「首都圏の台所」とも言われる茨城県。
県内の農業従事者のおよそ7割が65歳以上と、農家の高齢化や担い手不足が課題となってきました。
こうした中、自動運転ロボットが農家の負担を減らせるかもしれない。
自動運転のベンチャー企業が実現に向け、開発に取り組んでいます。(放送日:2021年4月15日)


【自動運転ロボットを農業分野に】

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令和3年4月に茨城県筑西市で行われた実証実験。
田畑が広がる農村地帯を自動運転ロボットが時速3キロで走行します。

この技術を手がけているのは、都内で乗用車の自動運転の実証実験などを行ってきた日本有数の自動運転のベンチャー企業です。

今回、自動運転の技術を農業分野でも応用できないかと、大手商社などと共同で実証実験を行いました。

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「農家の方はやはり人手不足や担い手不足。地方の配送や輸送をより効率的に、より簡便にできるようにしていくことが求められているのではないか」(TierⅣ事業本部 竹内慎吾さん)


【農作物の直売所では】

今回の実証実験の狙いは、高齢化が進む農家の重い負担を解消することです。

筑西市にある道の駅の農作物の直売所には、毎朝午前7時から新鮮な野菜や果物を納入する農家が次々と訪れます。
いま、直売所には農家みずから車を運転して農作物を運び込んでいます。
車で往復1時間かかる人もいるほか、欠品が出そうになると、1日に何度も補充に訪れることもあるといいます。

さらに複数の直売所に納入している人も。
農作業に追われながらのこの納入の作業が、農家にとって負担になってきました。

そこで、行われたのが今回の実証実験です。

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自動運転のロボットが、複数の農家のもとをまわって農作物を積み込み、直売所まで運ぶ仕組みです。


【実証実験に参加した農家は】

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実証実験に参加した農家の名倉正美さん(67)です。

毎朝、すいかやいちごを直売所に納入していますが、去年、心筋梗塞で倒れて以来、重いものを運べなくなり、納入の際は妻についてきてもらっています。

「おいしいもの作ることを今までずっとやってきたので、これからも体が続くかぎりはやっていきたい」(農家 名倉正美さん)

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実験では、集荷地点でロボットにすいかを詰め込みます。
公道を走り抜けたロボットは、無事、名倉さんのすいかを直売所まで届けることができました。

「忙しいときに非常に助かりますし、今後これが実用化されることを願っています。期待感は大きいです」(農家 名倉正美さん)


【実用化に向けた課題は】

一方で、農業分野での実用化には課題もあるといいます。
課題となるのは、周囲に何もない開けた場所での走行です。

今回実験を行ったベンチャー企業が得意としてきたのは、都心のような建物などが周囲にたくさんある環境での自動運転技術です。
自動運転車は、こうした建物や信号などを目印に自分の位置を認識して走行しています。

一方で、農道は都心と比べ、周囲に建物などが少ないため、ロボットが自分の位置を認識するのが難しいことがあるといいます。

「極端に言うと、周りに何もない場合に自分がどこにいるのか分からなくなってしまう。特に田んぼ・畑とか、かなり開けた地域は苦手分野です。実用化に向けては、より遠くまで見渡す技術や、正確な自分の位置を細かい建物とかでも捉えられるような技術の進化が求められると思います」(TierⅣ事業本部 竹内慎吾さん)

さらに、農業分野で本当に事業化していけるかという点も大きな課題の1つです。導入するコストに比べて、どの程度利益が出るのか、実用化に向けて考えていかなければならないといいます。

課題はまだ多いものの、農業のような分野でこそ、自動運転といった最新技術が導入されていく意義は大きいのではないか。企業では、実用化に向けた検討が進められています。

「自動走行のロボットが畑や田んぼに行って、ものを集めて帰ってきてくれる。そうなれば、お役に立つことはできるんじゃないか。人がわざわざ移動しなくてよいという世界を実現させたい」(TierⅣ事業本部 竹内慎吾さん)


取材:平山佳奈 記者

 

 

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