事件現場の取り壊しに迷う遺族 ~未解決となって5年目の思い~
藤田梨佳子(記者)
2023年02月10日 (金)

「健康にも気を遣っていたし、まだまだ元気で、あと10年生きていたんじゃないですか」
こう話すのは、茨城県つくば市の小林照幸さん。2018年1月1日につくば市で発覚した殺人事件で親を失いました。
事件からことしで5年が経ちますが、いまだ犯人は、見つかっていません。
お正月に事件が発覚
2018年の元日。
新しい1年が始まろうとするなか、つくば市の住宅で、夫婦が遺体となって見つかりました。
殺害されたのは、建築業を営んでいた夫の小林孝一さん(当時77)と妻の小林揚子さん(当時67)です。
2人は、2階の寝室やその周辺で倒れて亡くなっているのが見つかりました。夫婦の頭などには鈍器で複数回殴られた痕があり、警察は恨みを抱え強い殺意をもった人物による犯行の疑いがあるとみて今も捜査を進めています。
殺害されたのは年末か
小林さん夫婦の生存が最後に確認されたのは、遺体で見つかる2日前の12月30日。
午後7時半ごろ、スーパーへ買い物に出かけた2人の会話が車のドライブレコーダーに、残されていました。
翌日の大みそかの午前7時ごろ、妻の揚子さんの友人が、住宅を訪ねた際、応答がなかったということで、2人はこの11時間半の間に殺害されたとみられています。
5年たっても犯人逮捕に至らず・・・
長男の小林照幸さんは、亡くなった2人と対面したときの衝撃を忘れられないといいます。
土浦警察署に運ばれていた。2人ともかなり痛々しかったです。「何で?」って思いました
警察はこれまで、のべ1万人以上を動員して捜査していますが事件の解決に至る証拠や情報はなく、照幸さんは焦りを募らせています。
警察も捜査について詳しく話せないから、僕たち遺族も進んでるのか進んでないのかわからないし、犯人が見つからないんじゃないかという思いが強い
働き者で明るい2人
建築業を営んでいた孝一さんは、働き者で、多くの人から慕われていました。
照幸さんは、人生の先輩として、見本となる存在だといいます。
近所のみんなが農機具持って、おやじに溶接を頼んでいた。近所の家の倉庫や車庫を何軒も手がけているんじゃないですかね。 難しい部分もぴったり寸法をあわせて作ることができる。仕事に関しては尊敬してましたし、絶対超えられない人でした
孝一さんの妻の揚子さんは自宅でカラオケ店を経営。歌うのが好きな明るい性格だったといいます。
働き者で旅行が趣味
小林さん夫婦の趣味は旅行で、さまざまな観光地に出かけていたといいます。
亡くなった後、孝一さんの旅行ノートが見つかりました。
ほんとに行ったところですね。サービスエリアで何食べたとか。マメなんだなと思いました。そうですね。結局行けなかったんだろうけど事件がなければ、まだ元気だっただろうなあ
去年12月に情報提供を呼び掛け
去年12月、事件発生から5年となるのを前に照幸さんは、初めて街頭で情報提供を呼びかけました。
照幸さんは親戚とともに100万円の懸賞金を設け、事件解決につながる情報を求めています。
早く解決してもらいたいのはやまやまなんですけど、事件が起きた現場が何もない場所なので、難しいとは思いますが、少しでも情報を提供してくれれば助かります
老朽化する現場
事件が起きた家は、屋根が朽ち、老朽化が目立ってきています。
照幸さんは取り壊しを考えましたが、踏み切ることはできないといいます。
警察ももう取り壊してもいいって言っているんですが、悩んでいます。 そうしても犯人につながる唯一の証拠が残っている場所だから、やっぱり逮捕されるまでとっておきたい気持ちと半々ですよ。どっちとも言えないから結局そのままになっちゃってるんですよね
一刻も早い事件解決を
仏壇には、情報提供を呼び掛けるポスターが張られています。
情報提供の呼びかけのあと、おやじに活動を報告しました
事件から5年、照幸さんは一刻も早い犯人の逮捕を望んでいます。
やっぱり、おやじが殺されたことは納得はできないです。おやじには、悪いところがないし、なんで殺したっていうのを犯人に聞きたいですよね