宮崎県議会議員 給料はいくら?仕事の内容は?
- 2023年04月05日
「意外と身近じゃない気がするんだよね」
ある日、上司から私(記者・県政担当3年目)に突然投げかけられた言葉です。
・仕事の内容がわからない。
・1日をどう過ごしているか分からない。
・お給料をいくらもらっているのか分からない。
案外、知られていないことの多い私の取材先。
ときに”センセイ”と呼ばれたりもします。
一体、どんな人たちなのか。”今更聞けない”あれやこれ。
この機会にまとめてみました。
いつも何しよっちゃろ?(仕事の内容は?)
『飲みにもいけんわ…』
取材である人は、私にこう漏らしました。どれほど多忙なのでしょうか。
この職業というのは県議。まさに今、選挙戦となっている県議会議員です。そんな県議の仕事を詳しく見ていきます。
まずはふだんの仕事。それは「県のお金の使い道を決める」ことです。お金の使い道を決めるのですからまず、県側は「これにこれだけ使います」と案(予算案といいます)を出します。
この予算案を議会でチェックするのが県議の1番大きな仕事。
宮崎県議会は2・6・9・11月と年間4回の決まった議会が開かれています。この中では予算案のほかにも条例の制定など、私たちの生活にも関わってくる大事なことを決めていきます。
このほか、必要がある場合に開かれるのが「臨時議会」です。(令和4年度には2回)
“職場”への“出勤”は54日
この議会などの期間は全部であわせて104日。このうち、出席しなければならない「本会議」や「委員会」(教育や福祉など分野ごとの個別のプロジェクトチームのようなもの)があったのは54日間でした。
つまり【令和4年度の県議会議員の“職場”への“出勤”は54日】だったということになります。
「あれ、意外と仕事少なくない?」と思った方もいるのではないでしょうか。ただ、仕事はこの“出勤日”しかないわけではないんです。
あまりなじみのない専門的なことばが多い県議の仕事。一般の企業に置き換えてみます。
仕事① 情報・資料集め
議会では、議員から県の考えやお金の使い方などに対して「質問」が行われます。これはその場で思いついたことを聞くのではありません。
議員は入念な準備をして臨みます。この準備というのは「県民(特に地元住民)の声を聞く」ことです。例えば「道路に危ない場所がある」、「生活保護者の実態を聞きにいく」など。地元・地域の声を自分自身で聞いてまわります。いうなら“情報・資料集め”の仕事です。
時には”飛び込み営業”のような場合もあります。
仕事② 打ち合わせ・資料作成・プレゼン
そして集めた声をまとめて、議会で県側に投げかけ、考えや今後の方針、スケジュールなどの「答弁(質問に関する回答)」を引き出します。ここでのやりとりは、単なる質疑応答ではなく県の政策についての話し合いの場です。
議員にとって議会は1つの“晴れ舞台”。真剣勝負の場なのです。
おかしいと思えば「そんな答弁(回答)でいいのか」と県を問いただすこともあります。大事なのは、単に地元の話に終始するのではなく、県全体の政策に結びつけていくこと。この点が市町村議会議員との違いです。
この「質問」。持ち時間が1人1時間と決まっています。このため、無駄な時間を生まないようにと議員たちは、議会が始まる3週間ほど前から自分の執務室(県庁の議会棟に議員ごとにあります)にこもって県側と打ち合わせを続けます。
長い日には午前中から夜遅くまで原稿を書いたりして、質問をつくりあげることも。
午後9時ごろ、私が執務室を訪れたときには出前のそばと大量の資料が机に広がっているのを見たこともあります。
1時間。長いように感じるかもしれませんが、やりとりによっては制限時間を超えてしまうこともあるんです。時間が足りず、用意していた質問を泣く泣く打ち切った議員の姿を見たこともあります。
このため、時間内にすべて質問しようと自分が書いた質問文を読む練習を繰り返すなんて涙ぐましい努力をしている議員も多いんです。
“大事なプレゼンテーションの練習”と同じです。
仕事③ 出張
このほかにあるのが“出張”。条例の制定や特別委員会の「現地調査」といって、県内外の進んだ取り組みを実際に見て意見交換をして取り入れられるものがないか視察を行うことです。
もちろん、“出張”後には報告書も提出します。
“出勤日”は限られていますが、このように“資料作成”、“プレゼン”、“出張”などのほか、休日の地域のイベントなどへの出席など「仕事とプライベートの境界線」が分かりづらい仕事です。
1日のスケジュールはどうなっちょる?(県議の1日は?)
『遊んじょるわけじゃないとよ』
県議に1日のスケジュールを取材したときに言われた言葉です。なかなか、何をしているのか見えないのが県議。「”職場”で居眠り」をしている姿を思い起こす方もいるのではないでしょうか?
だからこそ「毎日遊んでいるのでは?」と私が思っていると感じたのかも知れません。以下が、ある県議の1日のスケジュール。
〈議会がない日〉
05:00 起床、新聞チェック
06:00 家の仕事
07:00 地元の行事に出席
08:30 さらに別行事へ出席
10:00 葬儀に参列(地元の知り合い・意外と多いのが冠婚葬祭関係の行事)
11:00 団体との打ち合わせ
12:00 企業への要望
13:00 イベントに出席
14:00 再び別イベント出席
16:00 地元団体の集まりに参加
21:00 打ち合わせ
23:00 就寝
〈議会がある日〉
05:00 起床、新聞チェック
06:00 家の仕事、要望箇所の確認
09:00 県議会に“出勤”そのあと県議会で打ち合わせ
10:00 議会
12:00 昼食・会議、要望聞き取り
13:00 議会
16:00 団体との打ち合わせ
18:00 地元の集まりに参加
20:30 関係者との会合
23:00 就寝
さらに移動の際も連絡を取りながらということも多くあり、意外と?忙しそうな日々。
『ちょっと電話が…』
私が取材しているときにも、ひっきりなしに電話がかかってきて、ほとんど話せないこともあります。
時間の許すかぎり、とにかく多くの人と会う。顔を合わせて話をする。ある意味、とてもアナログな活動が仕事の基本です。
給料いいってほんとね?(高収入ってほんと?)
そんな県議がお給料をどれくらいもらっているのか。皆さん気になりませんか?(私は気になりました)県議の給料は条例で定められています。
まずは月の給与
議長… 98万円
副議長… 89万円
議員… 78万円
次に民間企業のボーナスにあたる期末手当です。これは6月と12月の2回の合計です。
議長 …388万 800円
副議長 …352万4400円
議員 …308万8800円
これらをあわせて年間の収入にすると。
議長 …1564万 800円
副議長 …1420万4400円
議員 …1244万8800円
このほか、視察や相談会の開催など議員としての活動に使える「政務活動費」が1人に毎月20万円支給されます。
県議の収入でみると九州では1位は福岡、2位は長崎と佐賀、そして宮崎は鹿児島・熊本・大分とならんで4番目。
県知事も県議も同じように選挙で選ばれますが、知事には退職金があり、県議には退職金がありません。落選した場合、一気に「収入ゼロ」になります。
『落選したら無職やじ…』
選挙を控えたある県議のことばが、忘れられません。
県議って何人おると?(県議の数は?)
宮崎県議会の定員は39(任期4年)ですが、ほかの選挙に出るために辞めた県議もいるので統一地方選挙前は37人でした。
(年代)
40代 3人
50代 10人
60代 10人
70代 14人
(性別)
男性 34人
女性 3人
任期中に2人の女性議員が辞めたとはいえ、女性議員が圧倒的に少ない状況でした。確かに研究者らが調べた「都道府県版 ジェンダーギャップ指数」で「政治分野」で宮崎県は全国最下位。県議会での女性議員の少なさも影響しています。
さらに30代の県議もいませんでした。若い世代も少ない状況です。
河野知事と仲良しやと?(知事との関係は?)
最後に気になるのが、知事との関係。
県議の大きな仕事は県側をチェックすることです。知事が進めていこうとする政策、それに必要なお金(予算)などについては議会の決定に従って進めていきます。
だからこそ、その関係は「車の両輪」にも例えられるほど対等です。2022年12月の知事選挙では、それまでの県政に不満を感じている県民が一定数いることも明らかになりました。
どちらも県民の代表ですが、お互いに緊張関係を保つことが、よりよい宮崎の将来を描くことにつながります。決して、県議と県(知事たち)は、仲良しグループという訳ではありません。ときに対立をしながら、これからの宮崎のあるべき姿・理想像を考え続け、議論をしているのです。
(2023年3月末の取材をもとに記事を構成しています)