インタビュー

マーサ役

渡辺えりさん

マーサは心から人を愛することのできる苦労人

脚本を書いている大森寿美男さんが、うちの元劇団員だったので、出演のお話をいただいたときは、「お!ついに頼まれたか」って、すごくうれしく思いました。その後大森君とは、「あんなにダメ出ししたのに、こんなにいい役をありがとう」みたいな話をしましたね(笑)。

マーサについては、とにかく見返りを求めない愛情、母性を台本の中から感じました。自分の衣装店を大きくしてきた過程で、いろんな人に助けてもらったから、それを“大きな宇宙の恩”みたいなものとして返そうとしていて、バルサとアスラの“孤独な魂”をなんとか癒したいと思っているんですよね。…そんなふうに、心から人を愛することのできる、苦労人だなと思いました。

実はうちの母親が、自分を犠牲にしてまで、子どもや弱い立場の人たちを愛そうとしてきた人間だったので、マーサは母を念頭に置いて演じたつもりなんです。振り返れば、私も母親から本当に愛されていたんだなって。それが芝居とかで大変なときに支えになったんですよね。皆生きることは大変ですが、誰か一人でも自分を許してくれる人がいると、ずいぶん違うと思うんです。ですからマーサも“そこに戻ればあの人がいる”と誰もが感じられる、象徴的な人物に見えればと思っています。

アドリブで自由に…!?「あまちゃん」を思い出しました

台本を読むとマーサの衣装店のシーンではセリフの前後の情景描写が多く、わりと長いのですが、撮影では監督に「そこは、アドリブで自由にやってください」と言われちゃって……朝ドラ「あまちゃん」の撮影を思い出しましたね(笑)。

ただ、今回は周りがエキストラの方だけで、アドリブで話しかけられる、役名のついた相手がいなかったんですよ。「あら、これはちょっと大変だな」って思ったのですが、その場その場でエキストラの方に「あなたはミーヤね」「カイヤね」なんて名前を決めて、マーサがお店の子たちに指示をしたりするアドリブを入れました。そうやってつくっていくのは楽しかったですね。

一方で、台本のト書きには、“品のよい初老の女性が登場”と書いてあって、言葉遣いも丁寧ですし、「〜してちょうだい」とか「〜だわよ」というセリフがあって。ふだんしゃべっている言葉とは違いますし、私は山形出身ですから、周りにそういう言葉を遣う人はいませんでしたしね。それを自然に出せるようにするのは苦労しました。

戦争の理不尽さや人間の業が色濃く出ているドラマ

息子・トウノ役の岩崎(う大)さんとは、最初は「どういう人なんだろう」ってお互いに探っていたんですけど、お話をしてみたらおもしろい方でしたね。私、岩崎さんがコントをやっているのも知らなくて、「今度インターネットで見てください」と言われて、「コント。漫才じゃないんですね。じゃあコント55号みたいなほうですか?」と聞いたら「……まあ(苦笑)…」とかって言ってましたよ。

衣装店の織り子は皆美人なんですよ。美人が身近に大勢いるのに、トウノは全く目を向けずに、バルサ一筋なんですよね。こっちの人たちの誰かと結婚すればいいのに(笑)。なんか一生独身を通しそうですよ、今の感じは。不器用な息子ですけれども、幸せになってほしいですね。

私、ファンタジーはとても好きなんです。日常の四畳半的なドラマも、もちろん好きなのですが、ファンタジーはそこではできないような、ダイナミックなテーマを追求できますからね。「精霊の守り人」は戦争の理不尽さや人間の業みたいなものが色濃く出てくる、壮大で社会風刺の強い作品だと思います。そしてテレビドラマでここまであらゆるものを細部にわたってできることはなかなかないので、私もすごく楽しみですし、たくさんの方に見ていただきたいですね。