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どうなる部活動?教員の働き方改革待ったなし!

執筆者のアイコン画像佐藤志穂(記者)
2022年05月19日 (木)

学校現場で深刻となっている教員不足や長時間労働。教員の働き方改革を進めようと、今、全国で検討が進められているのが「部活動の地域移行」、地域のスポーツクラブなどに部活動の指導を任せることです。

全国でもいち早く、4年前から「地域移行」に取り組んでいる茨城県つくば市の中学校を取材しました。

部活動 週1回は「地域移行」

取材したのは、つくば市の谷田部東中学校です。この学校では、平日は月曜日以外の4日間、部活動がありました。今はこのうち週1日の指導を、先生たちではなく、外部のスポーツ経験者に任せています。 

20220524s_1.jpgこの取り組みを可能にしたのは、地域住民の協力です。学校と保護者などが団体を立ち上げ、筑波大学の運動部の学生や民間のスポーツクラブなどに、指導者の派遣を依頼する仕組みです。外部の指導者が担当する日の生徒の参加は希望制で、会費として月1250円を集め、指導者への謝礼に充てます。

4年前から取り組みをはじめ、今では15ある部のうちテニス部や剣道部など11の部で、地域移行が進んでいます。

先生「時間に余裕ができた」

「地域移行」の日、職員室で授業の教材をまとめていたのは社会科の笹目侑希先生です。 

20220524s_2.jpgテニス部の顧問の笹目先生。部活動がある日は、翌日以降の授業の準備を始めるのが午後6時を過ぎてからになることもあり、週1回の「地域移行」は集中して教材研究などができる貴重な日だといいます。

さらに笹目先生は、実はテニスの経験がないことに悩んでいました。地域移行でテニス部の指導を引き受けたのは筑波大学軟式庭球部の学生たちで、実力があり、生徒たちと年齢も近い指導者が来てくれることはありがたいと話していました。

笹目侑希先生
部活動指導のあとにやっていた教材研究などの業務を集中してできるので、地域移行のメリットは大きいと思います。テニスについても子どもたちに技術的な指導ができるか不安だったので、子どもたちがこういう練習して楽しかったと教えてくれると、それをふだんの部活動にも取り入れています。子どもたちがどんどんうまくなる姿を見られるのはすごくうれしいし、ありがたい。


生徒たちの受け止めは

外部のスポーツ経験者による指導は、生徒たちにも好評です。

テニス部を指導するのは、筑波大学軟式庭球部の升川創太さん(3年)と内海まどかさん(2年)。2人ともテニスの競技歴が長い上、教員志望で、子どもたちとの接し方も学んでいます。

20220524s_3.jpg取材した日はレベルに合わせて生徒たちを2つのチームに分け、内海さんが初心者の生徒に基礎を、升川さんは経験者に本格的な試合戦術を指導していました。

2人は「今の打ち方、とてもいいね」「風向きを考えてプレーしよう」などと生徒たちに声をかけ、生徒たちも積極的に質問をしていました。

テニス部生徒
話しかけやすいし、困ったときに質問すると分かりやすく答えてくれて、すごく参考になる」「部活の先生とは違った技術を教えてくれて、結構うまくなったと思う。


「子どもたちに向き合う時間ができた」

筑波大学の2人がテニス部を指導したこの日、顧問の笹目先生は、午後6時には学校をあとにすることができました。いつもなら、ようやく授業の準備に取りかかれる時間です。 

20220524s_4.jpg永井英夫校長も、地域移行によるメリットは大きいといいます。

永井英夫校長
地域移行によって週に1回でも教員の勤務に余裕ができ、子どもと向き合う時間が増えたと思う。地域移行が持続可能な活動になるように、うまく発展させていきたい。


急ピッチで進む地域移行 課題も

国は、中学校の休日の部活動を地域のスポーツクラブなどに移行していく方針で、来年度から3年間を改革の集中期間とし、すべての都道府県で推進計画を策定することにしています。 

茨城県も「令和10年度までに休日の部活動を行う中学校・高校の教員をゼロにする」という目標を掲げ、さらに前倒しに努める方針です。

一方で、専門家は、教育現場の働き方改革といった観点から部活動の地域移行は進めていくべきだとしながらも、次のように課題を指摘しています。

20220524s_5.jpg岩手大学人文社会科学部 浅沼道成教授
都市部以外の地域でも、子どもたちを教えられる指導者がいるのか。参加費といった経済的負担がネックとなって、地域移行の取り組みに参加できない子どもたちがでてくる可能性も否定できない。また、教育委員会や市町村が地域移行の仕組みを整えていかないと、地域だけではなかなか動きようがないのではないか。


県教育委員会が設けていた部活動のあり方を検討する有識者会議でも、県が取り組むべきこととして、▼指導者の確保のために人材バンクを設けることや、▼経済的に困窮する家庭への支援、それに▼けがなどに備えて保険制度を整えることなどが挙げられています。

待ったなしでも最善を

教員不足の背景には教員の長時間労働の問題があるとされていて、働き方を改革して教員になりたいという人を増やさなければ、子どもたちがしわ寄せを受けることになります。働き方改革は、待ったなしの状況です。

ただ、それぞれの学校や地域によって、抱えている事情は異なります。どのように地域移行を進めていくのがふさわしいのかを、いわば「オーダーメード」で検討し、現場の教員、そして子どもたちにとって最善の方法を探っていってほしいと思います。

 

 

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