議場に議員が誰もいない議会…
そんな未来を目指し、議会のオンライン化に全国に先駆けて取り組む地方議会がある。
茨城県の取手市議会だ。
その裏には、「議会愛」で議員とともに改革を進める、ある事務局職員の姿があった。


「オンライン議会の実現を」

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去年10月、取手市議会でオンラインの模擬本会議が開かれた。
議場には議員は誰一人いない。自宅などからテレビ会議システムを使って参加した。

議会のオンライン化について、国は、いまのところ、本会議の前段階となる「委員会」に限って容認。本会議のオンライン化は、地方自治法の解釈を理由に、認めていない。

このため取手市議会は、国に法律の改正を要望しているほか、特別委員会を立ち上げてオンラインで開催する上での課題を検討するなど、実現に向けた取り組みを全国に先駆けて行っている。

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議会のオンライン化の取り組みを裏方として支えてきたのが、取手市議会事務局の職員、岩﨑弘宜さんだ。

公務員人生30年のうち、これまで議会事務局の担当は、実に26年。
そんな岩﨑さんが活性化のカギになるとにらんでいるのが、オンライン議会だ。
そのねらいについて、こう話す。

「日本は政治への無関心層が比較的多いと言われている」

「妊娠、出産、介護、育児、看護、もしくは、議員みずからの疾病などで議場に来ることができないようなときに、オンラインで出席できるなら、議員を目指そうというような人が増えるのではないか」

小さな町で学んだこと

岩﨑さんは、高校を卒業後、合併前の旧・藤代町役場に入庁。
小さな町の議会の自由闊達な空気の中で、議会を住民に近づける大切さを学んだ。

藤代町議会は平成16年、質疑の内容をその日のうちにメールで配信する、当時としては先進的な取り組みを実施。途中で席を離れた議員の名前も遠慮なく記入し、離席する議員を減らすことにつながった。

合併後、取手市職員となった岩﨑さんは、市議会の改革を加速させていく。

“議会愛”

そんな岩﨑さんのモットーは“議会愛”だという。
「愛は、見返りを求めないとか、押しつけないとか、そういったものがあると思う」

「議会の中に市民がいる、市民のなかに議会がある。議会は住民。自分たちの議会を愛せない人は住民を愛せないということ」

「議員と職員の関係性は平等」という姿勢で、物怖じせずに、議員と真剣に向き合う。

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岩﨑さんの率直な姿勢は、議員たちからも信頼を得ている。
議員歴30年以上のベテラン市議はこう述べる。

「一生懸命勉強している。議員がだめなときははっきりだめだと言ってくれる。議員も間違えることはあるので、はっきり言ってもらわないと、かえって、こっちのためにならない。そういう面で私は非常に信頼している。私が議員でいるうちは絶対手放したくない」

自治体を越え活動

岩﨑さんの活動は、ほかの自治体からも注目を受ける。

茨城県の阿見町議会は、今年度、岩﨑さんを「議会改革アドバイザー」に委嘱。
平日の夜間や週末に、議員や事務局職員に向けた研修を行っている。
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11月上旬には、滋賀県の大津市議会の関係者が取手市議会を訪問。本会議のオンライン開催を実現するため、今後、共同で国に意見書を提出していくことを決めた。

「全国の議会に愛を」

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議会を市民に身近なものにしたいと、さまざまな改革を進めてきた取手市議会。
岩﨑さんは、より住民に貢献できる議会づくりを進めていきたいと考えている。

「全国の議会が愛に包まれる、そして、いろんな人がいろんな発言ができるような議会が全国的に広がることを実現できるように進めていきたい」

岩﨑さんが議員と一緒に取り組む改革に、今後も注目していきたい。


取材:浦林李紗 記者

 

 

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