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廃炉ロボコン通じ福島に思いを 茨城高専の学生

執筆者のアイコン画像佐藤志穂(記者)
2022年03月17日 (木)

東日本大震災の発生から11年がたちます。茨城県にも大きな影響をもたらした、東京電力福島第一原子力発電所の事故は、廃炉作業を計画通り終わらせることができるのかが大きな課題となっています。

こうした中、国の研究機関などが開いている廃炉作業を想定したロボットの技術を競うコンテストに、茨城県ひたちなか市にある茨城工業高等専門学校=茨城高専の学生たちが挑戦しました。

どのような思いでコンテストに臨んだのか、取材しました。

(NHK水戸放送局 佐藤志穂 記者)

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【ロボットで廃炉作業を】

東京電力福島第一原子力発電所の廃炉は、最長で40年かかるとされています。現在も、人が立ち入ることができない極めて高い放射線量の場所での作業が必要で、廃炉を進めるためにはさまざまなロボットの開発が欠かせません。廃炉最大の難問とされている事故で溶け落ちた核燃料、いわゆる「燃料デブリ」の取り出しに使われるロボットアームが開発されたり、高線量の場所の線量を計測するロボットなどが使用されてきました。


【若い世代に興味を持ってもらうために】

こうしたなか、日本原子力研究開発機構などは若い世代に廃炉の技術に関心を持ってもらおうと、6年前から福島県で廃炉に特化したロボットコンテスト「廃炉創造ロボコン」を開いています。

今年度は全国12の高専から13チームが参加し、製作したロボットで決められたルートを通り、除染に見立てた作業を行う課題が与えられました。

このコンテストに、茨城高専の学生で永沼光星さん、助川渚人さん、大貫雅哉さんの3人がチームを組んで参加しました。

きっかけは卒業研究のゼミの先生、平澤順治准教授です。

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平澤准教授は、福島県の出身です。事故の記憶の風化も進むなか福島の現状や廃炉問題に関心を持ってもらおうと、ゼミの歴代の学生たちにコンテストへの参加を勧めてきました。

(茨城高専 平澤順治准教授)
「茨城県は複数の原子力関連施設があるので、学生たちも、もともとある程度こうした問題への関心は高いと思います。福島との地理的な距離も近いので、ロボコン出場は福島の現状や廃炉問題などを考えてもらうきっかけになればいいと思います。」 

【学生たちの変化】

一方の学生たち。参加を決めたものの、廃炉についての知識はほとんどなかったといいます。震災当時、小学3年生だった3人。福島県の現状や廃炉の課題はニュースで見て知ってはいましたが、それほど強い関心はもっていなかったといいます。
3人のリーダー役を務めた永沼さんはこう振り返ります。

(茨城高専 永沼光星さん)
「ロボットコンテスト自体には参加したことはありましたが、廃炉作業に特化した廃炉創造ロボコンの存在は知りませんでした。廃炉作業に関心があるというよりは、卒業研究のために出ることを決めました。」

永沼さんたちの考えが大きく変わったのは、廃炉創造ロボコンの行事の一環で、福島第一原発を見学した時のことでした。壊れた建屋を間近に見たり、廃炉作業に関わる作業員から話を聞いたり、事故の壮絶さに加えて、技術者が果たす役割と責任の大きさを意識するようになったといいます。 

(茨城高専 永沼光星さん)
「自分の目で見てみるとどれだけすごい事故だったのかっていうのもわかりました。現場で活躍するロボットが必要とされているんだなってことを学んで、自分たちの技術が社会の役に少しでも立てばいいなと感じました。」

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【そしてロボコンへ…】

半年かけてついに完成したロボット。壊れた建屋の中で放射性物質を取り除く作業を想定し、どんな足場でも走行できるよう工夫を凝らしました。

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高い場所で作業を安定して行えるよう、除染作業を行う作業台の昇降には、電車のパンタグラフの構造を応用しました。さらに、障害物がある場所でもスムーズに走れるよう、キャタピラーを2台装着して機動性を確保しました。

いよいよ、本番です。茨城高専のロボットはスロープや壁などの障害を次々とクリアし、目標の場所まで順調に進みます。

そして、作業台を安定させながら高さ3メートルほどまで上昇し、除染に見立てた作業を順調に行いました。

気になる結果は…。高い技術で機動性を確保していると評価され、見事「技術賞」を受賞しました。

(茨城高専 永沼光星さん)
「参加したことでいろいろな技術を学ぶことができました。ロボットを使って人間が入れないような危険な場所に入って作業を行うことが求められていると思うので、さまざまな分野で考えた技術が生かせればいいと思います。」

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ほかのメンバー2人も、参加したことで貴重な経験を積んだと振り返ります。

(茨城高専 助川渚人さん)
「参加してみて廃炉問題の勉強になりました。自分の高専生活で得た技術力を発揮するいい機会になりました。」

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(茨城高専 大貫雅哉さん)
「不具合もあったりしましたがみんなで協力して解決することができました。先生やメンバーに教えてもらい、いい経験になりました。」

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【思いは世代を経て】

廃炉作業を世代を越えて成し遂げるためには、確かに若い人材の育成が欠かせません。平澤准教授は、今回の経験を通じて、学生たちが社会の課題を解決するために技術を役立てるという、技術者としての志を、今後生かしていってほしいと思っています。

(茨城高専 平澤順治准教授)
「廃炉作業は課題として残り、若い世代が担っていくことになります。そういう社会問題を常に意識しながら、それぞれ彼らがエンジニアとして活躍できる分野で仕事をしていってくれればいいと思います。」

【取材後記】
水戸放送局の前は福島放送局で勤務していた私。東電福島第一原発の廃炉作業が進むことが、福島県民の切実な願いのひとつだということは取材中いつも感じていました。また、震災と原発事故の発生から時間がたつにつれて、県民の「忘れてほしくない」という強い思いを話されることもしばしばあり、どうすればこうした声に応えられるかと日々悩んでいました。
今回、茨城高専の先生と学生の思いを取材し、とてもうれしかったことがありました。震災当時、小学生だった彼らが、廃炉創造ロボコンをきっかけに、福島へ関心を寄せてくれたことです。それまではほとんど知らなかったという福島のことを学び、現地にまで足を運んでその目で現状を見てくれました。「こんなにもひどい事故が起きて、いまもなお被害は続いている」ことを知ってくれました。
学生たちはこの廃炉創造ロボコンに参加したからといって、必ずしも廃炉作業に関わるということではありません。しかし、平澤准教授が望んでいるように、今回の経験が技術者として糧になり、成長のきっかけになったのではないかと思います。

 

 

 

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