夜の鹿島神宮で特別な体験
三島早織(キャスター)
2023年09月26日 (火)

ことし10月からJRグループや自治体が茨城の魅力を全国的にPRする「デスティネーションキャンペーン」が始まります。それにあわせて、鹿島神宮は地元のまちづくり会社と協力してユニークな催しを企画しました。「夜の参拝」に焦点をあてたもので、普段は体験できないことばかり!内覧会の様子をご紹介します。
夕方5時30分。境内の灯篭に灯がともり昼間とは違った趣のある雰囲気。参拝客の姿ももうほとんどありません。
「浄闇(じょうあん)」と呼ばれる清らかで静かな時間帯です。そんな特別な時間から味わえるのが、「宵詣り(よいまいり)」という体験です。
神職に続いて参加者たちが向かう先は、本宮拝殿の中。神職や氏子総代らがお祭りの時だけ入れる場所です。
「宵詣り」とは、神様に日頃の感謝を伝える「昇殿参拝(しょうでんさんぱい)」を夜間に行うことです。これまで一般の人が体験できる機会は一度もありませんでした。
鈴を持ったみこが舞う「浦安の舞」です。鹿島神宮では祭典や婚礼の時だけ奉納される特別な舞。間近で鑑賞することができました。
参拝を終えて、案内されたのは、拝殿の裏にある「御垣内(みかきうち)」。神聖とされ、ふだんは立ち入ることができない領域です。この中に入ると、拝殿や本殿がすぐそばに。建物をじっくりと見学することができます。神職がガイド役となって建物や歴史を案内してくれました。

「こちらは徳川家康公の息子、二代目の秀忠公が奉納されたお社になります。」「こちらは一番古く、一番大きな木になります。」
樹齢およそ1300年の杉のご神木。こちらもふだんは見えない角度から、ダイナミックに見上げることができました。
ここまででも十分貴重な体験ですが、もう一つ楽しみがあります。
鹿島神宮では毎朝地元の新鮮な野菜や米などの食材を神様にお供えしています。今回の体験ではそれと同じ食材で作られたフルコース料理をいただけるのです。
それがこちら、「直会饗膳(なおらいきょうぜん)」と名付けられた全8品のフルコースです。
「直会」とは、お祭りや参拝の後にみんなで食事をすること。この体験では、50種類以上の茨城の海の幸、山の幸が味わえます。
料理を手がけたのは神栖市のホテルの板長、長峰秀行さんです。
メニューを考案するとき、一番大切にしたことは?
茨城のさつまいもを今回使っているんですけど、そのいもだけの味で召し上がってもらえるようにっていう感じで。
“食材の味を生かすこと”。
茨城の自然の恵みをそのまま楽しめるよう、長峰さんは20種類以上の料理を試作しました。
煮物は茨城の畑で育ったさつまいもやレンコンをふんだんに使い、優しい味わいに仕上げました。ハマグリやアユも茨城の海や川でとれたもの。子どもからお年寄り、さらに海外客も見込んでどんな人でも食べやすい料理に仕上げています。
さらに県産あさりの時雨煮などが盛られた先付は、さきほど私たちが参拝した時に、神様にお供えされていたものです。
お供え物はふだんは神職に分けられ食べられています。
神道では“神人共食”(しんじんきょうしょく)といい、神様と人が同じものを食べて楽しむ考えがあります。この体験を通して、その慣習に触れることができるのです。
この日参加した皆さんの反応は?
神社の食事とは思えない豪華な食事。
特別感のある鹿島神宮のツアーはぜひ企画したい。絶対喜ばれるなと確信しています。

たくさんの方に来ていただければありがたい。来ていただくということは神様が一番喜ぶことでございますので、ぜひお越しいただければと思っております。
取材後記
参拝では、拝殿内部の貴重な装飾も間近に見ることができ、とても特別な気分が味わえました。
この体験はデスティネーションキャンペーンの一環で10月から月に1回、人数限定で行われます。
今回私が取材した内覧会には、旅行会社や県の観光担当者が招かれたのですが、評判は上々でした。県の観光担当者は、「学び・食・自然、ふだん体験できない非日常が味わえ驚いた。夜のイベントということで宿泊してもらえる可能性があるので、県内外、海外の人に来てほしい」と期待を寄せていました。