インタビュー

ヨーサム役

橋本さとしさん

自分が憧れる人を演じるのはとても楽しい

王様を演じたことって今までそんなにはないんですよ。それに…なんていうか、僕、ふだん腰が低くてペコペコしているほうなんで、王様気質じゃ全然なくて(笑)。気がちっちゃいから舞台に出るときも毎回のように緊張しますしね。自分の弱さが自分でも分かるから、ヨーサムと自分って全然違うな〜って思うんです。ヨーサムみたいになりたい!という憧れがすごくありますね。

役者の始まりっていうのは、“◯◯ごっこ”だと僕思うんです。チャンバラだったり仮面ライダーごっこだったり。強いヒーローに憧れて、そのヒーローになりきって。その“◯◯ごっこ”が大きくなってもできるという、役者というのはちょっとした夢のある仕事だと思っているんです。だから、自分が憧れるものを演じるというのはとても楽しいし、そのほうが演じがいがあります。僕にとっては、自分に近い役をやるよりも演じやすいですね。

大地に根を張った大木のような、そんな王でありたい

ヨーサムを演じるうえでは、その国の大地のような、絶対的な強さが必要だと思っています。そして、強いだけでは人はついてこないから、人を引き付ける魅力もある。現実の世界でもクーデターがあるように、ドラマの中の世界にも権力欲というものがありますが、そういう欲にかられた人間たちをものともせず、なぎ倒されないよう大地にしっかり根を張った大木のような、そんな存在でいたいと思いますね。僕自身は弱くて小さなオトコですが、体はデカいので、そのデカさを武器にしてヨーサムの揺るがぬ信念というものを体現できればな、と。

…ただ、その大木のような彼もやっぱり病には勝てない…ファンタジーなんだから、永久に生きられる薬とか出てきてくれればいいのに! なので、あまりエネルギッシュでもダメだから、大きな存在が少しずつ枯れゆく姿というものも見せたいと思い、体重を今のところ11キロくらい落としました。限られた寿命の中でどれだけ精一杯生きていけるか、自分がこの世からいなくなったあとに何を残していけるか…きっとヨーサムのいちばんの苦悩であろう、そんな部分を表現できたらと思います。

ディーンさんと僕、いい兄弟像を描けています

僕の弟のイーハンを演じるディーンさんは、ふだんの会話でも演技中でも、目からとっても美しい光線を発する人です。これは人を引き付けるな〜と思いますよね。最初に会ったときにまず言われたのが「橋本さん大きいですね! それだけ大きいと、海外で背の高い人たちと並んでも全然遜色ないし…ふつうに肩を並べられますよね」って。そんなこと言われたのは初めて。すごく視野が広くて、ディーンさんと一緒に演技したり会話したりしていると、広い世界に一緒につれていってくれるんじゃかなという気がします。そんなディーンさんの人格と、僕という人格が役にうまくリンクして、いい兄弟像を描けていっているような気がします。

あと、今回共演して印象的だったのが、チャグム役の板垣くん。まだ10代で、すごく若い役者さんです。この間リハーサルで初めて絡んだのですが、監督からいろいろアドバイスやリクエストを受けて、スポンジが水分を吸収していくようにグングン目の前で変わっていくんですよ。その彼を見て、僕も「あ、だったら王としてはこういう動きのほうがいいな」と思ったりして。僕は僕なりにキャリアを積んできましたが、まだまだ人から影響を受ける役者だなと思いました。彼の視線…本当にまっすぐなんですよ、見つめられたらこっちが照れるくらいです(笑)。

テンションを上げてくれるセット、ヒントを与えてくれる衣裳

セットや衣裳も、まちがいなくこのドラマの見どころのひとつでしょう。僕は舞台育ちで、以前いた「劇団☆新感線」はセットと照明にすごくこだわる劇団で、セットには本当に妥協しなかったんですよね。今回そのこだわりを、映像の世界で久しぶりに体感している感じです。しかも映像は舞台よりもはっきりと見えるので、質感など隅から隅までディテールにこだわってて、とてもリアルです。そんなセットですから、足を踏み入れた瞬間に気持ちがガンッ!と上がります。

また、人物デザイン監修の柘植さんがつくりだす人物像というのも緻密ですよね。「橋本さんは大きいから…白い衣裳で、より王の存在感を出そう」というふうに、僕という体を使っていろいろ遊んでくれるんです。テンションを上げてくれるセット、ヒントを与えてくれる衣裳や装飾。僕ひとりがヨーサムをつくるのではなく、関わるすべての人たちがつくり上げるヨーサム像に僕も載せていただいてるという感じがすごくします。ほかの現場では感じられない意気込み、それぞれの仕事に対するプロフェッショナルな意識というのが伝わってくる、すごく気持ちがいい現場です。

まさかこんなすごいプロジェクトに参加できるなんて! どこもやっていないようなファンタジーというものを映像化し、それをドラマにするというのは、すごいチャレンジだと思うんです。その新しいものを生む気合いというか、エネルギーが充満しているところに、自分もまたひとつの色として加われるというのは役者冥利につきます。なかなかないですよね、そこまで思わせてくれる作品というのは。