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岐阜県立東濃高校の取り組み「日本語で考え 生きる力を」

ハロー!ネイバーズ

2022年6月9日

今年初めて、日本人の生徒より、外国につながる生徒が半数を超えたという東濃高校。
全国的には、日本語の授業についていけず、進学・就職で悩むケースが多く、外国ルーツの生徒の教育のあり方について対策が求められるなか、この高校には、生徒が楽しいと参加する日本語の授業があります。どんな秘密があるのか取材しました。

目次
日本語の授業で、思考力を養い生きる力を

「目先のゴールは高校の卒業。ですが僕たちが求めているのは、その先のゴール。
自分が将来仕事はどうするのか、社会で通用する人間になってほしい。」

こう語るのは、東濃高校校長の吉田益穗さん。
平成18年度に初めて3名の外国人生徒を受け入れてから16年。
以前から、教科の授業に先生を複数配置するなど、試行錯誤で外国につながる生徒をフォローしてきました。

【岐阜県立東濃高等学校 吉田益穗校長】

しかし、日本語が分からず教科の授業についていけない...
将来、自分が何をしたいのか分からないと悩む生徒も多いという状況が続きました。

そこで平成27年度からは、日本語の授業を導入。現在は、文法や漢字を教えるだけでなく、"日本語で考える力"を養う事に力を入れています。

母語と日本語で書く作文

そこで今年から日本語の授業で取り組んでいるのが、母語と日本語で書く作文です。

【同じテーマで書かれた母語と日本語の作文】

取材した時に、生徒が書いていたテーマは「高校生の意見として改善してほしいこと」
日本語では数行しか書けなくても、母語では、自分の思いを何枚も書いて表現する生徒もいたといいます。2言語で書く作文によって、日本語を教える先生も、生徒を多面的にみることの重要性を感じたといいます。

【来日して3年の森シャイラさん(1年生)】

1年生の森シャイラさんの場合も、日本語では学食や自動販売機がほしいというシンプルな内容。しかし、英語だと日本人と外国につながる生徒との交流のあり方について具体的な提言がなされ、思考力の深さが分かりました。

「こどもの頭の中を知るという事。
複数の言語でみることによって、子どもたち自身は何ができるのか、どんなことを得意としているのか、どんなことが表現できるのかという力をみる。」

【外国ルーツのこどもの教育に詳しい 東京外国語大学准教授 小島祥美さん】

東濃高校の日本語の授業のアドバイザーとなっている東京外国語大学准教授の小島祥美さんも、母語と日本語の作文によって、生徒本来の力を引き出す事が重要だといいます。

「日本語が出来ないから、学力が低いと見られてしまう部分が大きいが、そんなことはない。子どもたちはいっぱい考える力を持っている、経験を持っている
だからこそ、子どもたちが今まで歩んできたものに着眼し、その経験が活きる授業を高校で作れると思う。それが日本語の学習にもつながっていくし、しいては他の学習を理解していく力にもつながっていく。」

学習するテーマは、生徒がアイデアを出し決める

また授業で大切にしているのは、自分の考えを臆せず表現することです。

【1年生の日本語の授業の様子】

取材した時の授業のテーマは、「食べ物」。自分の好きな食べ物や、嫌いな食べ物など、自由に発言します。さらには、自分の国の郷土料理についてディスカッションしたり、それぞれの国の言葉で、味の表現を比較するといったことも...。
自分のルーツや言葉を交えて話す生徒たちの表現は、とても豊かで楽しい授業でした。

こうした学習のテーマは、生徒がアイデアを出して決めています。
そのなかには、「第三次世界大戦」と書いた生徒もいます。

【第三次世界大戦とアイデアを出した、池泉アレシャンドレ君(1年生)】

来日して3年の池泉アレシャンドレ君。
普段は、教科で使われる日本語が難しく、ついていくのに苦労していますが、アレシャンドレ君の書いた「第三次世界大戦」というアイデアに、先生も驚いたといいます。こうした生徒が学びたいというテーマを大切に、今後は、社会や歴史といった他の教科の理解にもつながっていけばと考えています。

【日本語を教えている和田さとみ先生】

「自分の考えとか、ルーツも含めて、
日本語で自己表現が出来るようになっていくと、進路にしても、授業にしても、すべてにつながってくるので、そういった事ができる生徒になってほしい。」

こう語ってくれたのは日本語を教えている和田さとみ先生。
生徒のモチベーションを高くしながら、日本語教育を進めていくにはどうしたらいいか、小島祥美准教授と、日本語の先生たちとチームを組み、生徒と、ワクワクしながら授業を作っている姿が印象的でした。

たくさんの日本語にふれる"多読カード"

書くことや、話すことで、考える力を養う工夫をしていましたが、その他にも、本をたくさん読むという取り組みも始めています。

【今年から導入した多読カード】

好きな本でも、マンガでも分からない所は飛ばしていいので、とにかくさまざまな日本語にふれるというもの。(母語の本も可)
多読カードには、読んだページ数や、読んだ時間まで記入し、生徒に達成感を感じてもらう仕組みにしているそうです。


筆者

NHK岐阜放送局
ディレクター 冨久尾 有里予

岐阜県出身 二児の母
趣味は、おいしいパン屋さん巡り


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