積乱雲による災害への備え

【2013年6月6日(木)放送 イブニング信州 防災インタビューより】

梅雨の時期、心配されるのが局地的な大雨や雷。大きな被害をもたらす原因は夏の入道雲・積乱雲が引き起こしています。この積乱雲による災害について長野地方気象台の予報官の方に話を聞きました。

信州で増える積乱雲の発生

Q: 入道雲を見ると夏が来たという感覚になります。入道雲=積乱雲の発生につながる要因にどんな事があげられるのでしょうか?

A: 3つの要因があります。

(1)強い日差しによって気温が上がること。
(2)上空に寒気が入ってくること。
(3)寒冷前線が通過する。
夏の場合はほとんどが(1)と(2)。大気が不安定な状況が生まれ積乱雲を生む。 雲の高さは1万メートルを超える場合も。そして横への広がりは数キロから10数キロに広がることもあります。

Q: 信州において特徴的なことは?

A: 周囲を山に囲まれていること。これは湿った空気が山を昇り、上昇気流を発生させやすい。上昇気流が雲を発達させるので、積乱雲ができやすい地形とも言える。空気は1000mの上昇で6度下がる。

積乱雲による局地的大雨災害

積乱雲がもたらす災害は大きく3つ。局地的な大雨竜巻。2012年7月の長野市での豪雨も積乱雲がもたらした。
長野市の3時間降水量73.0ミリ
7月20日から21日にかけて本州付近は南から暖かく湿った空気が流れ込み、大気の状態が不安定となった。長野市の3時間降水量73.0ミリ(7月20日19時)は、観測史上1位の値を更新した。局地的に激しい雨が降った影響で、床上、床下浸水等による被害が発生した。長野県では、河川の増水、氾濫などの被害が発生し、長野市で床上14棟、床下浸水126棟となった。また、茅野市でも11棟の床下浸水の被害が発生した。

積乱雲による雷・ひょう災害

Q: 積乱雲での雷などによる被害は?

A: 雷での死亡事故は山岳やゴルフ場など開けた場所で起こることが多い。昭和42年に北アルプス西穂高岳で高校生11人が亡くなる事故もあった。
農作物への被害
平野部ではひょうを伴うこともある。先月も大町市で局地的にひょうが降り、農作物への被害がもたらされた。ひょうが降る範囲は数km以内がほとんどです。

Q: ひょうが降りやすい地域は?

A: (1)上田、佐久、東御市、などの千曲川流域。(2)裾花川流域。(3)松本盆地及び諏訪盆地。(4)天竜川流域の順。
県内のひょう災害
特に5月から8月にかけてが多くなるので注意が必要です。

積乱雲による竜巻被害

Q: 長野県での竜巻被害は?

A: 統計を取り始めた昭和36年以降では3回確認されています。平成12年7月4日には佐久市鳴瀬で発生した。およそ40世帯の住宅で屋根瓦が飛ばされたり小屋が壊れたりする甚大な被害が起きました。

空の変化を読む

Q: 積乱雲に対して注意するポイントは?

積乱雲の近づく兆し
A: 空の変化に敏感になることが肝要。具体的には…真っ黒い雲が近づき、周囲が暗くなる。雷鳴や雷光がある。ヒヤッとした冷たい風が吹く。大粒の雨やひょうが降り出す。

情報をこまめに集め早めの行動

Q: わたしたちが具体的にどんな行動をとることが肝心でしょうか?

A: まずは、天気予報や気象情報のチェック。「所により雷」、「大気の状態が不安定」などがキーワードとなります。これらのキーワードが入っていた場合には、気に留めてください。
気象庁ナウキャスト
次に情報収集。空の変化を読むだけでなくテレビラジオの気象情報を確認すること。外出先などでは携帯電話でも気象庁が発表するナウキャストの情報が見られるので確認をしてほしい。そして、空を見上げると黒い雲が近づく・川では水かさが増えてきたなど異変があった場合運動場などの開けた場所、川の中州・アンダーパスなどは危険です。すぐに避難することが肝心。特にレジャーで河原でのバーベキューなどの際、上流で雨が降っている時は躊躇せず逃げる勇気が必要です。また竜巻が近づいた場合には頑丈な建物の中に逃げることを忘れずに。