被爆から72年。長崎原爆に関するさまざまな知識・情報を夕方のニュース「イブニング長崎」で毎日、お伝えします。

長崎原爆ノート62 小説『祭りの場』小説『祭りの場』は、長崎市出身の作家、林京子さんが、爆心地から1.4キロの長崎市大橋町で被爆した実際の体験をもとに書いた作品です。小説では、主人公の「私」が学徒動員されていた兵器工場の建物内で被爆し、即死を免れながらも放射線障害とみられる症状で命を脅かされる様子が描かれます。また、原爆が投下された際、「私」がいた工場の広場で、出陣する仲間を送別する「祭り」をしていた学徒たちが無残に被爆死する光景も語られます。この作品で、林さんは昭和50年に群像新人賞と芥川賞を受賞し、芥川賞の選考委員を務めた作家の井上靖は「原爆を直接体験し、30年生きてきた人だけの持つ突き放し方、皮肉が文体を作っている」として高く評価しました。その後も原爆をテーマに精力的に創作活動を続けた林さんは、アメリカと旧ソビエトによる核兵器の配備合戦に抗議して昭和57年、作家などによる「核戦争の危機を訴える文学者の声明」にも署名、「被爆者の1人として涙がこぼれる思い」とするメッセージを添えました。
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