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企画展示情報

2020年

“おうちで見る宇宙展”
NHK放送博物館企画展示「放送が伝えた宇宙」みどころダイジェスト

NHK放送博物館企画「放送が伝えた宇宙」展は、会期途中から臨時休館となり、そのまま会期末を迎えました。ご来館予定や展示替えを楽しみにされていた皆さま、ご不便をおかけし申し訳ございません。

このため本展の特設ページを公開し、会場風景やお見せできなかった資料のご紹介など、展覧会をご自宅でも楽しんでいただけるようにしました。ぜひご覧ください。

(本ページ掲載写真1〜4,9〜13,15〜17は鶴田孝介氏撮影)

本展の概要は展示紹介ページで、各テーマの内容は「文研ブログ」で紹介しています。ブログでは展示替え前の会場写真が見られます。

@ まず、入口からご案内します。

写真1 企画展示室入口

NHK放送博物館の3階には、常設展示「ヒストリーゾーン」とは別に企画展示室があります。入口までの通路には、本展のテーマの一つである「アポロ計画」のポスターと、1964年にアポロ11号の宇宙飛行士が成し遂げた人類初の月面着陸の足跡が、皆さまを出迎えました。

A 展示室に入ると、本展は大きく前半(奥)と後半(手前)、そして映像ブース(奥左)に分かれます

写真2 企画展示全景
写真3 企画展示前半
写真4 企画展示後半

展示前半(左)は、NHKなどがラジオ放送開始(1925年)からアメリカのアポロ計画終了(1972年)までの天体現象や宇宙開発をどのように伝えたのか、当時の文献資料・音声・映像を中心に紹介しました。

後半は、NHKが衛星放送の実現や宇宙開発に果たした役割を紹介しました。前半とは雰囲気がかわり、機器や模型といった立体物が目立ちました。

B 展示構成

  1. テレビ放送開始までの天文現象の放送
  2. 宇宙への進出とテレビ放送
  3. NHKが関わった宇宙開発技術
  4. 映像ブース「宇宙から ウェイクアップコール」2011年放送

1.テレビ放送開始までの天文現象の放送

1925年に日本でラジオ放送が始まると、天文現象の放送も行われました。例えば天文台から「中秋の名月」の観測と講演の中継があり、1936年に北海道で皆既日食が見られた時は、愛宕山の東京中央放送局(現在のNHK放送博物館)をはじめ全国の27局で日食のリレー中継を行った記録が残っています。

戦時中から戦後にかけては、映画館でニュース映画「日本ニュース」が上映されました。ここでは台湾での皆既日食や北海道での金環食など、天文現象の観測の様子が科学技術の成果として紹介されました。

1936年6月19日 皆既日食リレー中継の様子
写真5 東京中央放送局屋上からの中継の様子
中村アナウンサーによる実況放送
写真6 旭川放送局での中継の様子

2.宇宙への進出とテレビ放送

アメリカとソ連(当時)を中心に各国が宇宙に進出し、その様子がテレビで流れると、視聴者の宇宙への関心も高まっていきました。

1961年にソ連のガガーリン宇宙飛行士が、人類初の宇宙飛行という偉業を成し遂げました。翌1962年に来日すると、NHKは「ガガーリン少佐にきく」を放送しました。またNHKの特別報道班が海外の宇宙開発を取材し、1966年に「海外取材番組<宇宙時代>」(全9回)を放送しました。展示では、番組の一部や放送資料をお見せしました。

写真7 「ガガーリン少佐にきく」
写真8 「海外取材番粗<宇宙時代>」
スミソニアン博物館(アメリカ・ワシントン市)

その後アメリカは月への進出を目指すようになり、「マーキュリー計画」「ジェミニ計画」そして「アポロ計画」へと進めていきます。

アポロ11号が1969年7月に月面着陸に挑むことになると、NHKは10日間にわたり特集番組を放送しました。アームストロング船長が人類初の月面着陸をした時間帯は、およそ6割の世帯がテレビをつけていました(関東地区)。このときの放送計画冊子、スタッフ用の宇宙用語集、放送後の関係者対談、宇宙飛行士来日の様子などの資料を展示しましたが、入念な準備と放送にかける情熱が伝わってきます。

また、国立科学博物館からは、1960年代にアポロ計画を紹介した展示や、月の石を展示した当時の貴重な資料をお借りしました。なかには50年ぶりにお見せできたものもあります。

写真9
【展示資料から(写真9のうちB〜Dは国立科学博物館所蔵)】
  1. 日本橋島屋開催「宇宙船 フレンドシップ7 日本公開」パンフレット、ソノシート付(1962年7月26日〜29日) 「マーキュリー計画」のうち、1962 年2月20日に打ち上げた宇宙船フレンドシップ7号は、帰還後に世界巡回展を行った
  2. NASAが北海道フェアに宇宙服を貸し出す際の条件を記した文書(1968年) アームストロング船長が「ジェミニ計画」で着た宇宙服を貸し出すための条件が記載されている。スミソニアン博物館がこの宇宙服に評価額が2万ドル(当時の日本円で720万円)をつけた
  3. 国立科学博物館「月の石 特別展」関連資料(1969年11月25日〜12月7日) アポロ11号が持ち帰った「月の石」と、この石の東京大学での研究成果などを展示した
  4. 国立科学博物館「日本に贈られた 月の石 特別展示」展示カード、招待券(1970年) アポロ11号が持ち帰った月の石は、1970年4月にアメリカのニクソン大統領から日本の佐藤首相に贈られた。同年、日本万国博覧会(大阪万博)の日本館で公開したのち、国立科学博物館での恒久的な保管が決まった
写真10
【展示資料から(写真10:全て国立科学博物館所蔵)】
  1. 人類の月面初着陸用に着る宇宙服(写真)と宇宙服の構造図(1969年)
  2. 月から地球へ帰還する司令船の構造図(1969年)
  3. NASAが発表した、アポロ11号の飛行計画変更についてのプレスリリース(1969年6月13日) 当初の計画から2つのミッションが追加された
  4. アポロ11号の宇宙飛行士3人が来日
    羽田空港でのスピーチ・銀座でのパレード(1969年11月4日)/佐藤栄作首相から文化勲章授与 (1969年11月5日)
  5. 「NASA FACTS」NASA発行(1968年)
    NASAの宇宙開発を教育機関向けに作成・配布した冊子。人工衛星「バイオサテライト」・アポロ計画・NASA各研究施設の紹介など、テーマごとに解説している

3.NHKが関わった宇宙開発技術

まずは衛星放送の開発史を紹介しました。日本で人工衛星が作られ始めた頃は、NHKも独自に放送衛星を開発していました。この国産初の実験衛星A型およびB型は、同じ階の「ヒストリーゾーン」で常設展示をしています。人工衛星本体を製作しなくなってからも衛星放送の研究と実験を続け、1984年に衛星放送を家庭で直接受信できるようになりました。

写真11

写真11 手前から、実験放送衛星「BSE(ゆり1号)」(1/10模型)(1987年)/月周回衛星「かぐや」搭載 ハイビジョンシステム(テスト機) (2007年)/「きぼう」日本実験棟(1/50模型)(JAXA所蔵)/国際宇宙ステーション(ISS)(1/100模型) JAXA所蔵

写真12

写真12 実験放送衛星「BSE(ゆり1号)」(1/10模型)(1978年)と「グラフNHK 1978年8月号」

この号の「グラフNHK」に、放送衛星「BSE(ゆり1号)」と気仙沼の受信アンテナについてのコラムがあります。ここに記載している“NHK サービスセンターが模型を日本博物館協会経由で全国の科学館に寄贈した”模型を展示しました。

続いて、NHKのカメラが宇宙でも活躍していることを紹介しました。

2007年9月にH-II Aロケットで打ち上げられた月周回衛星「かぐや(SELENE)」は、アポロ計画以来の大規模な月探査として注目されました。かぐやにはNHKが開発したハイビジョンシステムを搭載し、月面から昇る「地球の出」のハイビジョン撮影に世界で初めて成功しました。

当館では、このハイビジョンシステムのテスト機を所蔵しています。打ち上げ後に故障が起こらないように振動や熱などさまざまな実験が行われました。実験によって破損する部品もありました。

写真13 かぐや搭載 ハイビジョンシステム(テスト機) 2007年
写真14 「かぐや」ハイビジョンカメラで2時間おきに撮影した地球 ©JAXA/NHK

続いて、2011年9月18日、NHKの生中継番組「宇宙の渚」で、国際宇宙ステーション(ISS) の「きぼう」日本実験棟から古川聡宇宙飛行士が撮影した地球の様子が、世界で初めて放送されました。この時に使ったカメラは、NHKが新たに開発した「宇宙用超高感度カメラ(EM:CCD)」です。これまでリアルタイムでは宇宙飛行士しか見られなかった宇宙からの夜の地球の絶景「オーロラ」「流星」「夜景」、そして初めて「スプライト(宇宙への放電閃光)」が撮影されました。

このカメラは宇宙での役目を終え地球に戻ったあと、今度は深海仕様に改良され、ダイオウイカの撮影で活躍しました。

展示では、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)から、宇宙で撮影した写真や人工衛星などの模型をお借りしました。ここでは、会期中にお見せできなかった国際宇宙ステーション(ISS)と「きぼう」日本実験棟の模型をご覧ください。

写真15 国際宇宙ステーション(ISS)(1/100模型)
写真16 「きぼう」日本実験棟(1/50模型)
写真17 ISS(1/100)模型の「きぼう」ドッキング部分(拡大)
土井隆雄宇宙飛行士が国際宇宙ステーションと「きぼう」のドッキングをした時の映像は、映像ブース「宇宙からウェイクアップコール」で上映しました。

4.映像ブース BSプレミアム放送「宇宙からウェイクアップコール」(2011年)から

スペースシャトルなどの宇宙の1日は、ヒューストン管制センターから送られてくるウェイクアップコールで始まります。管制官が ’'This is Huston, good morning’'と呼びかけ、2分あまりの<目覚めの曲>を流します。はじめは宇宙での孤独を和らげるのが目的でした。曲は宇宙飛行士からのリクエストもあれば、家族や友人、地上スタッフからのプレゼントもあります。

この番組は、宇宙飛行士がスペースシャトルや国際宇宙ステーションに滞在している様子を、選ばれた曲とともに放送した5分番組です。展示では、日本の曲から3本を紹介しました。

■上映番組
  1. 2011年4月19日放送「銀河鉄道999」
  2. 2011年5月5日放送「ゴジラのテーマ」
  3. 2011年5月16日放送「栄冠は君に輝く」

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