時代遅れがイイ味だしてる
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時代遅れがイイ味だしてる・松崎順一さん


ラジカセ修理はライフワーク


高速道路を西に向かうおじ様一人。
なんか大事な用事があるみたい。東京から
車で4時間。目的地は電気屋さんなんだっ
て。
「置いてないです。」(お店の人)
「やっぱり。ありがとうございました。」
東京より浜松にありそうなもの?
一体何を探しているのか?

「古い70年代とか80年代くらいの真四角の、ああいうのってもうあれですか?
…あっ!こんなのありました?」
これ、ラジカセ?ラジオとカセットがくっついていて、テープに音楽とかを録音す
るヤツ!全盛期は1970年代から80年代。松崎順一さんは、ラジカセ熱中人。
古いラジカセを見つけてきては、新品同様に修理するのが生きがいです。
「ライフワークとして、生涯自分の命続く限り、全国各地をまわって探したい。」


ラジカセ浴?


東京足立区。小さな商店街の一角に、松崎
さんのラジカセ基地があります。
お邪魔しまーす!やっぱりラジカセだら
け。全て松崎さんが探し出して修理したも
の。ここだけでざっと1000台あるんだ
って!他にも2000台くらい別の倉庫に
あるというから、バカですねぇ…。
あ、もとい、スゴイいですねぇ。

「森林浴とか、木に囲まれてると非常に気持ちよくなるじゃないですか。僕は機械
に囲まれて機械浴?ラジカセ浴っていうか、そこが非常に和むとこなんです。」
松崎さんのラジカセ再生術。まずは1台ずつリストを作ります。汚れ具合や壊れて
いるところも、しっかりチェックします。続いては写真撮影。これでコイツも松崎
一家の一員です。こうやってきっちりデータベースを作ると、修理のポイントや必
要な部品がすぐわかります。お医者さんのカルテみたいなものですね。


修理はまずラジオから


では実際に1台、修理をお目にかけましょ
う!これは1974年の登場以来、70万
台以上を売り上げ、日本のラジカセのスタ
ンダードとなった名作。
「ラジオがまず聞こえるかどうか。なんか
ちょっとうなってますよね。」
使われなくなって30年は経ってます。
まずはお掃除!

ホコリを落とすだけで、ラジオの部分は結構直っちゃうことが多いんだって。
次は、洗浄剤でスイッチなど可動部・接触部を徹底的にクリーニング!
ひたすらカチャカチャしていると…。
「結構もどってきましたね。感度も結構いいですね。」


部品は中国に発注


お次はカセット部分。ラジカセの部品のう
ち一番消耗するのは、テープを安定して送
るためのピンチローラー。これは新しいの
に変えなきゃダメです。
「これで大体1000個のロット(最小製
造数)なんですね。」
って…なんで1000個も買っちゃうの?


「結局中国の工場も1個や2個だと作ってくれないんですね。」
中国の工場?何の話です?
「日本のメーカーでも、もうこの部品が無くてですね。しかたないので中国で作っ
てもらってるんですね。僕自身が発注をして作ってもらってるんですよ。」
個人的な趣味のために、中国の工場に部品を発注する松崎さん。
なんかカッコイイ!


またラジカセ探しへ


ラジカセの要、ピンチローラーを交換。
そして可動部をていねいにクリーニング。
「もう30年間誰も手を入れてないところ
ですから、時間かけてクリーニングしてあ
げるといいんですよね。」
ラジカセ修理のほとんどは、クリーニング
の時間といっても過言ではありません。


深夜までクリーニングを続け、この日の修理は終了。続きは明日のお楽しみ。
近くの自宅に帰ります。翌日は、またラジカセ探しに出かけました。
「軍手を。結構汚れるんですよ。」
結構汚れる場所って…なんじゃこりゃ!松崎さん、電気屋さん巡りだけでは飽き足
らず、廃品回収のヤードまで訪ねて、ラジカセを発掘しています。
ここは、週に3回パトロールしているお気に入りの場所。


真四角がたまらない!


「ボロボロの状態ですね。古くなったラジ
カセって、意外とこういうところに来ちゃ
ってるものが多いんですね。」
21世紀の今、昔の家電品はこういうヤー
ドから、海外に輸出されています。

「この真四角、本当にこの真四角っていう
とこがね、非常にたまりませんね。
この角度、ここで頭打ったら痛いだろうな
という、80年代っていう感じの時代が出ていて。」
思い起こせばラジカセの時代、日本も元気でした。この頃、東京原宿では竹の子族
が大ブレーク!踊りの中心にラジカセがありました。ほんでもって松崎さんは元々
プロの商業デザイナー。ナウでヤングでちょっとテクノでした。
30歳で結婚。仕事に家庭に充実した生活を送っていましたが…。


デザインの魅力


「約10年前に脱サラをしまして、今はラ
ジカセ一本。」
普通の人は、22年務めた会社を辞めたり
しません。務めを辞めてまでハマってしま
ったラジカセの魅力。それは、今の時代に
はないデザインの魅力でした。



「まずこの真ん中を見ていただくと、テレビが埋め込んであるんですよね。
本当に丸と四角と直線で構成してあって。これは通信機とかいろんなものを意識し
てスライドレバーになってまして、メーターなんかも潜望鏡みたいにスライドし
て…。もう40年近く経ってるんですけど、今見ても新鮮に見えるんですよね。」
ラジカセのデザインを語らせると、止まらなくなっちゃう松崎さん。
2年前には本まで出しちゃいました。タイトルはズバリ『ラジカセのデザイ
ン!』。自ら修理したラジカセを総動員して、魅力を力説しています。


はかなさも魅力


Wカセット、トリプルカセット、カンガル
ータイプのカセット分離型ラジカセに、巨
大な集音マイク付き。挙句の果てのレコー
ドプレーヤー付き…。
そして、極めつけの一発。
ちょっとこれ、アンタ!?幅60センチ、
重さ10キロ!多機能・ハイパワーを追求
して、ラジカセはとめどなく巨大化。
80年代半ばにピークに達します。
そして、そこから急速に衰退しました。
「恐竜が栄えて、ピークを迎えて突然滅びる。そういう歴史、はかなさが僕の中で
は非常に魅力を感じるんですね。」
さあ、ラジカセ修理!いよいよ仕上げです。
前の晩に中身のクリーニングを終えた松崎さん。今日は外側のクリーニング。
「ゴミがつまりやすい溝なんかを、ていねいに汚れを落としていくんですね。」


良い趣味だと思います!


30年分のアカを落とすと…、あらー!ず
いぶんすっきりしましたよ。ひと風呂浴び
た70年代の名機。
では、30年ぶりに1曲鳴らしてみましょ
う!もちろん曲目にもこだわりがありま
す。30年前のラジカセには、30年前の
歌謡曲。違いのわかる男の、なんとかブレ
ンド。

「これでAKBとかSMAP聞いてもちがうんですよね。やっぱり当時の音楽を聴
くと、ドンピシャいいですね!あれだけボロボロだったものがまた人の手によって
よみがえるのって、けっこう劇的な部分がありますよね。もう本当にゴミになる寸
前のところが、またこうやってよみがえるので。すごい良い趣味だなって自分でも
思っちゃいますよね、自分で言って何なんですが。」
時代遅れがイイ味だしてる松崎さん。かなりナウい人です。
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プロフィール
時代遅れが
イイ味だしてる
松崎順一さん
松崎順一さん
51歳。
古いラジカセを見つけてきて修理す
るのが生きがい。修理したラジカセ
は3000台以上。