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KYジャーナル「相続準備は元気なうちに」

2022年11月8日

あえて空気を読まず、働く女性の視点から、社会に切り込む、山本恵子解説委員(Keiko Yamamoto)の「KYジャーナル」。
今回は、家族が亡くなったあと必要になる「相続手続き」の準備についてです。

わたしは、2年前に父を亡くし、葬儀や相続手続きをしました。
お葬式が大変、というイメージはありましたが、実は、その後の相続の手続きが一番大変で、すべて終わるまでに9か月かかりました。この体験を元に「家族が元気なうちにやっておけばよかった!」と思ったことをお伝えしたいと思います。

相続の手続きは
※画像をクリックすると拡大画像をご覧いただけます。

手続きの一部を表にまとめました。
人によって違いますが、数十から100以上あると言われています。
期限も亡くなってから1週間、2週間、3か月、4か月、10か月以内、と決められているものも多く、手続きする役所も市区町村の役所、年金事務所、税務署など、また、必要な書類もさまざまです。

例えば、亡くなったあと、1週間以内にやらなくてはならないのが、
市区町村役場で▼死亡届の提出 ▼火葬許可申請書の提出することなどです。

また、2週間以内には▼世帯主の変更届 ▼健康保険の資格喪失届 ▼介護保険資格停止喪失届の提出などの手続きが必要です。

同じく2週間以内にやらなくてはならないのが、
年金事務所での▼年金受給停止の手続き、年金受給権者死亡届の提出です。
しかも、手続きに行く前には予約が必要で、
▼年金証書や ▼戸籍謄本 ▼マイナンバーカードなどを持って行く必要があります。
父は、マンナンバーカードを作っていなかったので、
個人番号の通知カードが必要で探したのですが、通知カードが見つからず困りました。
見つからない場合は、個人番号が記載されている住民票でもいいそうです。

やっておいてほしいこと(1)

そこで、まずやっておいた方がいいと思うことは、保険証や免許証、年金証書やマイナンバーカードなど、手続きに必要なものは、普段どこに入れてあるのか決めておく、聞いておくことです。

なるべく早めにやったほうがいいことは

その後も、なるべく早めにやったほうがいい手続きとして、
▼公共料金等の名義変更や解約 ▼運転免許証やパスポートの返却 ▼クレジットカードの解約 ▼携帯電話や固定電話の名義変更や解約 ▼死亡保険金の請求などがあります。
また、必要な人のみですが3か月以内には▼相続放棄申述書の提出、4か月以内には▼所得税の準確定申告など、やらなくてはならないことは、まだまだ続きます。

相続税の申告のためにやっておくこと

そして、1番大変だったのが10か月以内に行う「相続税の申告」です。

「申告」のためには、相続するもの、つまり、土地などの不動産や預貯金、株式、負債など。
財産がどこにいくらあるのか、洗い出しが必要です。

やっておいてほしいこと(2)

そこで、元気なうちにやっておいてほしいのが、「財産目録」を作っておくことです。

土地や建物などの不動産、預貯金や保険、証券、住宅ローンなどの負債も含めて、相続する財産は何かを調べて、一覧にまとめておくといいと思います。

やっておいてほしいこと(3)

さらに、預貯金は、金融機関、支店、口座もリストアップする必要があるのですが。
本人が元気なうちにやっておいてほしいことは、使っていない口座の解約です。
というのも、相続の手続きでは、支店、口座ごとにいくらあるのか、一つ一つの残高証明書の申請をして発行してもらう必要があります。
ちなみに、私の父の場合、4つの金融機関の6つの支店に口座がありました。

金融機関の手続きは平日、行かなくてはならないところも多く、ある銀行に、平日半日休みをもらって手続きに行ったら、残高証明の発行に550円、解約に550円、あわせて1100円の費用がかかったのですが、口座の残高は、なんと816円で、とほほでした。

また、金融機関の手続きには、
▽その人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本と、
▽相続人全員の戸籍謄本、▽相続人全員の印鑑証明書と実印、
▽遺産分割協議書など、必要な書類が多く、その都度、揃えて持って行くのも大変で、
さらに、
手続きのための書類を何枚も記入しなくてはなりません。

元気なうちに、本人が、使っていない口座は、解約しておいてくれると、家族は本当に助かると思います。

やっておいてほしいこと(4)

さらに、相続の手続きで、時間がかかるのが、その人が生まれてから亡くなるまでの戸籍謄本を集めることです。遺言がない場合は、現在の家族のほかに相続する人がいないかを確認するためです。

遠くの場合は、郵送してもらうこともできますが、そもそも、どこに住んでいたかわからないといけないので、元気なうちに、どこで生まれたのか、など、
ファミリーヒストリーを聞いて記録しておくといいと思います。
父の場合、住んでいた役場に生まれたときの戸籍がなく、生まれた場所の役場で入手したところ、明治時代からの戸籍で、なんと天保生まれのご先祖まで記載してあって、まさにファミリーヒストリーでした。

なかなか、亡くなったあとのことは話しづらいですが、親御さんが、自分が元気なうちに、家族と話し合いながら、準備を進めてもらえたらと思います。

今回紹介した相続手続きについては、人によって必要なもの、揃える書類も異なりますので、お住まいの市区町村役場や年金事務所、利用している金融機関などにご確認ください。

筆者

山本恵子解説委員(NHK名古屋放送局 報道部 副部長)

愛知県出身。1995年入局。金沢局を経て社会部で教育、女性活躍、働き方改革などを中心に取材後、名古屋局で赤ちゃん縁組や里親について取材。国際放送局World News部を経て2019年再び名古屋局。「子ども子育て応援プロジェクト#わたしにできること~未来へ1歩~」スタート。2021年より解説委員(ジェンダー・男女共同参画担当)を兼務。中学生の娘の母。