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"自分らしさ"どこにある? ~Z世代の診断ジレンマ~

ニュース特集

2022年7月29日

パーソナルカラー診断、骨格診断、顔タイプ診断。次々と現れる「診断コンテンツ」。
みなさん、聞いたことありますか?
「もちろん知っている」という人もいれば、
「ちょっと知らない...」という人もいるのではないでしょうか。
今、「Z世代」と言われる10代後半から20代前半の若者の間で、自分の顔や体の特徴などを把握する「診断」を通して、自分に似合うファッションやメイクを知り、"自分らしさ"を追求することが人気となっています。
しかしその裏で、「診断結果にしばられて、"自分らしさ"がわからなくなってしまった」などの悩みが、SNSを中心に広がりつつあります。
現場の声を取材すると、「Z世代」ならではの"診断ジレンマ"が見えてきました。

Z世代にもはや常識? 「診断」で"自分らしさ"を

名古屋・栄にある韓国コスメショップ。
お客さんの多くは、10代や20代の若者です。

彼女たちが自分に似合うコスメを探すために頼りにするのが、パーソナルカラー診断。
このお店では、専用の独自の機械をあてて肌の色を分析することで、パーソナルカラーを診断をします。

パーソナルカラー診断とは、生まれ持った肌の色や髪色、瞳の色などをもとに、個人に似合う色を導き出します。
イエローベース(通称"イエベ")と、ブルーベース(通称"ブルべ")の大きく2つに分かれ、さらに"イエベ春"・"イエベ秋"・"ブルべ夏"・"ブルべ冬"といったように4タイプに分かれます。
例えば、"ブルべ夏"の人は、『柔らかく涼しげな寒色が似合う』とわかり、それをお洋服選びやコスメ選びに役立てることができます。

この日初めてパーソナルカラー診断を受けたという女子高校生は、自己診断では"イエベ"だと思っていたそうですが、"ブルべ夏"という結果が出ました。

「イエベだと思っていたけど、ブルベ夏だったので、これからは買い物にブルベをとりいれていきたいと思いました」

こちらのアパレルショップでは、この春のリニューアルに合わせて、新たな診断コンテンツが導入されました。

写真を撮るだけで、AIがその人の顔の特徴を分析します。

その結果、パーソナルカラーだけでなく、7つに分類された顔タイプまで知ることができ、その人に似合う髪型やメイク、おすすめのアイテムまで提案してくれます。

診断コンテンツを体験した女性は、AIの分析の結果、ふだんから身に着けているアイテムなどがおすすめアイテムとして提案されていて、「完璧ですね!」と盛り上がり。
診断結果を受けて、さらにいろんな服にチャレンジしていきたいと話していました。

「色物とか挑戦しやすくなったかなって思いました」

おしゃれが楽しい! だけどほかの子を気にしすぎちゃう...ジレンマ抱える声

自分に似合う色や形を知って、自分らしいおしゃれを楽しむものとして、人気の診断コンテンツ。
しかし今、診断結果にとらわれて、「自分らしさを見失いそうになる」といった悩みも聞こえてくるようになりました。
もともと美容やおしゃれに関心が高かったという大学生の宮崎さんが、揺れる思いを話してくれました。

SNSをきっかけに診断に興味を持ち、今年6月、プロによる診断を受けた宮崎さん。

大学生・宮崎さん

「ツイッター、SNSで、『やったほうがいい』『自己投資』といった投稿がすごい流れてくる。いつかはやらなきゃいけないなーと思って」

大学に入り、友人たちがメイクやおしゃれに力が入りどんどんあか抜けていく姿を見ると、「自分も何かしなくては」と危機感を感じることもあったといいます。

大学生・宮崎さん

「SNSに力を入れている子がけっこう友達にいて、何千人ってフォロワーがいるんですけど、そういう子たちを見て、私もがんばらなきゃって、逆になんだろ奮い立たされるじゃないですけど、自分磨きが増えたと思います」

「診断」によって自分に似合う服やメイクを身にまとうことで「毎日が楽しい」という宮崎さんですが、一方で、SNSを通してキラキラしたインフルエンサーや自分より充実したおしゃれな人を見ると焦りを感じるといいます。

大学生・宮崎さん

「キラキラしているインフルエンサーの方を見ると、ちょっと憂うつというか嫉妬というか、比較しちゃってその子と自分を。早くかわいくならなきゃみたいな、強迫観念じゃないですけど、プレッシャーはありますね」

SNS上に広がる"診断ジレンマ"

実は今、宮崎さんと同じようなジレンマを抱える声が、SNS上に広がってきています。

「イエベ秋だし透明感とは無縁。ブルベになりたいつらい」

「学校女子達みんな骨格があーだパーソナルカラーがこうだでマウント合戦すんのなんなの!!うるさいよ!!」

そうしたなか、ツイッターで「パーソナルカラーだるいのわかる」とつぶやいていた学生が、取材に応じてくれました。

もともとおしゃれが好きだったという高校2年生のしいさん(仮名)です。
SNS上の投稿をきっかけに診断に興味を持ち、ネットで検索して、無料の自己診断を受けました。
いま、診断結果を気にしすぎて、日常生活でも悩むことが増えてしまったといいます。

女子高校生

「前は、可愛いなって思うのを買ってて、でも今は、これはパーソナルカラーにあってるか、骨格にあってるかっていうのを判断して買うようにしているので、考えることが増えたなあって...」

「友達とかと服の話とかになって、どういうのが似合うと思う?みたいな感じになったりするんですよ。そういう時に、なにか軽率に何が似合うみたいに言ったら、傷づけてしまいそうだなって。街中とか歩いていても、周りの人に似合ってないじゃんみたいな感じで思われたりしそうだなって。モヤモヤしています」

こちらは、愛知県の学校に通う19歳のリオさん(仮名)です。
もともと体型にコンプレックスを感じる部分があったというリオさん。
プロによる診断結果が大いに参考になったという一方で、とりわけSNS上に広がる『着痩せ』や『スタイル』を意識する社会の風潮にモヤモヤを感じるといいます。

19歳の学生

「SNSとかで細い方はいっぱいいらっしゃるので、そういうのを見ると自分も痩せようとか...やっぱり自信はそんなにつきづらいのかなと思います。(モデルも)もうちょっと親近感のある、普通の体型の方を採用していただけるとすごくありがたいなと思います」

Z世代の"診断ジレンマ" 根底にあるのは?

自分らしさを追求するためのツールが、自分らしさを狭めているとも言える状況。
若者の文化・メディア利用実態に詳しい明治大学商学部の藤田結子教授は、"診断ジレンマ"の根底には、Z世代特有の『リスク回避志向』といった価値観があるといいます。

明治大学商学部 藤田結子教授

「Z世代の若者たちからは、"就職しても会社が安定しているかわからない""終身雇用も崩れている""日本の経済の見通しも不安だ"といろいろな面で社会に不安があるという声を聞きます。そうしたなか、物心ついた時からSNSを使い多くの情報に囲まれているZ世代の若者は、確実に時間をかけずに自分に似合うものを見つけたいー失敗するリスクも回避したいーということで、診断結果に頼るというのがすごく合理的だと考えているんだと思います」

同世代として "Z世代の診断ジレンマ"を取材して

実は、ディレクターの私自身、ことし新社会人となった「Z世代」です。
話を伺った学生の皆さんと年が近く、おしゃれ好き同士だったこともあり、"診断で自分に似合うファッションやメイクがわかればわかる程、より失敗したくない""おしゃれを追求するがあまり診断にとらわれてしまう"など、取材を通して共感することが多くありました。
一方で、『ありのまま』や『自分らしく』が求められる現代でも『固定の美に対する理想』の押しつけと感じられるようなものがあったり、見た目に関する過剰な広告やマーケティングがSNS上で多く見えたりする現状もわかりました。『可愛くなりたい』『キレイになりたい』という若者の純粋な思いを利用しているともいえる社会が、必要以上に若者の美への意識を高めさせ、不安をあおっているという面も浮かび上がってきました。

明治大学の藤田教授は、このように指摘しています。

明治大学商学部 藤田結子教授

「今、若者が外見が良くなきゃいけない、周囲に外見で好感度を持たれなきゃいけないという強迫観念みたいなものを受けやすくなっています。SNS上での診断に関する投稿にこだわりすぎると、人と比べ続けたり悩み続けたりするので、『そこまで外見にこだわる必要がない』『情報の取捨選択をしながら、情報を過剰に信頼しないで、診断結果を楽しんで活用してほしい』ということを、メッセージを発信する側も受け取る側も考えていけるといいのではないかと思います」

記事を読んでいただいた人の中には、診断を受けたりSNSの投稿を見たりするのをやめたらいいのに...と思う方もいるかもしれません。私自身も取材をして改めて、Z世代特有の世界や価値観があるということを客観視できて、また「世代間の受け止めの違い」も知ることができました。お互いに理解できない悩みとするのではなく、社会に対して悩みを持つ人間同士として、それぞれの価値観を受け入れ、お互いに寄り添ったコミュニケーションができるといいなと改めて思いました。

筆者

菊地桃加 ディレクター(NHK名古屋放送局)

福島県福島市出身
大学時代 ミュージカルやオーケストラに打ち込む
今年6月 診断を受けたところ "イエベ春"