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原発事故への備え "実効性ある計画"訓練で見えた難しさ

執筆者のアイコン画像國友真理子(記者)
2021年12月07日 (火)

10年前の東日本大震災以降、運転を停止している東海第二原子力発電所。

事業者の日本原子力発電は、再稼働も見据えて、新しい規制基準に基づいて対策工事を進めていて、2022年12月までに完成させる計画です。

 

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原発から30キロ圏内にある市町村には、深刻な事故が起きた際の広域避難計画の策定が国の指針などに基づいて求められています。

計画策定中の那珂市で行われた避難訓練の様子や、見えてきた課題を取材しました。

 

【那珂市で初めて行われた訓練】

訓練は、東海村で震度6強を観測する地震が発生し、東海第二原発で炉心を冷やす機能がすべて失われ「全面緊急事態」になったという想定で行われました。

実際に避難を行って課題を洗い出し、策定中の広域避難計画にいかそうという、那珂市では初めての取り組みです。

今回、避難訓練が行われたのは、原発から5キロ圏内の本米崎地区。

 

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地震発生から2時間半後、避難がスタート。

自家用車を使わない人が対象で、参加したのはおよそ40人です。

市の方針では、いったん集合場所に集まってからバスに乗って避難所を目指します。

 

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那珂市が避難先として協定を結んでいるのは、およそ50キロ離れた筑西市と桜川市です。

今回は訓練のため、避難所に見立てた近くの公民館に向かいました。

 

訓練の中では、住民から意見も寄せられました。

 

「(バスの車内に)間仕切りもあったほうがいい」

「本当に事故があって、東海村のほうから多くの人が車で来れば、本当に移動できるのかというのは不安」

(訓練に参加した人たち)

 

計画を策定するために、貴重な材料です。

 

さらに、コロナ禍ならではの課題も見えてきました。

 

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避難所の受け付けでは、感染対策で検温を実施したため、すぐに避難所に入れず、長い行列になってしまったのです。

 

那珂市が目指すのは、“実効性のある計画”。

いざというときに、安全に、円滑に避難できるようにすることです。

市では、今後、訓練の検証結果や住民からの意見を計画に反映させていくとしています。

 

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「住民の安心と安全、命を守るために、できるだけ早い時期に計画も策定したいと思っているが、いくつかの課題が残っている」

「こういった訓練を重ねて実効性を高めることが、これからも必要だと感じている」(那珂市防災課 玉川一雄課長)

 

【避難計画の現在位置】

那珂市では、計画の素案は完成していて訓練も行いましたが、策定の具体的な時期はまだ見通せていない状況です。

このように、東海第二原発の30キロ圏内の市町村のうち、那珂市も含めた9市町村が、現在計画を策定中だとしています。

(策定中の市町村は、東海村、日立市、ひたちなか市、那珂市、水戸市、茨城町、大洗町、高萩市、城里町)

計画の策定が終わっているのは、笠間市、常陸太田市、常陸大宮市、鉾田市、大子町の5つの市と町にとどまっています。

 

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計画の策定を難しくさせている理由の一つは、新型コロナウイルスの影響です。

那珂市も、延期されていた訓練を、今回ようやく行うことができました。

 

もう一つは、避難先が遠く分散しているという難しさです。

14市町村の避難先をまとめた地図を見ると、それがわかります。

 

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詳しい地図はこちら→ 東海第二発電所の安全性の検証と避難計画の検討の状況(茨城県の広報紙) ※NHKサイトを離れます

 

色が塗られているのが、避難してきた人を受け入れる市町村です。

例えば、水戸市の人は、茨城県の西部や栃木県、群馬県など、水色に塗られた場所に避難します。

14市町村から避難する先は県内だけでなく、5つの県もあわせた131市町村と、広い範囲にわたっていて、調整1つとっても大変な作業です。

 

【計画策定に向けて】

こうした中、茨城県は、課題への対策を進めています。

例えば、バスの手配について。

5キロ圏内で必要なバスの台数は、およそ400台から500台と試算されています。これまでは、県が電話などを使ってバスの行き先を調整するとしてきました。

しかし、これだけの台数を、それぞれの場所に手配するのは簡単ではありません。

そこで今回、訓練で新たに導入されたのが、バスのマッチングシステムです。

 

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県が1億6000万円かけて開発しているこのシステムでは、避難する人数を市町村などが、手配できる台数をバス会社が、それぞれ入力。

すると、最も近いバス会社を自動で選び出し、システムを通じて配車の指示まで行われます。

 

災害時には一斉に入力してもらい、すぐに配車の指示ができるということです。

しかし、このシステムについても、大規模に停電した場合にどう対処するのかなど、課題が残っています。

 

30キロ圏内に住んでいる人が94万人と、全国の原発で最も多い東海第二原発。

関係機関は、避難計画の策定など、適切に対応する非常に重い責任を持っていると思います。

また、避難は住民1人ひとりに関わっているため、私たちも、計画がどのように策定されるのかきちんと把握していく必要があると感じました。

 

(2021年11月25日放送 水戸放送局 國友真理子 記者)

 

 

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