【2014年9月11日(木)放送 イブニング信州より】
地震などの大規模な災害が起きた際、命を守るために重要な避難や被害についての情報。
しかし、言葉の問題でこうした情報が届きにくい人たちもいます。県内におよそ3万人いる外国人たちです。
この「言葉の壁」を乗りこえて災害時に外国人を支援するための新たな取り組みが県内で始まりました。
2014年9月6日、上田市で開かれた研修会。
「東信地域、各地の震度は次の通り、震度5強・・・」。
災害が起きた時に、外国人に情報を伝える「通訳ボランティア」の養成訓練が行われました。
参加者の1人、タイ出身のワンナクルア・ナパーパンさん(45)です。
タイ語と日本語をある程度、話すことが出来ます。
ナパーパンさん:「避難所など、みなさんが困っていることもあるので。その中にタイ人もいて他の外国人もいるので、出来るだけ自分の力で助けてあげたいとなと思っていますので」。
平成23年の東日本大震災。
被害状況や避難場所についての情報を外国人がうまく入手できず、混乱するケースが少なくありませんでした。
幼い頃、母国のタイで洪水の被害に遭ったこともあるナパーパンさん。
震災以降、日本語が十分話せない友人から災害時にどう対応すればいいか、相談を受けることも多くなったといいます。
ナパーパンさんの友人:「ちょっとこわいね」。
ナパーパンさんの友人:「逃げる時はなにか、日本語だけ分からない。どんなどこに行くか分からないな」。
こうした不安の声を受け、長野県は平成26年3月、新たなガイドラインを作成しました。
災害が起きた際、自治体ごとに外国人を支援するための拠点を設置。
そこに、ボランティアを集めて情報を翻訳してもらい外国人に広く伝えることにしたのです。
長野県 白鳥 博昭 国際課長:
「災害の情報がわからないとか、避難所の情報がわからないとかっていう外国籍の方が大勢いらっしゃるので、やっぱり県として何かしなくちゃいけない」。
今回の研修会はこのガイドライン策定を受け初めて行われました。
重要な情報をすばやく翻訳するスキルを持った通訳ボランティアの育成が狙いです。
実際に新潟県中越地震や東日本大震災の被災地で外国人の支援にあたった専門家が講師を務めます。
長岡市国際交流センター 羽賀 友信 センター長:
「実際中越では(外国人は)16%の人しか避難所に入らなかった。どうしてって聞いたら、日本人だらけで恐かったと言った」。
研修会では、マグニチュード8の地震が発生し、外国人の支援拠点を設けたという想定で訓練を行いました。
拠点には避難所の場所や、物資がある場所の情報が次々と入ります。
ナパーパンさんたちは、こうした情報を、素早く外国語に翻訳しました。
しかし、情報の中には外国人にとって難しい言葉もあります。
羽賀センター長:「エコノミークラス症候群ってわかります?血栓ができる、中で血が固まる。その血が肺に入ったりすると障害が出る」。
命を守るための情報を自治体の職員などと連携し、丁寧に伝える必要があると呼びかけました。
ボランティアにはこうした情報を日本語が十分理解できない外国人に伝える役割が期待されています。
ナパーパンさん:「落ち着いて、あわてずに安心してさせてあげたいなと思っています」。
情報が届きにくく、災害弱者になりやすいといわれる外国人たち。
支援の輪を広げるための取り組みが続きます。
Q:災害が起きた際に外国人を支援していこうという今回の新たな取り組みですが、取材してみてどんな課題が見えてきたんでしょうか?
A:1つはVTRにもありましたが、外国人にとって難しい言葉をどうやって的確に翻訳していくかです。
災害の直後は自治体なども混乱しているケースが多く、必ずしも専門用語などをかみくだいた情報が得られるとは限りません。
こうした情報をわかりやすく翻訳するには、外国人の通訳ボランティアと自治体などの担当者との連携が欠かせないと感じました。
Q:取り組みは始まったばかりだと思うんですが、実際に災害が起きた際、十分な態勢がとれているのでしょうか。
A:まだ十分とは言えないと思います。これまでに通訳ボランティアへの登録を済ませた人は150人あまりです。
しかし長野県では大規模な災害が起きた際には最低でもこの倍は必要だとしています。
さらに、まだ翻訳できる言語も限られていて、ベトナム語やインドネシア語などは翻訳できるボランティアの登録がないということです。
このため県は、こういった外国人むけの「緊急カード」の作成も進めています。
名前や緊急連絡先、また持病などの項目があり、あらかじめ記入しておけば災害時に言葉が通じなくても道案内ができますし、医療関係者も処置がしやすくなります。
このカード、現在はタイ語だけですが、年内には他の言語でも作られるということです。
ただ、こうした取り組みはまだ始まったばかりです。
この先、いつ起こるかわからない災害に備えて取り組みをスピードアップさせていく必要があると思います。