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急増する空き家の「空き巣」 地域防犯の切り札"空き家世話人"

2023年2月14日

愛知県内では、去年の空き家を狙った空き巣の被害件数がおととしに比べて363件とほぼ倍増しています。みなさんも親が突然の病で入院したり、亡くなったりして空き家となった家に、金めの物や家族が大切にしていた物を残してはいませんか?空き家の被害を防ぐ対策について考えます。

(NHK名古屋 記者 中谷圭佑)

被害に遭った男性は

「ショックでしたね。じぶんのうち(実家)だけはやられないと思っていましたので」。

こう話すのは会社員の浅野裕計(あさの・ひろかず)さん(63)です。

浅野さんは去年6月、愛知県瀬戸(せと)市の実家を訪ねたところ、空き巣の被害に遭っていることに気づきました。実家は母親がおととし、突然倒れて入院してから1年以上空き家となっていました。

浅野さん

「少し片づけはしましたが、フロアに物が散乱しておりまして。引き出しはいま閉めてありますが、全部開いていた状態でした」

庭に面した廊下には何者かが侵入した足跡。
窓ガラスには犯人がガラスを割って鍵を開けようとした際についたとみられる傷が残されていました。
また1階から2階までの部屋のあちこちで棚の引き出しが開けられ、物が床に散乱していました。

盗まれた物の中には入院した母親が長年大切にしていた指輪などの宝石のほか通帳や印鑑がありました。

浅野さん

「母親は宝石を集めるのが好きでした。指にはめたりしてうれしそうにしていました。いまはショックが大きいと思いまして・・入院している母には指輪などが盗まれたことについては伝えられていません」

空き家を犯罪から守るポイントは?

急増する空き家の「空き巣」被害をどうすれば防げるのか。

警察に取材すると、「狙われにくくすること」が重要で、次のような対策が有効だということでした。

▼庭の雑草除去

▼庭木の枝のせんてい

▼ポストにたまっているチラシを取り除く

▼出入り口のほこりの除去

▼現金や貴重品を置かない

etc...

瀬戸警察署浅野幸司生活安全課長

さらに防犯グッズも活用してほしいと呼びかけています。

▼窓ガラスに「防犯フィルム」

▼スマートフォンと連動した「窓や扉用防犯ブザー」

▼ソーラー式の「センサーライト」「防犯カメラ」

対策には難しさも?

しかし、上記のような対策、簡単ではないと思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

「実家から遠い場所に住んでいる」
「仕事が忙しくてなかなか帰れない」。

さらに高齢の親が入院した場合などは、いずれ家に戻ってくることを考えると、「ものを置かない」というのも難しいことだと思います。

被害に遭った浅野さんもそうでした。

浅野さんが住む愛知県日進市から瀬戸市は距離があり、仕事の休みも日曜だけ。

実家を訪れたのは半年ぶりだったと言います。

浅野さん

「毎週来るわけにも行かないですからその辺が難しいですね。気持ち的にはやらないといけないという気持ちはありますが、やろうとなると結構大変です。気持ちはあるんですけど、なかなかこられないのが本音ですね」

地域の取り組み広まるか

そうした中、新たな取り組みを始めた地域が瀬戸市にあります。

中心になっているのは瀬戸市效範(こうはん)連区の自治会長、加藤文弥(かとう・ふみや)さん(70)です。

加藤さんはみずからが自治会長を務める地域で被害が相次いでいることを知って危機感を感じ、対策に乗り出しました。

加藤さんはまず、どれだけ空き家が存在しているのかを知るため3つの町内を選んで調査し「空き家マップ」を作成。この空き家マップを元に対策を打ち出しました。

ポイントは地域の人たちで力をあわせて「空き家を空き家に見せない」ようにするということです。

①駐車場を近所の人に貸し出す

近所の人に空き家の駐車場に車を置いてもらうことで人が住んでいるようにカムフラージュする作戦です。

②庭先で野菜の栽培も

別の空き家では庭の雑草抜きや木のせんてい、さらには庭先で野菜の栽培も始めました。

これらを行うのは「空き家世話人」と呼ばれる地域住民。

空き家をカムフラージュするのが役割で、自治会長が任命します。

空き家世話人のひとり、
駒形光勇さんは、空き家の防犯対策をしながら家庭菜園もできて、一石二鳥だと話します。

空き家世話人・駒形光勇さん

「道路から見える場所にはできるだけ背丈の高いものを植えています。時々地域のみんなで庭に入って会話をすることも大切です。家の前で立ち話とかもしていて、そうすることでこの家には人の目が入っているということを犯人たちに知ってもらうことが大切です」

加藤さん

「地域が一体となってやることがいちばん効果が高いと思う。瀬戸市全体の連区のモデルになればうれしい」

加藤さんたちは今後、空き家の玄関前や庭先に花を植えたり、空き家を地域のお年寄りたちが集まる場所として活用したりして、空き家の防犯対策を進めていきたいと考えています。
少子高齢化で今後も増え続ける空き家。個人でできる対策が限られる中、こうした地域のユニークな防犯のアイデアが広がってほしいと思います。

筆者

中谷圭佑 記者(NHK名古屋放送局)

警察担当として事件を取材 富山局を経て去年8月から名古屋局へ