おばんですいわて

【今回は“ミニチュア写真作家”田中達也さんに聞きました】

「田中達也さん」

“ぽんぽんぽん ぽんぽんぽん〜”と桑田佳祐さんの歌声が記憶に残っているのが、連続テレビ小説「ひよっこ」のオープニングですが、テーマ音楽だけでなく、そのかわいらしい映像も注目されました。日常の一コマを小さな人形や雑貨を組み合わせて表現する「ミニチュア・アート」です。その作品展が9月2日まで盛岡市内で開かれました。
作品を手がけたのは、ミニチュア写真作家の田中達也さんです。
伊藤歌純キャスターがその世界観をたっぷり聞きました。
作品とともに、ユニークで詩的なタイトルもお楽しみ下さい。

「ストロー画」

【“自分を曲げずにまっすぐ伸びよ”】

女性の人形を取り囲む竹。実は緑色のストローです。ストローの姿が竹の節にも見えて、立派な竹林に変わりました。

【“ミニチュアライフ”】

「ブロッコリー画」 「発見の楽しみ」

木に見立てたブロッコリーは森のようです。その間を縫うように人形が歩いています。
田中さんの作品の中には、ブロッコリーが多く使われていると感じますがなぜですか?

−僕はよく、どういう仕事をしてるんですかって聞かれることがあるんですが、説明するときに「ブロッコリーは例えば木に見えますよね.みたいな話で、それを木に見立ててミニチュアと絡めて写真を撮ってるんです」と言葉で説明すると、みんな共感してもらえるんです。「ああ、確かに見えるよね!」というようなことを言われるんで、そこからブロッコリーを使い始めました。
最初にインスタグラムの中で「見立て」って言うのを具体的に使ったのが、このブロッコリーの木だったって言うのもありました。それで、「いいね」がすごいたくさんあがって、「ああ、こういう見立てって言う表現はみんな好きなんだなっ」てね。
始めたきっかけでもあるので、このミニチュアライフという企画の象徴として、ブロッコリーを位置づけています。

「クモワッサン画」

【“クモワッサン”】

こちらはクロワッサンが空を飛ぶ雲に。まさに「クモワッサン」ですね。
このように、田中さんのオススメは、雑貨や食材が何に見立てられているのか、発見の喜びを感じることだといいます。
さまざまな日常の風景を、ストーリー性豊かに切り取ることができます。

【“新パン線”】

「新パン線」 「おわん」

コッペパンを新幹線に見立てた、「新パン線」は田中さんのお気に入りです。
おもちゃの車両に乗せられたパンがレールの上を走ります。
そして、周りの風景に注目すると、たくさんのおわんが山の情景を表現。
そこには、盛岡での展示会ならではの「見立て」がありました。
“新パン線”は全国各地でもご当地のスタイルで走っているそうです。

−盛岡ということで、わんこそばをイメージしておわんをたくさん置いてみました。わんこそばで山ができると面白いなっと思ってですね。あと、箸で橋を見立ててみました。新パン線ていう作品自体が、地方ごとに場所ごとでいろんなアレンジを加えてて、毎回たとえば京都だと、奥に五重塔をつくったりだとか、長崎だとカステラを置いたりとか、そういうアレンジを加えてるので、盛岡も盛岡らしく、なんかしたいなというので今回わんこそばを、おわんを入れさせてもらいました。

「“帰り道(宮沢賢治ver.)」

【“帰り道(宮沢賢治ver.)】

こちらは、岩手が輩出した国民的童話作家・宮沢賢治の“帰り道”です。
田んぼに見立てた畳にたたずむ宮沢賢治は、童話の世界観に浸っているようですね。
この作品には奥さんも裏方として関わっていました。

−“帰り道”という作品で、親子が田んぼのあぜ道を帰っているという設定なんですが、宮沢賢治さんといえば、このシルエットで田んぼに立ってるってイメージがなんかあったので、今回の作品にしてみました。
僕の妻が宮沢賢治さんのファンで、盛岡に一人旅に来たこともありました。盛岡って聞いたときに、あっそういえば宮沢賢治だなとか思って、で妻に話して、色々相談したら私が人形作りたいって言うので今回の人形を作ってもらったりもしました。

【宮沢賢治は見立ての究極です】

「宮沢賢治」 「田中達也さんと伊藤キャスター」

作品に使う人形は市販のものだということですが、そのまま使うのではなく、色をつけるなどして手を加え、オリジナリティーを出しています。宮沢賢治は、奥さんのアレンジだったということですね。この作品にはさらに思い入れがあるそうです。

−見立てというのは、子どものときの遊びから来てると思うんですよね。子どものとき、あぜ道、というか、この畳のヘリにミニカーを走らせたりして遊んでいましたよね。
僕の息子もミニカーを走らせて遊んでたりするんで、誰に教えられたわけじゃなくても、畳のヘリが道みたいに見えてくるもんだなって。
それがよりいっそう、もっと表現が広がっていって、今みたいに、ミニチュアライフっていう世界があるので。まさに原点ですよね

【ミニチュアライフは発見の連続】

作品を見てる中で子どもも大人も、「あ、これこういうことか!」と発見したときは、楽しいですよね。

−考え方は、簡単に言うとみんなが見慣れてるものが、みんなが見慣れた違うものに見えてくるって言うことなので、あれに似てるとかですね、それに近いですかね。簡単に言えば物まねみたいな感じで、ブロッコリーを木に似せる、似せて撮るみたいな感じなので。そういった感じですかね。考え方としては、大前提として必ずみんながわかるものを使ったりとか、だから食べ物が多かったりするんですけど、その見立てる先に関しても、必ずみんなが分かる事柄にするって言うことですかね。

「トウモロコシ」

【皆さんも見えてきませんか? ミニチュアライフ】

今までブロッコリーはブロッコリーでしかなかったんですけど、それが確かに木に見えてきます。

−次から木にしか見えなくなりますよ(笑)。楽しんで。そして今後また料理を食べるときや料理をするときにブロッコリーを見てちょっと楽しんでもらえたらなって感じですね。カットされたトマトとかあったら船っぽいなとか思いますよね。そういうところがより具体的に作品として形にするとこういう世界観になるのかなと思いますね。
こういう感覚は、日本人だけのものじゃないと思うんです。アイデアや発想は、どの国でも理解してもらえるので、いろんな国をほんとに回っていきたいと思ってますね。

台中の一か所で展示会を開き、上海でも開かれます。いずれヨーロッパにもと思います。
アイデアに対しては、みんな結構わかってくれます。日本らしいアイデアも違いはないですけど、ただ、ダジャレのタイトルが伝えられないのが難しいですね。そういった意味でその面白さを海外にいかに伝えるかっていうのが今後の課題ですかね。(笑)

【ミニチュア作品を大きな世界に】

「田中達也さん」 「デカブロッコリー」

小さな作品で大きな飛躍! 新たなアートのジャンルとして期待が膨らみます。


−これからの展望としては、人が入ってミニチュアみたいな気分を味わえるのをもっと拡張していって、「大きいテーマパーク」じゃないですけど、そういう大きい作品、森だと思ったら実は上から見たらブロッコリーの中にいたとか、なんかそういうのが面白いなと思って、それはいずれやりたいなと考えています。

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