

飛べ 72歳のホームラン!・満山一朗さん

突然ですが、バッティングセンターにもホ
ームランがあるのをご存知ですか。お店に
よって異なりますが、ネットにある的に打
球が当たればホームランと認定されるんで
す。そのホームランを通算2550本以上
打った男がいるって言ったら、あなた信じ
ますか。その男は毎日のようにバッティン
グセンターに現れて、地元ではちょっとし
た有名人。
手にはイボイボ軍手、履いているのは革靴。
その正体は!? あの、失礼ですがおいくつですか。
「72歳。あ、今日誕生日だわ。バースデーアーチ打たないかんわ」
マシンから放たれる球速は120km/h。ボックスに立つと、怖いほど。
「ホームラン!」出ました、スコアボード直撃のホームラン。
「ちょー絶好調じゃん」
でもってこの人、狭いバッティングセンターにはもう飽きたと、今回新しい目標に
チャレンジするんです。
「王さんの偉大な868(通算本塁打記録)にちなんで、86.8mという飛距離に
ね、本当の球場で挑戦します」
4番 ホームラン熱中人 満山一朗、飛べ 72歳のホームラン!

ここは鹿児島。地下から巨大なエネルギー
が、今日ももくもく。
「野球選手に見てもらうと、70ぐらいだ
なあと言われる。ここ(バッティングセン
ター)で常に80mぐらいを打っとかないと
いかん」
満山さんが普段通っているバッティングセ
ンターでは、ホームランの推定飛距離は
40m余り。
86.8mというとその倍以上。やはりハンパではない。
ボールをミートするのがうまい満山さん。バッティングセンターでは、タイミング
さえ合えば量産できたホームランですが…。
今のスイングのままじゃ、内野の頭を越すのが精いっぱいと見た。

実は満山さん、野球をしたことがない。
61歳の時、糖尿病のおそれがあると言わ
れて、バッティングセンターに通い出した
のが始まり。
それから11年、今では家のあちらこちら
がバッティング仕様になっている。お手本
のスイングをしているのは、ミスタージャ
イアンツでしょうか。でも長嶋さんは一本
足ではなかったような…。かと言って、王
さんは左打ちですよね。 「こっちから見れば左でしょ?左利きの写真を、裏から光を当てて右バッターにす
る。ちょうど私のバッティングと対比できるわけです。下半身はまったく別だけ
ど、バットの軌道は王さんが私の打撃の基本なんです」

王貞治をマネして素振りの毎日。
5回、10回。
気合いが入ってるとは言え、10回振ると
息切れ。やっぱり年ですかね。
と思いきや、これはなんですか?
バットの先に何か付いていますよ。
実は自分で作った特訓バット。1kgのバットにさらに600gのおもりを付けて、
合わせて1.6kg。
この力こぶ、ほとんどが60歳からついたと言っても過言ではない。

若い時から、野球どころか運動らしいこと
は何一つやってこなかった満山さん。最初
はバットにかすりもしなかった。でもある
日、バッティングセンターでたまたま出た
ホームランに気をよくして夢中になった。
スポーツとは無縁だと思っていた自分の体
の中に、ミート力という天性の才能が眠っ
ていた。通算2550本。満山の前に満山
なく、満山の後に満山なし。
お金もずいぶんかかりました。
もう十分じゃないかと言う人もいるけれど、本人はまだまだ楽しみたいのだ。
「山登りの人と一緒じゃないかな。高い山があれば、1つ山登ったらまた次の山が
見えるって言ってる。だから飛距離というのは、最後の大きな山でしょうな。とて
つもない大きな山、これは」
満山さんの今の飛距離は40m余り。いかに特訓しようとも、倍以上飛ばすのは
普通ムリですよね。「(素振りをしながら)遅いなあ」
でもあきらめない。少しでも前に進めばそれでいいのだ。
あさって、本物の球場でホームランに挑戦する。

翌日、満山さんは専門家に教えを請いまし
た。生田兆治さんは、社会人野球の現役選
手。こういう力強い打球はどうやったら生
み出せるんですかね。
「あたる瞬間に腰を少しでも入れると。
やっぱ打球は腰ですよね」(生田さん)
「俺一番足らんよな、それな」
「そこ(腰)があれば打球は飛ぶと思いま
す」(生田さん)
腰を入れて打つ。新たな目標を得た、満山一朗72歳である。
ついにその日がやってきました。
ここは以前から満山さんの練習に協力してくれていた大学のグラウンド。両翼92
メートル。前田先生は満山さんが大好き。これまで何度かバッティングを指導して
きました。
まず作るのは、86.8mのライン。これをノーバウンドで超えれば目標達成で
す。設定した球速は120km/h。さらに前田先生は、最先端のハイスピードカメラ
まで用意しました。球数は100球。満山さん本人の指定です。

「はい行きます」
4番、熱中人満山。さあ、注目の第一球です。ピッチャー振りかぶって投げました。
「オーケー、ナイススイング」(前田さん)
まだタイミングが合わないか。
おっと、これは行ったか、センター前。落
下した場所に目印のボールを置きます。ま
たいいあたり。内野の頭を越えて行く。
タイミングは合ってきたぞ!「よし」
しかし、飛距離は40メートルほど。まだ腰の入りが浅いか。
腕の力だけではボールは遠くに飛ばない。さあ、ここでタイムです。
バッティングのフォームをスーパースローでチェックするようです。
「たたんで、もっと脇をしめる感じで。脇をしめていけば、いいボール行くと思
う」(前田さん)
さあ、プレイ再開です。「よし、このタイミングだな」
ここでリプレイ。今の打席をスロー再生します。前田先生のアドバイス通り脇をし
めた結果、腰の入りが深くなり身体に軸が生まれています。72歳でこの吸収力。
すごいぞ、満山!
「いいのが出たでしょ。だんだんわかってきた。いけるかも」

さあ、まだまだ中盤戦です。と、ここで満山、バットを代えるようです。情報により
ますと、こちらのバット、あの松井秀喜選
手のものより500gも重い、1400g
だということです。バットの重みで一層の
飛距離アップを狙っていく。
「ナイスバッティング!いい!今のは脇が
しまってましたよ。しめていきましょう」
(前田さん)
「しかし、今日一番飛んだな」
さあ、どれほど飛んだのか!?
「57.9mです」(係員)
「まだまだ、あと20伸ばさないかんな」
「大丈夫、大丈夫」(前田さん)
本日この時点で、普段より15m以上も飛距離がアップしています。
さあ、残すところ10球。
「一朗さん、がんばって」(前田さん)

「残り3球です」(投手)
少し疲れが出たか、フォームが乱れてい
る。
「思い切っていきましょう」(前田さん)
「ラストやな」
最後の1球です。
「よし!」(前田さん)
これはどうだ!?
目指すは、夢の86.8m。
「51.5mです」(係員)
「ようやく1本、真にあたったがな。だが距離はいかんかったな」
満山、残念! しかし、悔いはない!
「ありがとうございました」
「またがんばっていきましょう」(前田さん)
(ホームランとは?)
「まぁ最大の生き甲斐でしょうな。何事にも代えがたい生き甲斐でしょう」
満山は今日も振る。いつか必ず…!

