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"TX延伸の乱" しれつな争いの背景は

執筆者のアイコン画像鈴木瞬(記者)
2022年05月23日 (月)

「つくばエクスプレスの延伸先を絞り込む」と茨城県が表明したことを受けて、県内では延伸を目指す自治体の動きが加速しています。

まさに、群雄割拠の“TX延伸の乱”。しれつな争いのゆくえは、その背景は!?

“1つに絞る”から始まった

つくばエクスプレスの延伸には、①秋葉原から先の、東京駅方面 ②茨城県内の、つくばから先、という2つの議論があります。

20220523s_1.jpgこの②について、茨城県が2050年ごろの構想として延伸先に挙げているのは▼筑波山方面▼水戸方面▼茨城空港方面、それに▼土浦方面の4つです。

茨城県が「今年度中に1つに絞り込む」として当初予算に調査・検討の事業費を盛り込んだことをきっかけに、延伸を望む自治体が動き出しました。

県都・水戸市が動いた

20220523s_2.jpg5月23日。水戸市が、ついに始動しました。延伸を目指す組織を立ち上げ、初会合を開いたのです。その名も「TX水戸・茨城空港延伸促進協議会」。

「えっ、茨城空港?」と思った人も多いかもしれません。

水戸市が狙うのは、つくば駅からそのまま水戸方面への延伸ではないのです。▼石岡市▼かすみがうら市▼小美玉市▼茨城町と5市町で団結して、つくばから茨城空港を経由し、水戸まで結ぶことを目指します。

水戸市はこの方面への延伸が、「県全体を持続的かつ均衡的に発展させる上で、極めて有効な手段」だとしています。

経由を狙う石岡市

20220523s_3.jpg「TX水戸・茨城空港延伸促進協議会」のメンバーに入った石岡市。実は、5月17日には、市内を経由して茨城空港への延伸を目指すための組織を独自に立ち上げていました。

初会合で石岡市の谷島洋司市長は「石岡市は県のほぼ中央に位置しており、地域間の連携を支える役割が期待されている。石岡市を経由した延伸を目指して力を結集しましょう」と呼びかけました。

先行する土浦市

20220523s_4.jpg延伸を目指していち早く動き出していたのは、石岡市の隣の土浦市です。6月には延伸を求める決起大会を開く予定で、おそろいのジャンパーも作るほどの意気込みです。

すでに署名活動も始めていて、2万筆を目標としています。

カギは茨城空港か

取材を進めると、各自治体とも、茨城空港が延伸のカギとみているようです。土浦市も「土浦経由で茨城空港」という要望内容にも含みを持たせています。

茨城空港がある小美玉市は、「TX水戸・茨城空港延伸促進協議会」に入る前から、市議会が中心となって毎年、県や県議会に空港延伸を要望してきました。ことしも要望を出せるように調整をしているということです。

つくば市の要望は“東京延伸”

さて、延伸先となっている4方面のうち水戸・土浦・茨城空港が盛り上がりを見せる一方で、具体的な動きが見られないのが筑波山方面です。つくば市が要望しているのは、筑波山方面ではなく、東京駅への延伸なのです。つくばエクスプレス沿線のつくばみらい市、守谷市とも歩調を合わせています。

“負担”と“地域再生”

延伸を実現するうえで最大の課題が、工事費などの費用です。

2005年に開業したつくばエクスプレス、当時の建設費用は8081億円でした。この14%に当たる1131億円が沿線の自治体からの出資金です。負担の割合は、東京都4割、茨城県3割、千葉県2割、埼玉県1割でした。建設費以外も含んだ出資金は、茨城県が334億円、つくば市が124億円、つくばみらい市と守谷市がそれぞれ27億円となっています。

開業当時の負担状況から見ると、延伸した場合も、沿線の自治体には費用負担を求められる可能性があります。開業当時に比べて建設資材費や人件費は高騰しており、費用負担はさらに大きくなるおそれがあります。

この負担を、自治体は抱えきれるのか。率直な疑問を関係者にぶつけていくと、自治体は、具体的な費用は算出していないものの、費用負担が生じることを飲み込んだ上で、誘致を進めていることが分かりました。

その背景にあるのは、人口減少が進むなかで、地域の活気が失われていくことをなんとか防ぎたいという、わらにもすがる思いでした。

茨城県内で2021年の1年間に転入が転出を上回った(人口が増えた)のは14市町村。なかでもつくば市は4643人と全国7位の増え幅で、つくばエクスプレス沿線のつくばみらい市や守谷市も転入超過となっています。一方、県内の7割の自治体では、転出者が多くなりました。アクセスのよさが、地域の活気に大きく影響していると言えます。

延伸は地域再生のチャンス。1%でも可能性があるなら、何もしないわけにはいかない。どの自治体の担当者からも、そういった決意を感じました。

とはいえ、延伸による費用負担は、税金という形で私たちにものしかかってきます。つくばエクスプレスの延伸は、多額の費用負担を上回るだけの地域の起爆剤となるのか。県による調査や、自治体の動きをこれからも取材していきます。

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