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愛知に砂丘!? 貴重な自然を残すには ~稲沢市~

2022年11月7日

突然ですが、みなさんは「砂丘」と聞いて何を思い浮かべますか?壮大な砂の景観が広がる鳥取県の鳥取砂丘を真っ先にイメージする、という方も多いのではないでしょうか。そんな「砂丘」、実は愛知にもあるんです!知られざる砂丘について取材しました。

ここが「砂丘」?

エジプトのピラミッドやロンドンのビッグベン。
砂で再現した世界の観光名所、12の像が展示されているのは愛知県稲沢市にある国営木曽三川公園。10月8日から11月3日まで開催された「稲沢サンドフェスタ」の一幕です。
でも、木曽川沿いになぜ砂の像? 実はここ「祖父江砂丘」という砂丘なんです。

たしかに砂地は広がっていますが、正直なところ「砂丘」っぽさは、ほぼゼロ。それは訪れた人も同じだったようで・・・。

あま市から訪れた人

「砂丘?そんなにたくさん砂があるとは・・・」

日進市から訪れた人

「びっくりしました。初めて聞きましたので。鳥取砂丘と、静岡県の中田島砂丘。あの2つしか知らなかったので」

「祖父江砂丘」とは
祖父江砂丘
鳥取砂丘

砂丘というと「鳥取砂丘」のように海岸に海からの強い風でできたものが有名ですよね。こちらの「祖父江砂丘」は川沿いにある珍しい砂丘です。

もともと砂がたまりやすい地形に加えて、伊吹山から吹く風「伊吹おろし」が岸にたまった砂を巻き上げてできたものです。

川沿いの砂丘って全国に数か所しかない、貴重なものなのです。取材していると貴重な写真を見せてもらうことができました。

木曽三川公園管理センター・小田倫之さん

「昔、祖父江に住んでおられた方からご提供いただいた昔の砂丘のお写真になります」

昭和30年代に撮影されたこちらの写真。現在の姿からは想像がつかないほど、砂が積もっているのがわかります。

でも、この砂丘、年々面積が小さくなっているんです。

進む砂地の減少

「祖父江砂丘」について研究している、名古屋工業大学の増田理子教授です。取材中、私に見せたいものがあると、増田教授はなんと川の中へ。

名古屋工業大学・増田理子教授

「ここはもともと全部砂丘だった場所で、ここ入ってみるとですね、砂をとると上(陸上)の砂と同じ砂になっています。あそこの頭首工で水に埋まっていますけど、もともとは砂浜がここにずっと広がっていた」

砂地が減少した大きな原因のひとつが、取水のため川をせき止める頭首工の存在です。

左がおよそ50年前の祖父江砂丘。右が10年ほど前の写真です。
1977年、砂丘の近くに造られた頭首工によって川岸の水かさが増し、砂地は姿を消しました。

そしてもうひとつ、砂丘の砂から住宅地を守るために植えられた防風林も砂地が減少する要因となりました。

名古屋工業大学・増田理子教授

「本来であれば木曽川から流れてきた砂が『伊吹おろし』でこっちのほうに供給されてきた。風で吹き上げられてこっち側にたまってくる。風を止めて砂が来ないようにしているので、砂地が減っている理由の1つにもなります」

防風林が風を止め砂が移動しなくなったことで、砂地の増殖が抑えられました。そして、砂地にならずに残った場所に本来であれば生えなかった植物が増えはじめたといいます。

名古屋工業大学・増田理子教授

「これが『オオフタバムグラ』という外来種になります」

外来植物が増えたことで、砂地だったところが徐々に草地に変化し、砂丘の面積が減ってしまったのです。

生息できる場所が減っている植物も

砂地の減少は、同じ植物でも砂地で育つ希少な種にとっては、絶滅の危機につながるといいます。

名古屋工業大学・増田理子教授

「砂丘には絶滅危惧と呼ばれているめずらしい植物がたくさん生えています。ほかにもその植物を利用している昆虫類がいますし、それを利用している鳥とか大きな捕食者の哺乳類なんかもいます。この砂丘がなくなるとそういった絶滅危惧を利用している生物がいなくなってしまうということもありますので、ここはぜひ保存していきたい」

貴重な砂丘を残すために

国営木曽三川公園では毎年、サンドフェスタの開催期間中に砂丘を保護するイベントを行っています。外来植物の駆除を通して多くの人に砂丘の現状を知ってもらうのが狙いです。

参加者

「こういう活動があれば子どもと一緒に参加できたらいいなと思います」

参加者

「景観的にはめずらしいものなので住んでると誇りというか。残したほうがいいかなと思いますよ」

木曽三川公園管理センター・小田倫之さん

「祖父江砂丘は全国でもめずらしい河畔砂丘で、めずらしい生物も多いです。多くの方に祖父江砂丘が非常にめずらしくて貴重なものだということを知っていただきたいなと。この活動は継続してずっとやっていきたいと思っています」

取材をして感じたこと

外来種を取り除くことで、砂地の面積を維持できるだけでなく、絶滅危惧の植物を守ることもできるということですが、そうした環境保全活動が行われるのは年に数回。では、私たちがふだんできることとは...?。
名古屋工業大学の増田教授に聞いてみると、返ってきた答えは「みなさんの足でどんどん"踏み荒らして"ほしい!」というものでした。サッカーをしたり、かけっこをしたり...。人の足であえて"踏み荒らす"わけなので、多くの外来種は生きづらくなります。一方で、もともと厳しい環境を好む絶滅危惧種にとっては、生息しやすい環境になるのだそうです。みなさんも休日はぜひ、祖父江砂丘に遊びに行ってみてはいかがでしょうか。

筆者

山下理華 記者(NHK名古屋放送局)

令和3年入局
名古屋局で警察取材や行政取材を経験し、現在小牧支局で地域の取材に取り組む。