBの援助を受けて、優勝者には1万円相当の商品券が贈られる相撲大会を企画。できるだけ多くの人に参加してもらおうとビラ配りに奔走します。用意した約300枚のビラをなんとか配り終えました。

そして迎えた相撲大会当日

ビラを学内に配った効果もあり、参加者は11人集まりました。一人ひとりまわしを締め、道場には熱気があふれます。それぞれが優勝を目指して、大会が始まりました。

激しいぶつかり合い。押し出されないぞと土俵際でのせめぎ合いも。体格の全く違う相手に勝つ参加者もいました。大会は大いに盛り上がり、最後には勝った人も負けた人もみな笑顔で幕を閉じました。

高揚感たっぷりの学生たち

優勝した学生

「ぶつかり合って自分で思いっきり力を出して相手が動くのが気持ちいいなという感じでした」

準優勝の学生

「初めて相撲を取りましたが、やる前はテレビを見て大きい人がぶつかるみたいなイメージしか持っていなかったんです。実際にやってみたらどう立ち上がって相手にぶつかるか、すごく考えることがたくさんあって。相撲はおもしろいんだなと思いました」

参加者たちは奥深い相撲の魅力を体感したようです。勧誘の結果はいかに...

存続へ!"のこったのこった!"

5月中旬、再び道場へ訪れると、そこには新入部員の姿がありました。1年生とブラジル出身の研究生の2人です。2人に入部を決めた理由を聞いてみると...

入部した1年生

「先輩方が熱心に勧誘してくれたのと、人柄のよさで決めました。すごく居心地のよい部活なので入りたいと思いました」

ブラジル出身の研究生

「みんな本当に優しくてきれいで伝統的な活動に参加させてもらうのは本当にうれしい経験だと思いまして」

2年ぶりの選手獲得で

青山遼太郎さん

「ほっとしましたというひと言に尽きます。名大相撲部を強くしていけたらいいなと思います」

土俵際の危機をしのいだ名古屋大学相撲部。新たなメンバーで目指すのは、コロナ禍以降3年ぶりの開催となる9月の大会での団体戦優勝です。新メンバーで気持ちを一つに、次の歴史を刻む一歩が始まります。

筆者

木村果歩 カメラマン(NHK名古屋放送局)

2021年入局 ニュースの現場を走り回り取材する報道カメラマン