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新年度予算案を知れば、茨城が見える!

執筆者のアイコン画像國友真理子(記者)
2023年02月21日 (火)

茨城県は新年度・令和5年度に、どんなことに取り組むのか。

県は、毎年春先になると、新年度予算案のなかで、取り組みたい事業を発表します。「予算案」と聞くと、なんだか難しそうと思われるかもしれませんが、私たちの生活に関わるとても大切な話です。茨城県が新型コロナの影響をどう乗り越え、どう変わっていこうとしているのか。詳しく解説します!

(NHK水戸放送局 國友真理子記者)

過去2番目の規模

2月21日に発表された茨城県の新年度の当初予算案。一般会計の総額は1兆2921億9400万円で、今年度よりも105億円余り、率にして0.8%増えています。過去最大だった令和3年度に次ぐ、2番目の大きさとなりました。

 

20230221k_1.jpg新型コロナウイルス対策は1267億円余りでした。感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行することから、今年度の6割程度にまで減っています。

大井川知事は新年度予算案の編成方針について「ウィズコロナ、ポストコロナの時代に向けた新しい茨城づくりへの挑戦を意識した。特に輸出振興やインバウンド観光の促進など、これまで制限されていた海外とのやりとりを加速化していきたい」と説明しました。

 

県が取り組む4つのチャレンジ

20230221k_03.jpg茨城県は、新年度予算を編成するにあたっての基本方針として、「活力があり、県民が日本一幸せな県」の実現に向けて「新しい豊かさ」「新しい安心安全」「新しい人財育成」「新しい夢・希望」の4つのチャレンジを加速させるとしています。

 

「新しい豊かさ」へのチャレンジ

「新しい豊かさ」へのチャレンジでは、「力強い産業の創出とゆとりある暮らしを育み、新しい豊かさを目指す」としています。

新年度予算案では、さらなる企業誘致を進めるため、ひたちなか市の国有地を新たに工業団地として開発する事業が盛り込まれました。およそ23ヘクタールの土地を国から買い取り、総額およそ68億円をかけて開発するということで、令和7年度の完成を目指しています。新年度予算案では、測量や設計の費用として7100万円が計上されています。

このほか、圏央道の沿線などで新たな工業団地をつくるため、調査などを行う事業に5900万円を計上しています。観光では、ことし秋から始まるJRグループや自治体が茨城の魅力を全国に発信する「デスティネーションキャンペーン」をPRするためイベントなどを開催する事業に1億2000万円を計上したほか、これまでにない新しい視点の観光ツアーを生み出す事業に2000万円を盛り込みました。

農林水産業では、特産品の品質向上やトップブランド化を目指します。

「日本一のメロン生産県」の地位を確固たるものにするためとして、メロンの品質を高める事業に800万円を計上しました。見た目と味に優れたメロンの栽培方法を検討するほか、茨城県のオリジナル品種「イバラキング」のコンテストを開くとしています。

茨城県のブランド牛「常陸牛」は、新たな肉質基準を導入して特に品質の高いものを新たなブランドとして売り出すとしています。新しいブランド名を付けて販路拡大を図るほか、生産を担う農家を組織化したり、繁殖用の雌牛を増やしたりする事業などに1億1300万円を盛り込みました。

全国2位の漁獲量を誇るシラウオについても、トップブランド化を目指します。生や冷凍の状態で出荷できるようにして付加価値を高めるため、漁業者に品質を保つ技術を伝える事業などに500万円を盛り込みました。

このほか、飼料や肥料の価格が高騰するなか、霞ヶ浦や北浦に生息する中国原産の魚「ハクレン」などを飼料や肥料の原料として活用できないか調査する事業に1100万円を計上しました。魚を乾燥させて粉状の「魚粉」にし、成分を分析するほか、市場調査を行うことにしていて、新たな収益にできないか模索することにしています。

 

「新しい安心安全」へのチャレンジ

「新しい安心安全」へのチャレンジでは、「医療、福祉、治安、防災など県民の命を守る 生活基盤を築く」としています。

新年度予算案では、医療体制の強化のため「脳卒中・心臓病等総合支援センター」を筑波大学附属病院内に設置するための費用として、800万円が計上されています。センターは、脳卒中や心臓病などの患者を地域で支えられるような体制の構築を進める役割を担うとしていて、患者の情報や治療方針などを医療機関の間でスムーズに共有するための仕組み作りや、地域のかかりつけ医が気軽に専門医に相談できる体制作りなどを行うということです。

また、県内では去年の刑法犯の認知件数が前の年よりも増えて、全国で10番目に多かった一方、検挙率が全国で2番目に低かったことなどから、犯罪の抑止や捜査力の強化につなげるための事業費も盛り込まれました。具体的には、▼空き巣などを減らそうと県内の6つの住宅地をモデル地区として街頭の防犯カメラの設置費用を補助するといった事業に1000万円が計上されています。

さらに、▼自動車窃盗などの捜査のため、道路に設置する車のナンバーの自動読み取りシステムの端末を令和7年度までにこれまでのおよそ1.5倍に増やすとしていて、新年度は700万円が計上されています。

このほか、人口減少や少子高齢化で地域のつながりが薄れる中、新たに「時間銀行」という仕組みを取り入れて地域での助け合いを強めようという事業に400万円が計上されています。「時間銀行」は、会員どうしがゴミ出しや草取り、趣味の教室といったサービスを提供しあうものです。原則として、自分がほかの人に サービスを提供した時間と同じ時間だけサービスを受けられるというもので、海外ではスペインで地域の人と人とのつながりを強め、暮らしやすい地域作りに役立っているということです。

 

「新しい人財育成」へのチャレンジ

「新しい人財育成」へのチャレンジでは、「茨城の未来をつくる“人財”を育てて日本一子どもを産み育てやすい県を目指す」としています。

茨城県は妊娠から出産、子育てまでの一貫した相談支援と10万円相当の経済支援を組み合わせた事業に新年度から取り組むとして、すでに補正予算を組んでいますが、このことし10月から来年3月までの事業費として1億7700万円が計上されています。

また、子どもたちにプログラミングを学ぶ機会を提供し、IT教育先進県を目指すとして、▼高校の授業にIT企業などから講師を派遣したり、▼中高生に自分でプログラミングを学べるアプリを配布したりする事業などに4700万円が計上されています。

さらに、IT技術などが学べる県立産業技術短期大学について、現在は2年間の専門課程のみですが、令和8年度からはさらに2年間の応用課程を追加し、定員も増員するとしていて、来年度は校舎を増築する設計の費用などとして1億5400万円が計上されています。

このほかすべての世代の人を対象に変化する社会情勢に柔軟に対応できる能力を身につけてもらおうと、リスキリング=学び直しを推進するための仕組みづくりなどに6600万円が計上されています。

 

「新しい夢・希望」へのチャレンジ

「新しい夢・希望」へのチャレンジでは、「将来にわたって 夢や希望を 描ける県とするため、県内外から選ばれる、魅力ある 茨城(IBARAKI)づくりを推進する」としています。

新年度予算案では、「開運茨城」をキャッチフレーズに台湾で展開してきた茨城の魅力をPRする大規模なプロモーションを本格的な誘客や県産品の売り込みにつなげる取り組みに1億円を盛り込んでいます。宣伝大使を務める台湾生まれ、茨城育ちのタレントの渡辺直美さんとの交流イベントを企画したり、観光スポットを紹介した動画を配信したりするほか、台湾で県産品の売り込みなどを行うとしています。

つくばエクスプレスの県内延伸構想では、▼筑波山方面、▼水戸方面、▼茨城空港方面、▼土浦方面の4つの延伸方面を1つに絞り込んだ後の事業として、2600万円を計上しました。費用対効果や採算性を向上させる方策などを調査・検討するとともに、延伸ルートや事業スキームを検討することにしています。

このほか、県北地域を活性化させるため、起業によって地域の課題解決に取り組む「起業型地域おこし協力隊」の隊員を現在の20人から30人に増やす事業や、宇宙ビジネスを盛り上げるため衛星開発などに取り組む企業が県内に拠点を設ける際に費用の一部を補助する事業などが盛り込まれています。  

 

県の新年度の当初予算案は、2月28日に開会する定例県議会に提出され、議論が交わされます。傍聴もできますし、一部はインターネットでも中継されますので、参加してみてほしいと思います。

 

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