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境町 ふるさと納税拡大へ新産業!

執筆者のアイコン画像今井求紀(ディレクター)
2023年01月26日 (木)

いば6 1月25日(水)放送

 

2008年に始まったふるさと納税制度。
自治体への寄付額の合計は年間1兆円に迫ろうとしています。

そんななか境町が取り組むのは、新たな返礼品「干しいも」の生産。

地域をあげて産業を興す取り組みを取材しました。

 

ふるさと納税で大忙しの町

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例年、年末に寄付が集中するふるさと納税。境町では冬から春にかけて返礼品の発送作業がピークを迎えます。境町への2021年度の寄付額は48億円を超え、関東地方の自治体でトップとなっています。

 

ふるさと納税で財政難を打破しろ!町の取り組みのはじまり

20230124i_2.jpgそんな境町は茨城県西部に位置する人口2万4000人の町です。10年前は、歳入の2倍の172億円にのぼる借金を抱え、苦しんでいました。こうした状況を打破するため、2014年に就任した橋本町長はふるさと納税の積極的な活用に乗り出します。

 

20230124i_3.jpg境町 橋本正裕町長
住み続けられる、働き続けられる、そういう町を作らなくてはならないという思いがあったので、逆に収入を増やそうというふうにシフトしました。 財政を健全化させないことには次の一手が打てない。そういう意味で、ふるさと納税に着目したのです。

 

民間の協力で取り組むふるさと納税 ~干しいも開発の取り組み~

寄付額を伸ばすために町が力を入れるのが、魅力的な返礼品をそろえること。返礼品の検討は、民間と協力して進めています。

2016年に町が出資して公社を設立し、長年町づくりに取り組んできたメンバーなどと議論を重ねています。

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そして、最近開発した返礼品が「干しいも」です。産地として有名な茨城。しかし、境町ではこれまであまり生産されていませんでした。

そこで町は、干しいもの大規模な生産のため2020年に2億円をかけて工場を建設。年に300トンのさつまいもを加工することができ、2つ目の工場も今年3月中の完成を目指しています。

 

20230124i_5.jpgさかいまちづくり公社 代表取締役 野口富太郎さん
ふるさと納税制度がいつ終わるか分からない。 だからこそ地域に根づいた商品を開発して、ふるさと納税がなくなった時でも大丈夫なようなシステムを作り上げようと考えているんです。

 

さつまいも栽培も拡大 地域に広がる産業づくりの効果

こうしたなか町内では、干しいもの原料となる、さつまいもを作る農家を目指す人が増えています。

農家の木村信一さんは去年、葉たばこの栽培をやめて、さつまいも作りを始めました。転身を決意した理由の1つは町によるサポート。町の方針で、生産したさつまいもは規格外のものも含めて、公社がすべて買い取ってくれることになっているのです。

 

20230124i_6.jpg木村信一さん
農家としてはありがたいですよ。無我夢中でやってきて採れたものだから、町で全部買い上げてもらえるというのはありがたいことです。

 町と公社、そして生産者が協力し、境町に新たな地場産業が生まれようとしています。

自治体に求められる、まちづくりのためのふるさと納税

拡大を続けるふるさと納税。地方財政が専門の関西学院大学経済学部の上村敏之教授は、ふるさと納税の活用によってどのように町を変えていくかが自治体に問われると言います。

 

20230124i_7.jpg関西学院大学経済学部 上村敏之教授
目的は町づくり。町づくりのビジョンを実現するためのふるさと納税制度なんです。 なので、ふるさと納税の寄付額を増やすことが目的化してはいけないわけです。「寄付額を増やしていったい何をすべきなのか」が先にあり、そのためにふるさと納税を使う、産業化していくということだと思います。

 

取材を終えて

産業を興し地域を活性化するというスケールの大きな話を取り上げた一方、その産業を裏側で支える人たちに出会った取材でもありました。工場の従業員や地域にできた「ほしいもカフェ」で働くスタッフたち。農家の木村さんのもとで学び、この春からさつまいもで農業を始めようとする地域の若者たち。
本編では取り上げられなかったたくさんの人たちもまた、境町の干しいも産業を支えていました。これからも、地域を盛り上げる取り組みの取材を続けていきたいと思います。

 

 

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