大河ドラマ「どうする家康」の世界観を体験できる大河ドラマ館が、徳川家康の生誕の地、愛知県岡崎市に1月にオープンしました。そのセレモニーに招かれた三河家臣団の筆頭家老・鳥居忠吉役のイッセー尾形さんがインタビューに答えてくれました。

撮影にあたってモデルにした人はいましたか?

鳥居忠吉さん語で岡崎の感想は?
イッセー尾形さん
「ひょの、岡崎はひょってもへいけつでひんがあるばひょ」
(殿、岡崎はとっても清潔で品のある場所)のような気がします
自然とともにあるという感じがしました。空襲があったらしいですけど、川とか地理とか、この大地自体は、それほど変化がないと思うんですよね。いくら震災があろうが、空襲があろうが、地面に足つけた生活ぶりが、脈々と今もあるんじゃないかという気がしました。忠吉とか、家臣団もそれぞれ個性豊かですが、それぞれ地に足がついてる、そういう人たちが延々とつながっている、いまでもつながっている気がしました。
忠吉を演じるにあたって心がけていることは?
イッセー尾形さん
爺さんの役で歯が抜けて、いま現在そんな人は、はじかれちゃう人、弱者というか、負け組というか、でも、家臣団に入って、筆頭家老という立場で、みんなから敬愛されている人物、現代とずいぶん違う、そこは見てもらいたい。家臣団、当時の組織は、そういう人たちも取り込んで、人にやさしく関係築いていたんだと思う。

家康にとって忠吉はどんな存在ですか?
イッセー尾形さん
うっとうしい存在だと思う、言うこと聞けやみたいな。なにかと違うことを言うオヤジだったり、頭が上がるような上がらないような人物。本当の実の親じゃないが、小さい時から一緒にいる爺さん、指南役でもあるし、うるさいご隠居でもあるし、そういう関係ですかね。それは、なかなか今は無い関係だけどそういうのが見えるといいですね。
三河家臣団の撮影中の雰囲気をどう感じていましたか?
イッセー尾形さん
ぼくはとにかく初対面だったので、それぞれ違う生き方をしている人たちが、重たい鎧で、この重さはみんな平等なんです。初対面で平等が混じっておもしろい空間でした。顔を見るだけで楽しかったです。あらかじめわかっていることをやっているわけでなく、どうなるんだろうということがわからずに、10人くらいが集まっているわけですから、期待感と不安感とそれぞれの楽しさ、人がいることによって、ないまぜになった面白い空間でしたね。
家臣団の中で誰が好きですか?
イッセー尾形さん
(大久保忠世役の)小手(伸也)さん好き。存在が、可愛くてロマンチストで。
撮影の裏話はありませんか?
イッセー尾形さん
台本に1回撃たれるって書いてあった。現場で2回撃たれましょうかって、胸と足と2か所撃たれたでしょ。だから死んでも不思議じゃない。(酒井忠次役の)大森南朋さんに足が打たれたらどうなるんですかってきいて演技指導してもらって、それやりました。足撃ったらこうなりますが、そのとおりやりましたよ。
今回はロケに行かなくてCGでやるでしょ。それが見応えがあってしばらく見とれていましたね。砦とか人がいる。兵隊が、あわただしく動いて、軍団が押し寄せてくるとか、それの精巧さに見とれていましたね。実際の放送で背景ができあがって、どう見えるだろうと楽しみでした。予想以上の迫力がありました。

鳥居忠吉役は、とくに最初のころはかなり目立つ印象的な役柄ですよね。
イッセー尾形さん
やってる側としては家臣団のひとりにすぎないように演じている。何言ってるかわかんなかったですね。オンエア見るとね。歯茎を入れるのは面白いなーと思った。入れ歯というよりは「入れ歯茎」ですよね。あれを2、3回サイズ直しました。鉄砲で撃たれて杖ついてとかあるんですけど、そういうのは素直に楽しい。何もしないよりは何かやった方が楽しいですから。
だからあんまり人物を深掘りしなくて、ただ歯茎と杖、それだけで喜んで、それで、筆頭家老という役ですから、みんな家臣団が耳を傾けてくれる、家康も耳を傾けてくれる。グループの中で尊敬される。この人が言うことは一理があるんだろうな、そんな存在感は悪くなかったですね。いじける必要もなく、言いたいことは言う、それは楽しかった。
(有村)架純さん、瀬名姫と結婚するので、家臣団にあいさつにくるんで、「わー天女のようだ」というセリフにあったんですけど、これはたちつてとで、「へんにょのようだ」と私がいったんですけど、ディレクターがここはなまらないで天女でお願いします。というので、天女さまでございます。はっきりいって、その声は使われていましたね。
しばらく、はひふへほ病になって、食い入るように、ここは忠吉だったら、はひふへほ っていうんじゃないか、そうやってしばらくは台本を読んでいました。
存在ぶりがガス抜きみたいなところあっていいんじゃないかと思いますけどね。どうすんだ、右だ左だとやり合うんですけど、まんなかがあるよというのが、忠吉のポジション。そういうガス抜きが忠吉のポジションのような気がしていました。

鳥居忠吉には、第3回の放送で、今川方から隠してためていた銭や武器を家康に紹介するシーンがありますよね。
イッセー尾形さん
戦国物っていうと戦うとか戦場とかそれが大きなイメージですが、それと真逆の倹約してためる。それは独特の見方、独特の人生を送った人、それがちょっとね、鳥居忠吉というのを好きになりましたね。鳥居忠吉は、男らしく戦うだけじゃなく、そのあと、後々を考える。現代にも通じるのでは、軍事家として、補給どうするかって今あるでしょ、それをどうやって持続させるか、それが戦いだと読んでいた。すごく知略があった人が忠吉だと思いました。
これからも忠吉は活躍しますか?
イッセー尾形さん
活躍しないと思います。こもりきりになって、ただ、自分はその場になったとき、体は動けなくなっても、口は動くと、動くけど何をいってるかわからない。二重苦三重苦のような立場ですけど、頭はしっかりしてますから、彼なりに家臣団たちといっしょに引っ張ってかなきゃいけないという使命もありますから筆頭のね。ただ何を言ってるかわからないおかしいですね。でも大きくいって、愛すべき人物だと思います。

主役・徳川家康を演じる松本潤さんについてどう思いますか?
イッセー尾形さん
松本潤さんは、非常に大きな仕事と接して、正直不安だったと思うんですね。どうやって、この1年をドラマとして成立させていくか。それが1か月ぶりに現場に行くことがあって、ひょう変ぶり、変わっているんですね。不安はどっかにいっちゃって、まとめるんだと。そのときに、家康とすこしダブりました。ここをなんとかしていくんだ。どうするんじゃばっかし言っていられない。どうする家康が、どうにかなる家康になっていくさまをみた気がします。
まだまだひよっこの家康でございますが、これから有名な武将たちと渡り合っていくこの1年間通じてどのように成長していくのか僕も楽しみです。忠吉役として、幼い家康を見守ってきた爺として、どうなっていくのか、本当に楽しみです。一緒に1年間よろしくお願いいたします。
物語は、東海から。
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【公式サイト】
イッセー尾形さん
台本自体に、「たちつてと」が「はひふへほ」になっている台本で、こんな人は架空だろうと素直に喜んで、「歯茎」をはめてやっていたんです。実在したっていうのはあとから聞いて、倹約家とか、年貢とか武器とか、ためてた人なんだとか、あとからだんだんわかってきました。でも自分がやり始めた人物とたいして差はないなと印象で、やってて正しかったと思いました。
岡崎は、台本には出てきたんですけど、じっさいはNHK名古屋放送局で撮影していたので、岡崎がどんな場所かわかんなかったんですよ。実際の場所を知らないで演じていたんですけど、岡崎に来てみて、やっぱり岡崎は忠吉にとって大事な場所だったのに違いないと感じました。大きな川があって、川沿いでロマンスもあったかも知れない。そんな想像をしましたね。やっている人物と一致しました。