「おしん」が伝えたかったもの

2021年10月4日

今年4月に亡くなった脚本家・橋田寿賀子さん。その貴重な手書きの台本の数々を初めて展示する企画展“追悼・橋田壽賀子~「おしん」に託したメッセージ”が開催されています。今回は橋田文化財団のご厚意で橋田さんのご自宅に保管されてきたNHKで放送されたドラマの台本112冊を寄贈していただいたことを受けて、そのすべてを初めて公開しています。

多くの名作ドラマの中でも1983年4月から放送され、最高視聴率62.9%を記録した連続テレビ小説「おしん」は橋田さんのある思いが特にこめられた作品でした。それはご自身の体験から生まれた強い反戦のメッセージです。生前、橋田さんは「おしん」を単に一人の女性が苦難を乗り越えて自立していく物語とだけでとらえられることに違和感を持っていたといいます。橋田さんは戦争の中で学生時代を生きてきた自らの経験から、「庶民の戦争責任」について考えていました。「おしん」には一般庶民が戦争に協力していかざるをえなかった時代の恐ろしさを伝えたいという橋田さんの強いメッセージが込められています。

ドラマの中でおしんは戦後、日本が軍国主義から民主的な社会に変わっていく中で「なぜ自分は戦争に反対だとはっきりいわなかったのか。」と戦争に巻き込まれた自分の生きざまを振り返ります。橋田さんは、戦争を憎むと同時に結果的に戦争に加担してしまった庶民のむなしい感情を「おしんの言葉」に託しています。 戦争の時代を軍国少女として生きてきた橋田さんが現代に生きる人たちへ残したメッセージを、橋田さんの肉筆の台本を通じて感じていただければと思います。

なお、「おしん」はNHKオンデマンド(有料サービス)で全話配信しています。
詳しい情報はNHKオンデマンドのホームページをご覧ください。
(最後はCMになってしまいました。。)

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