【2018年8月10日(金)放送 ゆる信ワイド! 信州!安心生活の心得より】


「夏山の注意点」


夏山シーズンです。今回は「山」専門の気象予報会社を茅野市で運営、世界中の山々の気象を予報している気象予報士の猪熊隆之(いのくま・たかゆき)さんに「夏山の注意点」を伺います。


Q:「山」専門の気象予報会社ということですが、普段はどんなことをしているのですか?


猪熊さん:三浦雄一郎(みうら・ゆういちろう)さんや竹内洋岳(たけうち・ひろたか)さんなど高峰の登頂に挑戦する登山家や、テレビ番組や映画の撮影に関わる方に気象情報を提供しています。

Q:猪熊さん自身も、昔エベレストなど世界の山々の登山に挑戦していたんですよね。そんな山を知り尽くしている猪熊さんからみた夏山の魅力は何でしょうか?


猪熊さん:青い空、白い入道雲、鮮やかな緑の草原と色とりどりの花、そして信州の山は雪も所々に残っています。そんな絶景の中でビールやコーヒーを飲むと最高です。夏山は本当に気持ち良いです。

Q:気象の面からみて夏山にはどんな特徴がありますか?


猪熊さん:太平洋高気圧が弱まると前線が日本付近に現れたり台風が接近したりして天気が大きく崩れることが多いです。また、天気が変わりやすく朝晴れていても、昼前になると霧や雲に覆われることが多いです。午後は入道雲が発達して雷を伴った激しい雨になるなど、天気の急変に注意が必要です。

Q:中でも“信州の山”にはどんな特徴がありますか?


猪熊さん:信州は、3,000m級の山岳が連なっています。そのため、アルプスの稜線では、暴風雨の中歩くと、夏でも低体温症の恐れがあります。また、信州では夏でも豊富な雪が残っています。雪渓では音もなく石が落ちてくるので、落石に注意が必要です。そして、雪渓上ではルートを見失いやすく、霧が深い時にはどこを歩いているかわからくなります。天気が悪い時には雪渓上のルートは避けた方が良いでしょう。

Q:身を守るためにはどんな準備が必要でしょうか?


猪熊さん:まず、登山前に天気図を確認してください。特に、前線が信州の真上、もしくは北側にあるときには落雷や大雨になりやすいので注意をしてください。沢や雪渓を通るコースはリスクが大きいのでやめる、もしくは登山自体をやめるという決断も必要です。

Q:登山中はどんなことに気を付けた方が良いでしょうか?


猪熊さん:朝から高気圧に覆われて晴れていても、モクモクとした入道雲が成長してきたら危険です。また、遠くで雷の音がしたり、急に風向きが変わったりしたときにも注意が必要です。

Q:その場合、どのような判断をすれば良いですか?


猪熊さん:リスクによって違いますが、落雷の危険がある場合、雷は尖ったものや高いところに落ちるので、高い木や尖った岩、塔の近くからはすぐに離れて、出来れば避難小屋や山小屋に避難してください。避難小屋や山小屋でも壁側は危険ですので、小屋の中央にいてください。

Q:「やめる」「避難する」「見送る」という判断も重要なんですね。


猪熊さん:登山の場合は無理をすると命の危険が伴うので、気象の変化に柔軟に対応することがとても大切になってきます。それから、一概に夏山と言っても気象条件は山やルート、その日の状況によって異なるので、自分が登る山にどういうリスクがあるのかを事前にしっかりと調べておくことが大切です。また、最近は多くの気象情報が入手出来ますが、信頼の出来る情報を利用するようにしてください。

猪熊さんは、登山向けの天気予報や、お天気講習会なども実施しています。

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