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茨城県内の特別支援学校で〝教室が足りない〟

執筆者のアイコン画像藤田梨佳子(記者)
2023年03月10日 (金)

障害がある子どもなどが通う茨城県内の特別支援学校でいま、教室不足が問題になっています。

茨城県立の知的障害がある子どもたちが通う特別支援学校17校のうち、今年度実に茨城県教育委員会は今後、6校で校舎の増築を進める方針を示していますが、教室不足は相変わらずなかなかすべて解消されません。

特別支援学校での現場を取材しました。

農業のための教室だったのに…

20230310f_1.jpgつくば市にある、県立つくば特別支援学校の高校1年生の教室は、もともとは農作業をするときに利用する、農業園芸実習室でした。

 

20230310f_2.jpg茨城県立特別支援学校 村上 卓教諭
もともとは、農作物を水洗いして、販売できるような形にしたりとか、泥で汚れたものを洗ったりするような場所でした。土足で入れるような場所だったのでそれを改良して教室にあてています

 小学1年生から高校3年生まで357人が通うつくば特別支援学校では、今年度、12の教室が足りていません。

このため、理科室や家庭科室などを普通の教室として使ったり、ひとつの教室をパーティションで区切って2つにしたりして対応しています。

県内で深刻な教室不足

そして、教室不足は、この学校だけではありません。
文部科学省によりますと、特別支援学校での教室不足は全国的な問題で、茨城県は去年10月時点で県内の不足教室数は107教室、全国でワースト9位でした。

20230310f_3.jpg 画像の赤と黄色で示した学校が、昨年度の時点で、教室が足りていなかったところです。知的障害の子どもが通う県立の特別支援学校17校のうち教室不足は実に12校に上りました。

 このうち、つくば特別支援学校など、新たに校舎の増築で教室不足が解消されるところもありますが、一方で児童生徒が増えて、新たに教室不足になることもあり、新年度には、10校で教室不足が見込まれています。このため、県教育委員会は、校舎を増築するなどして、教室不足の解消を目指していきたいとしています。

 茨城県教育委員会は令和2年に、水戸飯富特別支援学校、内原特別支援学校、つくば市の特別支援学校、鹿島特別支援学校に限って教室不足への対策を打ち出していて、増築や増設、通学区域の変更などを行い、生徒の増加に伴う教室不足を解消してきました。

 取材したつくば特別支援学校では、今月中に新しい校舎が完成し、新たに18学級分の教室が増えるため、新年度は教室不足が解消できることになりました。今まで普通の教室として利用していた、理科室など専門的な設備が必要な教室は元に戻して、教育環境が充実できるようになることが期待されています。

 

新年度に向けて解消されるのか?

20230310f_4.jpg県教育委員会は、ことし新たに児童生徒の対象に増加に伴う教室不足が生じたとして、3年後の2026年までに、協和特別支援学校、結城特別支援学校、石岡特別支援学校、伊奈特別支援学校、美浦特別支援学校、境特別支援学校の6校を増築する方針を発表しました。

 一方で、常陸太田特別支援学校、勝田特別支援学校、北茨城特別支援学校、3校については、見通しがまだ立っていません。

 

特別支援学校の児童生徒は全国的に増加

全国的にも特別支援学校の児童生徒が増えています。特別支援学校の児童生徒数は、この10年で2万人以上増え、2021年度は14万6000人余りと過去最多となると文部科学省が発表しています。

 

特別支援学校に通う子供が増えている理由

20230310f_5.jpg県教育委員会や専門家によりますと、2つ理由があります。1つは、特別支援教育への理解の深まりです。子どもひとりひとりの状況に応じた適切な教育が受けられる学校だという理解が広がり、通う子どもが増えたことです。もう1つは、専門家などからの障害である可能性を指摘される機会が増え、障害に気づく機会が増えていることがあるということです。

 

20230310f_6.jpg今後特別支援学校の児童生徒の数は増えていくのかどうか。

県教育委員会が予測している特別支援学校に通う児童生徒の数の推移をみていくと、2025年までは増え続けて、およそ4300人、昨年度と比べて150人余り増加すると見込まれています。

 

できるだけ早い対応が必要

 さらに、2023年4月から、今まで明確に定められていなかった1学級の人数について、学校教育法に基づいた「特別支援学校設置基準」が施行されました。

そこでは、より個人に適したきめ細やかな教育を行えるよう小中学校は原則6人以下、高等学校は8人以下などと決められています。
教育委員会は、校舎の増築をするということですが、これだけ増えていくことを考えると、早い対応が求められます。

 別支援教育に詳しい文教大学教育学部の成田奈緒子教授は、統廃合などにより廃校となった小中学校などといった既存の建物を再利用する、増築以外の選択肢も検討すべきと指摘しています。

20230310f_7.jpg文教大学社会福祉学部 成田奈緒子教授
子どもの数というのは年々減ってきて、出生率も減っているので、普通に考えれば通常の小学校の教室が余るはず。そこを特別支援学校の分室分校として使うことは可能だと思います。新しく建物を作らなくても教室不足を部分的に解消して行く手段はいくらでもあるのではないか。

 

求められる柔軟な対応

成田教授によりますと、実際に埼玉県草加市の「かがやき特別支援学校」など、廃校の建物を特別支援学校の分校として使用することで、教室不足を解消しているということです。

茨城県教育委員会は、いまのところ、教室の増築や増設、通学区域の変更などで対応してきましたが、現実に照らすと、柔軟な対応も必要になってくると思います。

 

 

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