防災情報を届けるのは...家電? 命を守る取り組み
今井求紀(ディレクター)
2023年03月13日 (月)

災害時にどのように呼びかけを行うか。
必要な情報を届けるため、活用が検討されているのが家電です。
インターネットにつながって音声を出すことができる、「しゃべる家電」を利用して防災情報を発信しようという取り組みを取材しました。
いば6 3月9日(木)放送
家電で防災へ――研究機関、家電メーカー、市が協力し新たな取り組み
“いつでも避難できるよう準備をするとともに、危険を感じたら自主的に避難を始めましょう”
防災情報を伝えるのは空気清浄機。
2月13日、しゃべる家電を防災情報の発信に活用する新たな取り組みの会見がありました。研究機関、家電メーカー、茨城県つくば市が協力して開発を目指します。

日常的にある家電から発されるメッセージに必要な情報を届けられたら 行政としても非常に意義があることだと思っています。
ぜひ市としても協力を全面的にしたいと思っています。
しゃべる家電を始め、インターネットにつながった家電には、スマホで遠隔操作ができるなど多くの機能があります。テレビ、エアコン、冷蔵庫など多くの種類の家電が開発され、普及が進んでいます。
今回目指しているシステムは、自治体からの防災情報をインターネットを通じてしゃべる家電に送り、各家庭にいる人に呼びかけることで迅速な避難などに結びつけようというものです。
郵便番号などで地域を分けて防災情報のデータを送ることで、住んでいるエリアの情報に絞った呼びかけも行えます。

接続率をもっと高めていくため、防災というすべての方に関わるサービスを始めたい。
家電が家族のようにいろいろなことを教えてくれたり、アドバイスをしてくれたり、そういうものに変わっていくと期待しています。
災害で気づいた確実に情報を届けることの重要性
つくば市の防災科学技術研究所で、研究員を務め、今回の開発に協力している取出新吾さん。さまざまな災害の現場を経験し、災害情報の効果的な活用方法を研究しています。
8年前、茨城県常総市などで大規模な水害が発生。その際、現地で対策にあたった取出さんは、従来の防災行政無線による呼びかけに限界を感じたといいます。

防災行政無線が、本当に聞こえないんですよ。
窓を開けていてもあんまり聞こえない。
鳴っているかもしれないなと思ったら窓から顔をだして、なんとか聞こうとする。それでもなかなか聞き取れない。
家電の活用で描く防災の未来
今回のシステムなら、家庭にいる人により確実に情報を届けられると期待する取出さん。
インターネットにつながった家電は情報発信だけでなく、情報収集にも役立てられるといいます。例えばセンサー機能がついていれば、家の中に人がいるかといった情報を自治体が一気に集められます。
防災に家電の機能を活用しようという今回の取り組み。生活に必要で、防災のためだけに設置する意識を持たなくてよい家電だからこそ果たせる役割があるといいます。キーワードは“頑張らない防災”です。

防災って特別なことにしたくないんですよ。やっぱり日頃からちゃんとできていること。
例えば「非常持ち出し袋」。用意していた方がいいには決まっていますが、実際やっていない人もすごく多いです。
頑張ってやるような防災だけじゃなくて、頑張らなくても自然とできているような防災――生活に本当に溶け込んでいる防災が望ましいと思って、そういうのを“頑張らない防災”と呼んでいます。
防災の第一歩となる情報を確実に届ける。命を守るための模索が続いています。