

ニュースの中に出てくる言葉をわかりやすく解説する「ニュースの?」のコーナーです。きょうは「離婚後300日問題と認知調停」についてお伝えします。

女性が離婚から300日以内に出産した場合、前の夫の子どもと推定するという民法の規定が原因で出生届けが受理されず、戸籍がない子どもと親たちが戸籍を得るために「認知調停」の申し立てを今月(2008年7月)1日から全国各地の家庭裁判所で始めました。

戸籍がない子どもの親でつくる「家族の会」によりますとあわせて25人について、今月上旬(2008年7月)に大阪や東京をはじめ15都道府県で認知調停を申し立てるということです。民法の規定によって無戸籍児、つまり日本に住んでいながら戸籍のない子どもたちがいるということ、そして、その子どもと親たちが戸籍を得るために申し立てた「認知調停」についてきょうはお伝えします。
なぜ、戸籍がない子どもたちがいるんですか?

はい。こちらの民法772条の2項をご覧ください。

婚姻の解消もしくは取消しの日から300日以内に生まれた子は婚姻中に懐胎したものと推定するとあります。
つまりこういうことです。ある夫婦の離婚届けが正式に提出されたあと、妻がその後再婚した夫との間の子どもを出産した場合、その子どもの生まれた日が離婚届けが提出された日から300日以内だと、その子どもは自動的に前の夫の子どもと判断するということなんです。
これが、いわゆる離婚後300日問題です。

300日というのは妊娠の期間を想定したものです。前の夫と離婚した後であっても子どもが生まれた日から300日前にはまだ、法律上は婚姻状態であれば、その子どもは前の夫の子どもと判断するということなんです。
これは、子どもの出生届けを出すときに、法律上、父親がいないということを避けるために設けられた規定なんです。

民法では昔から決められていたことなんですね。

そうですね。
ところが、最近は結婚しても比較的早い時期に離婚するケースが増え、それにつれてこの規定の矛盾点が指摘されるようになってきました。

離婚の場合、必ずしもすぐに離婚届けが提出出来るわけではありません。
むしろ、しばらく別居などの「事実上の離婚期間」を経て、正式に離婚届けを提出するというケースが多くなっています。
こうした「事実上の離婚期間」中に新しく夫となる男性の子どもを妊娠し、それが客観的に証明できたとしてもこの300日規定に該当することが多く子どもは法律上、自動的に前の夫の子どもになってしまうのです。
このため、母親は出生届けを出すことが出来ず、戸籍のない子どもたちが増えてしまっているわけです。正確な数はわかりませんが、こうした子どもたちは全国にかなりの数に上っているものと見られています。

どうすることも出来なかったのでしょうか。

そうですね。生まれた子どもを実の父親の戸籍に入れるためには前の夫に対して実の親子ではないと認めてもらう「親子関係不存在確認の調停」を起こすことができます。

この場合前の夫に調停の場に出てもらい、「自分の子ではない」と証言してもらう必要があるのですが、前の夫が非協力的であったり夫婦間の暴力が、原因で離婚した場合などは前の夫と会うことを嫌って申し立てを断念するケースが多かったのです。

なるほど、そういう状況は理解できますね。

そこで法務省は去年(2007年)5月、離婚後300日以内に生まれた子どもでも前の夫との離婚後に新しい夫との間に妊娠したと証明できる場合は新しい夫の子として出生届けを認めるという通達を出しました。

しかし、この通達は例えば早産で生まれてしまった子どもを救済しようというもので事実上の離婚期間中の妊娠のことまでは言及していないため、この問題の矛盾点を解決することにはなりませんでした。
このため最高裁判所は先月中旬(2008年6月)、これまであまり使われてこなかった「認知調停」という方法があることをインターネットのホームページ上で公開しました。

「認知調停」ですね。
これは、どういうものなですか

はい。「認知調停」とは、実の父親を相手に実の子どもだと認知を求める調停のことです。


別居など「事実上の離婚期間中」に生まれた子供について前の夫との子どもではないことが明らかな場合、法律上の正式な離婚の日から300日以内に生まれた子供でも事実上の離婚から300日以上経過していたことを証明する書類を提出するなど前の夫の子どもを妊娠する可能性がないことを証明して新しい夫の子どもと認めてもらいます。
この調停が成立すれば、子どもは新しい夫の実の子どもとして戸籍が受理されることになります。
この最高裁判所の通達を受け、冒頭にもお伝えしましたように、戸籍がない子どもと親たちが今月(2008年7月)1日から「認知調停」の申し立てを全国各地の家庭裁判所で始めたわけです。

これで多くの子どもたちが戸籍を得られるんでしょうか。

はい。確かに、多くのケースで調停が成立するのではないかと期待されています。しかし、最高裁判所の「認知調停」についての説明をご覧ください。

新しい父親の戸籍に入るためには「妻が夫の子どもを妊娠する可能性がないことが“客観的に明白である”」ことが証明できなければなりません。

しかし例えば、前の夫に住所を知られないように住民票を移さずに住居を転々とした場合などは別居期間が300日以上経過していることを証明する書類がないケースもあり“客観的に明白である”ことが証明できない場合もあります。
また、調停では別居を証明する書類があっても、それに加えて高額なDNA鑑定や、前の夫の証言を要求される可能性も否定できません。

それらは、調停にあたる各裁判官の裁量次第という面があるわけですね

そうですね。

このため「民法772条による無戸籍児家族の会」の井戸正枝(いど・まさえ)事務局長は、無戸籍の問題を解決するには、民法772条を改正し、離婚後300日以内の子どもであっても妻が夫の子と確認した場合は夫の子と推定する、もっとも事情を知る母親の確認を得た者を父親と推定するべきだと考えています。

これに対し、法務省は民法772条の制度は生まれたときに親子関係が確定する点からも合理的であり、改正の必要はないという立場を変えていません。
戸籍がなければ基本的な行政サービスが受けられず人権上、大きな問題が出てくることは避けられません。
今こそ抜本的な議論が求められていると思います。

きょうの「ニュースの?」は
「離婚後300日問題と認知調停」についてお伝えしました。